ローマのフェリーニ

2016年11月10日 11:45

フェリーニ1

フェリーニやローマを語るほどぼくは熟成していませんが、休みに、ジュリエッタ・マシーナと住んだマルグッタ通りに立ち寄ったので、しばしメモしてみることにしました。

トラステベレ2

フェリーニが「アマルコルド」で描いた故郷リミニを離れ、ローマに来たのは17歳、ムッソリーニ政権下。
ロッセリーニ「無防備都市」のシナリオから映画界に入ってのは必然だった。
その空気は「フェリーニのローマ」がここトラステヴェレ界隈の猥雑なシーンで見事に描いています。

ムッソリーニが遺した一つ、チネチッタ撮影所はフェリーニのためにあるようなものです。5年前にぼくが初めて訪れたときの興奮をここに書き留めています。
「魂のチネチッタ」
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2011/12/blog-post_15.html

トラステベレ1

「フェリーニのローマ」が示すのは、混沌と自由。
戦時下の混乱も、72年当時のヒッピーや疾駆するオートバイ、あるいは司祭たちの珍妙で絢爛なファッションショーも同じローマ。
古代のフレスコ画が、発掘されたとたん現代の外気で消えていくシーンは、危うい美へのオマージュであります。

バチカン扉

「甘い生活」。
ヘリコプターがキリスト像を吊るす冒頭も、サン・ピエトロ大聖堂の階段をシルヴィアとマルチェロが登るシーンも、現代と古代の混沌を象徴しています。
(大聖堂を訪れたら、25年に1度開くとされる「聖なる門」が開いていました。くぐったぼくは全ての罪が許されるそうです。)

フェリーニ2

倦怠と退廃。華やかな女性を求めても届かない。
一方のよりどころとした知的エリートの教授は家族を巻き添えに自殺する。
救われない。救われない。
「甘い生活」が描くローマは「私の想像上の町」だとフェリーニは言います。
ヴェネト通りに遺る碑。

オスティア1

パーティーに疲れたマルチェロが砂浜で見るのは、醜い怪魚・エイの死骸。
乱痴気と絶望の先にあるもの。
対岸で叫ぶ美少女の声は届かず、マルチェロは「チャオ」と背を向ける。
ローマ郊外、オスティア海岸。
いまここは輝くリゾートです。

オスティア2

同じくオスティア海岸で、同じくマストロヤンニ扮するグイドは、「8 1/2」でルンバを踊る怪女サラギーナに「チャオ」と別れを告げられます。
少年期との美しく哀しい決別。
映画史にギラギラと輝く砂浜。

オスティア3

自己を投影した「8 1/2」。
タイトル名はそれまで撮った作品の数だそうですが、構想はオスティアに向かう車を運転しながら練ったとか。
撮影は現場で、直感による即興が多かったとか。
ヌーヴェルヴァーグだったのですね。

オスティア4

この海岸は「ソドムの市」撮影後にパゾリーニが殺されたことでも知られます。

ウディ・アレンは映画上位に「8 1/2」と「アマルコルド」を挙げています。ブニュエル「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」も。生前フェリーニも「ブルジョワジー」を絶賛していました。
(ぼくも洋画はフェリーニ、ゴダール、パゾリーニ、ブニュエルが上位に来ます。)
「女は二度生まれる」
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2012/11/blog-post_26.html

オスティア5

「人生はお祭りだ。」
環になって走る「8 1/2」のラストは、ゴダール「気狂いピエロ」フェルディナンの爆死、溝口健二「山椒大夫」浜辺の長回しに並ぶ(ぼくの)3大ラスト名シーン。
ま、ピエロはミゾグチへのオマージュだそうですが。
いずれも浜辺です。

トレビ

フェリーニは、そうした広場を大切に扱いますよね。
子猫を頭に乗せたアニタ・エグバーグが、誰もいないトレビの泉に入っていく。
「甘い生活」の名シーン。
聖なる広場を強烈な絵筆で描きました。

PIAZZA RENZI

「フェリーニのローマ」でボクシングが繰り広げられるのはレンツィ公園。
こうしたふとした広場の点在がイタリアをイタリアたらしめています。

バーニョレッジョ

「道」を撮ったラツィオ州の、バーニョレッジョという村に来てみました。
ジェルソミーナやザンパノがここにいたのかな・・・・
それはわかりませんでしたが、

チビ太

その向いにはチビタという天空の城が鎮座していました。
ラピュタのモデルだとか。

キャンチャーノテルメ

「8 1/2」の白い湯治場は、トスカーナ州、シエナの近く、キャンチャーノテルメ。
寂しい村でした。
女を派手に描き続けたフェリーニ。
実は静謐を求めたんじゃないかな。

そう、マルチェロやグイドのように。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年11月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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