地方議員に厚生年金加入は必要か --- 雨宮 しんご(修正あり)

ライフプラン

地方議員の年金廃止で行政コスト削減の反面、議員のライフマネープランが難しい問題もある(写真ACより:編集部)

成田市議会議員の雨宮しんごと申します。

今また地方議員に年金復活(厚生年金加入)という動きが出始めています。

「地方議員、厚生年金加入認めて 24道県議会で意見書」(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASJBT71JXJBTPTIL03G.html
 
2011年に廃止された地方議員の年金制度をめぐり、24道県議会で31日までに、議員が厚生年金に加入できるよう国に法整備を求める意見書が可決された。年金廃止で退職後の生活が不安定になり、議員のなり手が減っていることが主な理由に挙げられている。ただ、反対意見が強い議会もあり、実現するかは不透明だ。
 
全国都道府県議会議長会と各地の議会への取材でわかった。意見書を可決したのは北海道、宮城、愛知、和歌山、鹿児島、沖縄など24道県議会。
 
かつての地方議員年金制度は、議員が払う掛け金や自治体負担で運営されていたが、「平成の大合併」などで議員が減って財政が悪化。在職12年で受給資格を得られることも「特権的」と批判され、民主党政権下の11年6月に廃止された。

 
まだご存知ではない方もいらっしゃるかもしれませんが、議員特権と批判されていた地方議員における年金(3期12年上在籍すると資格を取得)はすでに5年前に廃止されました。

(廃止されるまで納め続けてきた議員年金は満額ではなく、わたしの場合は8割しか返金されませんでした。)

厚遇と批判されていた議員年金は廃止され、地方議員は、サラリーマンのような厚生年金、公務員のような共済年金(市長は共済年金)がなくなり、国民年金のみとなりました。

それから数年が経ち、将来への不安や担い手不足の懸念などが全国から噴出したことからその対策を国に講じてもらうために全国の自治体議会で取りまとめて提出しようとする今回の動きに発展したのだと思います。

(成田市議会では、この意見書案の取り扱いを12月議会で検討するようです。)

「地方議会議員の厚生年金への加入を求める意見書」の内容は以下の通りです。

地方創生が我が国の将来にとって重要な政治課題となり、その実現に向け大きな責任を有する地方議会の果たすべき役割は、ますます重要となっている。
 
こうした要請に応えるため、地方議会議員の活動も幅広い分野に及ぶとともに、より専門的な知識が求められ、専業として活動する議員の割合も高くなっている。
 
しかしながら、昨年実施された統一地方選挙では、道府県議会議員選挙の平均投票率が過去最低となったほか、無投票当選者の割合が高くなるなど、住民の関心の低さや地方議会議員のなり手不足が大きな問題となった。
 
こうした中、選挙権年齢の引き下げに伴い、若者に対して政治への関心を高めるための啓発活動の充実強化を図るとともに、サラリーマンの議員立候補が行われやすいように、年金制度を時代にふさわしいものとすることが、人材の確保につながっていくと考える。
 
よって、国におかれては、国民の幅広い政治参加や、地方議会における人材確保の観点から、地方議会議員の厚生年金加入のための制度を国民的合意のもとで早急に実現されるよう強く要望する。

確かに、議員報酬だけでは、裕福な生活ができるわけもありませんし、インセンティブやボーナスもなければ、昇給も、退職金もありません。

(一般質問をしたらプラスインセンティブ! などがあると通告者が増えるかもしれません。)
 
さらに細かいことを言えば、議員は「給料」ではなく「報酬」として支払われているので、所得税率も「給料」よりも高く設定されています。

このことを思えば、中学生と小学生をもつ身としては、今よりも保障を厚くしていただけるのであれば、そのこと自体は純粋に喜ばしいですが、だからと言って諸手を挙げて賛成かといえば、それは別問題だと考えています。

まず、わたしは議員としての仕事内容や責任、付き合いの多さ(下戸なのでお酒は苦手。)、退職金がなく、国民年金のみ、どんなに頑張ってもインセンティブ、ボーナス、昇給がないことなど、それらを理解した上で、立候補しています。

なにより、超少子高齢化社会を迎える日本が、今後ますます社会保障費が膨らむことは自明であり、その財源の確保に消費増税などさらなる負担を国民、市民にお願いする立場にある以上、政治家が、自分たちの生活向上や将来不安の改善を訴えることは現時点では難しいと考えています。

しかしながら、こうした意見書(案)が上がってきた背景は理解できます。

日本の今の政治システムでは、なかなかサラリーマンのまま政治家になることは難しく、立候補においては私もその一人ですが、退社して裸一貫で目指さなければならないことが多いと思います。

当選しても保証されるのは任期の4年間のみであり、その後も選挙という洗礼を乗り越えなければならず、安定はありません。

では、落選した場合はどうでしょうか。

選挙でサラリーマン時代の貯蓄を使い果し、一文無しの無職で翌日から社会に放り投げられることになります。

すぐに就職活動を始めたくても、選挙の残処理に追われ、なかなか就職活動することは難しいですし、なにより年を重ねていれば、それだけ再就職が難しくなることは論をまちません。

こうなると経営者や、潤沢な資産がある人しか選挙にさえ出られなくなってしまいかねません。

先ほども申し上げたように、こうしたリスクに対応する企業は少ないですし、当選しても議員報酬だけで老後の生活費まで貯蓄していくのは、極めて困難だとも思います。

私自身、機会のたびに「プレイヤーとして参政しないか。」と同世代に尋ねてきましたが、帰ってくる言葉は、概ね「安定を捨ててまでリスクは負えないし、その魅力がない。」といったものであり、この言葉が今の議員の実情を物語っているのではないかと感じます

こうした議論を突き進めていくと、そもそも議員はボランティア化すべきか、専業化すべきかという制度根本から見つめ直していかなければならず、そこまでの時間をかけられないほどに疲弊している現状を少しでも改善するためにと、今回の提案に至ったのではないかと思います。

それでも、私は上述の通り、今よりも厚遇を求めることには組することはできません。

ですから、せめて初めて28歳で立候補した時に訴えた、

「将来の夢は何ですか?」と聞かれたときに、

「政治家になりたい! 」と答えてもらえるような政治家を目指します。

という原点を忘れることなく、これからも日々勉強し、一生懸命活動することで一人でも多くの方に政治に触れていただき、参政してもらえるように努力していきます。

成田市議会議員 雨宮しんご

※【修正13:00】雨宮さんのご意向でリライト分を掲載しました。