デジタル教科書教材協議会 DiTTシンポジウム「デジタル教科書の位置づけはどうなる?~2020年導入実現に向けて」@慶應義塾大学三田キャンパス。
文科省検討会堀田座長、総務省御厩課長らと。
文科省の検討会がデジタル教科書の制度化を進めるという方向になった、文科省もそのつもりになったのは、DiTTとしても大きな成果です。6年前の運動開始時にはあり得ないと言われていたことです。紙の教科書と同程度の範囲で導入するという整理は、現時点では妥当な落とし所だと考えます。
ただ、文科省の報告書がデジタルの無償配布を困難と結論づけているのは考えものです。紙の教科書と同様にタダにすべきです。これは文科省というより財務省を攻める案件。教育予算を厚くするよう、民間としても声を高めていきたい。教育情報化を推進する超党派の議員連盟でも同じ声が上がっていますから、そちらからも押していきたいところです。
教科書の制度化と合わせ、デジタル教科書の制作に関する著作権の整理も必須です。文化審議会での議論が始まりましたので、教科書の制度化と著作権制度の整備のタイミングを合わせるべく、結論を急いでもらうよう、プレッシャーをかけましょう。
一方、端末やネットなどの環境整備も気になります。総務省御厩課長は、おカネのない自治体が教育情報化に力を入れている一方、財政力の最も高い自治体でデジタル教育が進んでいないといいます。財政力の問題ではなく、首長の意識の問題ですよね。
これに関し、総務省は学校のネット整備に「電波利用料」を使う方針で、来年から3年かけて推進するとの意向を表明しました。地デジ整備に使われていた資金が浮きますから、ぜひ学校インフラ整備に使ってもらいたい。DiTTとしてもパブコメで求めた事項です。実現すればすばらしい。
総務省は学校のネット整備はwifiだけでなくセルラーの利用も検討するとの意向も表明しました。これも大きい。格安スマホ、MVNO、さらに放送の電波も使って教育ネット環境を整備してほしい。・・総務省、仕事してます。
ただ、学校のクラウド化は、民間の提供体制は整ってきたものの、問題は学校・自治体の利用側の「不安」。このためには、経産省やIPAにも出張ってもらい、安全対策・セキュリティ対策を強化してもらいたい。
このほどプログラミング教育の必修化が進んだことも成果です。これも文科省の別の会議座長を務めた堀田先生が、プログラマー育成策ではなく、みんなのICTを使う力と位置づけてくれたことが大きい。プログラミング「を」ではなく、プログラミング「で」学ぶ、を進めましょう。
デジタル教科書、1人1台端末、学校ネット化を掲げて始まったDiTTの目標も、ようやく着地点が見えてきました。もちろん、その制度化や予算化はこれからですし、定着には時間もかかりますが、まずは成果を総括する時期かと思います。
同時に、クラウド、ソーシャルメディア、ビッグデータの教育利用をどう進めるのか、著作権処理をどう円滑化するか、プログラミング教育をどう進めるかという、積み残しもあります。DiTTの新しい対応策を練りたいと思います。
さらに、IoTやAI、ドローンやロボティクスといった、次なる教育ビジョンが求められます。教育情報化ビジネスの国際展開もテーマになります。これらのビジョン作りにも移りたいと思います。
引き続き、よろしく。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年11月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。