CNN「テキサス西部の油田、米国最大と判明」

2016年11月21日 11:30

本ブログのタイトルとした一行を、極めて刺激的な見出しとしてCNNジャパンが報じている(11月19日14:25配信)。これは「米国最大の油田が発見された」ということを伝えたいのだろうか? そんなことがあるのだろうか!

念の為にUSGS(US Geological Survey 米地質調査所)のHPをチェックしてみた。11月16日にUSGSがリリースしたこの報告の内容を読むと、この記事は「やっぱり」だった。

CNNのニュースは日本語なので検索してお読みいただけばお分かりのとおりだが、この記事の中で使用している「埋蔵量」という言葉が、記者の誤解を象徴しているといえる。

USGSの発表文には「埋蔵量reserve」という言葉はなく、「技術的に回収可能な資源量 technically recoverable resource」という表現が使われている。また、Natural Gas Liquid(天然ガス液、通常NGLと呼んでいる)なるものが何なのか、分からないままに天然ガスの埋蔵量が16億バレル、と書いているのもミスリーディングだ。

ここではUSGSの発表文の要点を、筆者の興味にしたがい次のとおり紹介しておこう。

・USGSの評価によると、テキサス州のパーミアン地域にあるウォルフキャンプのシェール層には、200億バレルの油と、16兆立法フィートのガスと、16億バレルの天然ガス液(NGL)が胚胎されていると推定される。ここで推定しているのは、非在来型の連続して胚胎している油(continuous unconventional oil)であり、未発見の、技術的に回収可能な資源量である。

・これは、2013年にUSGSが評価した(北ダコタ州の)バッケン・スリー・フォークスの推定資源量の約3倍のものであり、今日までUSGSが推定した米国内の連続して胚胎している蓄積としては最大のものである。

・USGSのエネルギー資源プログラム部門のWalter Guidrozは次のように言っている。
「この事実は、すでに何十億バレルもの石油を生産している地域でも、まだまだ何十億バレルを発見する可能性があることを示している」「技術革新と業界の実践面での変化が、どの資源量が技術的に回収可能なものかということに著しい影響を与えており、それがまた(USGSが)米国および世界の資源量評価を継続して行っている理由である」

・Continuous oil and gas(連続して胚胎している石油ガス)とは、地質構造の中に広く散在しているものであり、在来型の蓄積のように、分離して、地域的に発生しているものではない。それが故に、continuous resourceの場合は、通常、水圧破砕のような特別な掘削および採取方法が要求される。

・未発見の資源量とは、地質的な知識と理論により、存在が推定されるものである。

・技術的に回収可能な資源量とは、現在使用可能な技術と業界の実践法を利用して生産が可能なもので、経済性についてはまったく評価していないものである。

USGSのリリース内容は、筆者の『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』(文春新書、2014年10月20日)をお読みいただいている読者の皆様には容易にご理解いただけるものだが、この記事のようにミスリーディングな記事を書かれるのは困りものだ。

ちなみに、2013年にUSGSが、今回のテキサス州西部の「三分の一」の資源量(つまり、約70億バレル)があると推定したバッケン全体のシェールオイルの生産量は、2013年の30万B/Dが2016年には75万B/Dほどに増加している。だからテキサス州西部、パーミアン地域がシェールオイル生産において「有望」であることには間違いないが、「米国最大の油田」が発見され、短期間で大増産につながる、ということはないので、くれぐれもご注意のほどを!


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年11月19日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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