経営者はマインド・リセットを!

2016年10月28日 06:00

アマゾンプライムビデオで「マネジメント・バイ・アウト」という映画を見ていてとても驚きました。まだ全部は見終わっていませんが、ネタバレにならない程度に触りを紹介すると次のとおりです。

主人公である大手百貨店の社長が、「自分は大きく業績を伸ばした。あと10年今のままの収入を維持すれば妻が120歳(?)になっても安心だ。今の豊かな生活を維持できる」と考えていたところ、突然、株式の過半数を持っているオーナーから呼び出されて事実上の解雇を言い渡されます。「月給20万円では今の豊かな生活は維持できない。増資もして時価総額を10倍にしたのは俺だ。どうしてこんな目に合わなきゃならんのだ!」と、彼が憤ることからストーリーが始まります(細かな記憶違い等はご容赦下さい)。

オーナーが主人公を事実上解雇しようとする理由は、十分大きくなった百貨店を売り払う(持ち株を譲渡する)に関して、社長である主人公がいない方がスムーズに行くということが理由のようです。投資としてすでに十分な成果が上がったので、そろそろ売り時だと考えたわけです。

10年前の映画なので、原作はそれ以前に書かれたのでしょう。著名な企業弁護士の牛島信氏が原作者ですので、主人公の台詞はおそらく当時の経営者たちの真実の気持ちを代弁したのではないかと思われます。

ところが、経営者を取り巻く環境は、今はドラスティックに変わってしまいました。にもかかわらず、10年以上前と同じ考えを持っている経営者が多いのではないかと私は危惧しました。

社長を始めとする取締役は、株主から委任を受けて会社の経営を任された「経営のプロ」であり、労働法規に守られた労働者ではありません。定められた任期中に企業価値を上げることが任務であり、期待ハズレとなれば任期中であっても解任されます(残りの任期分の報酬は請求できるのが原則です)。映画の主人公の社長が何年やっていたかは忘れましたが、時価総額を10倍にしたのなら「ありがとう。君の役目は終わったので退いてくれ」と言われても何ら不思議ではありません。事件を請け負った弁護士が大勝利を収めても、所定の報酬を受け取れば仕事が終わるのと同じです。(取締役も弁護士も同じ委任契約です)。ですから、取締役は終身雇用のサラリーマンと違って、定められた任期だけ経営を任された自営業者と同じで、契約を更新(再任)してもらえれば「ラッキー」というのが会社法の原則なのです。

ところが、一昔前は経営陣に口を出さない安定株主が多かったため、社長の任期も内々(うちうち)で勝手に決めており、サラリーマン時代と同じように身分が安定していると勘違いしていた人たちがほとんどでした。

ところが、今や「株式持ち合い」がどんどん解消されていき、安定株主比率は低下する一方です。経営者に同情的な(と言うか「言いなりの」)安定株主はごく少数になってしまったのです。

昨年作られたコーポレート・ガバナンス・コードによって国際的に通用する会社経営が求められるようになり、今までとは段違いの経営の透明性が要求されています。不透明な会社は、新たな黒船である外資が悪評を広めて株価下落を誘導する時代なのです(伊藤忠商事が標的にされました)。

2年以内という限られた期間で委任されるのが原則ですから、外国人CEOの報酬が桁違いに高いのも頷けます。任期が終わったら解任されるという(不安定な身分を)覚悟しているので、それに見合うだけの報酬を要求しているのです。日産のカルロス・ゴーン氏もそういう意図で高額な報酬を得ているのでしょうが、意外にも(?)長期政権にしてくれているので、「日本の会社のCEOはなんて美味しい商売なんだ」と内心で高笑いしていることでしょう。

これからは、コーポレート・ガバナンス・コードを武器に、海外のモノ言う株主や投資ファンドがどんどん経営にプレッシャーをかけてくるはずです。10年先も自分が経営陣でいられるなどと考えるのはとんでもない誤解です。能力を最大限発揮しても、運悪く経営環境の悪化によって業績が低迷したら容赦なく叩かれる時代なのです。経営者のみなさんは、是非ともマインド・リセットをして下さい。昔を懐かしんでも仕方がありません。自営業に転身したと腹をくくって厳しい向かい風に立ち向かってくださいね。

 


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2016年10月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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