デジタル教科書教材協議会DiTTの成果

デジタル教科書教材協議会DiTTがパワーアップすることを述べたばかりですが、
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2016/11/ditt.html
これまでの成果をまとめておきます。これまで6年の活動のうち、当初2年間の成果とその後のものに分けておきます。

1 当初2年間の運動と成果
ビジョンや提言などを相次いで発出するなどの運動を進めた結果、政府は教育情報化を推進する姿勢を明確にし、政府方針として打ち出されました。

1) アクションプランとビジョン
2010年の設立間もなく、アクションプラン、ビジョンを公表しました。
「1)どこに住んでいても世界中の知識に触れる機会、2)創造力、表現力、コミュニケーション力を育む最高の環境、3)友人、先生、家庭とつながる手段を早急に整備する。」
http://ditt.jp/action/policy/vision.html

2) 提言2012
2012年4月「DiTT政策提言2012」を発出。デジタル教科書実現のための制度改正、デジタル教科書普及のための財政措置、教育の情報化総合計画の策定・実行の3点を提案しました。
http://ditt.jp/action/policy/aim.html

3) デジタル教科書法案
法案検討WGを設置し、同年6月、法案の概要を策定、公表しました。学校教育法、教科書の発行に関する臨時措置法、著作権法の3法を改正することなどを盛り込みましだ。

4) 教育情報化推進ステイトメント
同年6月、制度改正、予算確保、計画の策定と実行の3点を唱えるステイトメントを公表。学界・有識者、民間代表に加え、50の自治体の首長が賛同の声を寄せました。
http://mirainomanabi.net/2012/index.html

成果1:2010年政府方針への反映
当初の動きを受け、政府はIT戦略・知財戦略の双方に政策の方針を明記しました。

① 新たな情報通信技術戦略(IT戦略) 2010.5.11
「文部科学省は、2010年度中に教育の情報化の基本方針を策定し・・・デジタル教科書・教材などの教育コンテンツの充実・・を推進する。」

② 知的財産推進計画2010  2010.5.21
「教育コンテンツのデジタル化(中期):デジタル教科書・教材を始めとする教育コンテンツの充実を進める。 担当府省  文部科学省、総務省」

成果2:知財計画2012での方針明確化
一連の運動が政府の政策にも反映され、2012年5月29日には政府・知財本部会合にて、下記制度方針が「知財計画」として決定をみました。

「児童生徒1人1台の情報端末によるデジタル教材の活用を始めとする教育の情報化の本格展 開を目指して義務教育段階における実証研究を進めるとともに、実証研究などの状況を踏まえつつ、デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度といった教科書に関する制度の在り方と併せて著作権制度上の課題を検討する。(総務省、文部科学省)」

2 その他の活動と成果
啓発活動の強化、自治体や学校との連携を深めるとともに、提言を続けることにより、民間、地域、学校現場での取組が本格化したことに加え、デジタル教科書の制度化や推進法案の策定など制度面でも実態を伴う進展をみせることとなりました。

1) 啓発活動:シンポジウム
設立時より計20回のシンポジウムを開催。
主な登壇者(肩書は当時):原口一博総務大臣、鈴木寛文部科学副大臣、遠藤利明衆議院議員、石橋通宏参議院議員、小宮山宏 元東大学長、長尾真 元京大総長、安西祐一郎 元慶應義塾長、孫正義ソフトバンク社長、樋口泰行マイクロソフト社長、田原総一朗氏、夏野剛氏、上月正博文部科学省大臣官房審議官、南俊行総務省政策統括官、倉田箕面市長、西川荒川区長、樋渡武雄市長、市原つくば市長、吉村備前市長

2) 自治体との連携
70の教育情報化ステイトメント賛同自治体とのコミュニテイMLを立ち上げ、情報交換。(週1回の事務局通信配信、ICT実態調査アンケート実施ほか)
180のICT活用自治体のマッピングをWebへ公開。
http://ditt.jp/action/case/local.html
教育のICT化を検討している自治体へのトータルなサービス提案を公開。
http://ditt.jp/action/case/jichitaiteian.html

3) 先導先生との連携
全国の先駆的な学校の先生方の実践例を共有。
http://ditt.jp/action/case/teacher.html?page=1

4) 2013年提言
2013年6月には、下記の8提言を発出しました。
1.教育情報化タスクフォースの設置、2.「デジタル教科書法」の策定、3. 教育情報化計画の前倒し、4. デジタル教育システム標準化、5.推進地域の全国配置、6.スーパーデジタル教員の支援、7.デジタル創造教育の拡充、8.教育情報化の予算措置

5) 教育情報化ステイトメント2014
2014年12月、改めてステイトメントを発出し、下記5項目を提言しました。40の自治体首長をはじめ、国会議員、有識者など110名を超える方々からの賛同を得ました。
1.「教育のIT化に向けた環境整備 4ヵ年計画」の実行、2.教員のICT活用指導力の向上に向けた取組の実施、3.教材流通のクラウド基盤とネットワークの整備、4.学校での安定した無線通信環境の確立、5.教育情報化を進めるための制度整備の実現

6) 教育情報化推進法の制定
2015年6月、デジタル教科書の正規化から未来の教育の研究に至る総合的な措置を実現するための法制度として、「教育情報化推進法」を制定することを求める提言を発出しました。

成果1:超党派国会議員連盟の結成
2013年から超党派の国会議員により続けられてきた勉強会が2015年2月「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」へと発展。会長 遠藤利明衆議院議員、事務局長 石橋通宏参議院議員。
アドバイザーとして中村伊知哉、石戸奈々子が参加し、顧問に小宮山宏会長が就いており、その事務局をDiTTが務めています。

成果2:「デジタル教科書」の位置づけに関する検討会議
2015年5月、文部科学省に「デジタル教科書の位置付けに関する検討会議」が設置され、DiTTとして意見開陳したほか、会議関係者らを交えたシンポジウムを開催して議論を深めました。会議での中間とりまとめでは、DiTTが掲げた方針と概ね同様の考え方が示されています。
http://ditt.jp/action/symposium.html?id=16&page=1

成果3:電波利用料の活用
DiTTは学校情報化を推進する財政的根拠として、年800億円規模の電波利用料から捻出することを提案してきました。総務省は2017年度予算措置及び制度措置としてこれを実現する準備を始めました。実現すればこれもDiTTによる成果の一つと数えていいでしょう。

成果4:議員立法の策定
「教育情報化推進法の制定」の提言が超党派の国会議員連盟に汲み入れられ、2016年10月、議連として法案の制定に動く方針となりました。検討チームのアドバイザーとして中村伊知哉、石戸奈々子、菊池尚人らDiTT関係者が参加しています。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年11月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。