地方創生レビュー第4回 地方創生人材の条件

2016年11月26日 02:34

神戸まちなみ

地方創生=人材育成。

ある有識者の会合でそういった結論になったことがあったが、私はそうは思わない。地方創生は人が育つ、それだけでは困るからだ。あくまで必要条件である。

地元の人材は育っても、それだけでは人は来てくれないし、人は住んでくれない。不十分な論理展開で我々はしばし物事を単純化したがる生物であるが、今回は印象的なイベントから「地方創生」の条件を探ってみたい。

というのも、10月8日に神戸市で開催された「こうべソーシャルフォーラム」に参加してかなり思うところがあった。その中でも、朝来市役所の馬袋真紀さん、神戸市役所の秋田大介さん、加西市役所の菅野将志さんがプレゼンし、神戸YMCAの松田康之さんによる司会のセッション「公務員の私とソーシャル」は衝撃的だった。

すごい地方公務員たちのマインドセット、考え方・姿勢という部分に感動を与える、光るものがあった。なんとも言語化できない能力を印象的な発言から振り返ってみよう。

「自分たちの身に降りかかってくる」

朝来市の馬袋さんは言う。なにかしら「問題」に感じたことは、いつか何らかの形で「自分たちの身に降りかかってくる」と。ライフステージに応じて、いつか自分自身も当事者になるということだ。それは先のことかもしれないが、解決が困難な状況になっているかもしれない。その時には遅いのかもしれない。だからこそ、気づいた責任があり、行動すべきだと。

そこで、無理をしない、できる範囲しかしない、「スルー」してしまう選択は後々影響が大きい。だからこそ、ちょっとした自助努力が予防につながると彼女は語る。
倫理観のようで、倫理観でもない、経験からの学びがそうした発言になっているのだろう。

「通訳する人が必要」

さらに、地方創生で活躍する彼女は価値観が違う人たちの思いをつなぐことを行動基準にしていると話す。お互いが思っていることを認めあって、感情を整理するような役割が必要と語る。例えば、若者には「地域にはこういうルールがある」、高齢者には「(若者は)こういう思いを持っている」と話す。その間に入る人、つまり、「通訳する人が必要」だと。そのような役割を担うコーディネーターは地域には必要で、この役割は公務員でも地域の一員として担える。

通訳の結果、今はきちんとディスカッションできているそうだ。ただし、その段階に至るまで10年の年月がかかったことも事実。朝来市は地方創生で先進的な自治体とされているが、こうした人が支えているのだろう。

「主張は曲げないけど、その裏でめちゃ仕事をする」

神戸市の秋田さんは「主張は曲げないけど、その裏でめちゃ仕事をする」と言う。考えて築いてきた信念は貫いて主張するし、議論するし、その裏付けのために誰にも文句を言われない仕事をすると語る。
 
思ったことを本音で議論する風土があまりない行政において、この姿勢には相当の覚悟がいる。自治体にもよるが、基本的に、新しいことをすること=仕事が増える=面倒なことという考え方が強く、徹底的に議論したり、忌憚なく話し合うことははばかられることが多い。しかし、秋田さんは違う。

そして、その主張が「口だけ」にならないように、徹底的に仕事をし、成果を出すということ。職業倫理というのか、行動規範というのか、生き様のようにも思えるし、それともプライドというべきなのか。

私がこれまであってきた行政改革を支えた職員にも多く見られた姿勢に近いものがある。こうしたプライドを支えているのは何かわからなかったが、「思い」なのかもしれない。

「100年単位で仕事をしている」

秋田さんはさらに言う、「100年単位で仕事をしている」と。秋田さんの原点とも思えるこの考え方が行動を支えているのかもしれない。近年、地方自治体は「行政経営」を求められ、自治体でさえ目先のことを考えるようになっている。

地方創生も大事だが、自然との共生、生物多様性といった価値観が忘れ去られつつある現状に対しての警鐘にも思えた。

「地域に育てられた、今度は伝える番」

菅野さんは「いってみれば、地域に育てられた、今度は伝える番」と語る。彼は、様々な活動を仕掛け、地域活動を楽しみまくっている大人だ。こうした実感を持つこと、さらに、口にできる勇気を持つことなどすごいと思うが、彼は心の底から思っている。

確かに、誰でも、行政であれ民間であれ誰かの役に立つ仕事をして、それによってこの社会は支えられている。道路を歩いても穴に落ちてケガしない、学校にいっても一定程度の知識ができる、おいしい農産物を食べられる・・・1つ1つとっても多くの人の行動がこの社会を支えている。忙しい中、そういったことを実感できないこともあるが、缶コーヒーの宣伝ではないが「誰かが誰かを支えている」のが現実だ。

しかし、地域共同体の崩壊によって、「地域に育てられる」という感覚を持つ人の割合は長期的に減っている。「ここでなくてもよかった」「ここじゃないほうがよかった」と少しでも思ってしまう、つまり入れ替え可能性を感じてしまえば、菅野さんのようには考えない。

「地域で活動する楽しさ」

菅野さんはさらにいう「地域で活動する楽しさ」があると。地方創生のキーワードとして「楽しさ」が言われることが多い。なんか楽しそうなことをやっている大人がいる、それが人を引き付ける、、、と地方創生の成功の法則とまでいわれることも多い。

こうした言葉は、多くの経験とそこからの学びと気づきを重ねないと出てこない。そう簡単にはこうした職員は育たない。感謝の気持ちを心から持てるようになると見える世界も変わってくるのだろうが、なかなかそういったき境地に達するために何が必要なのか、とっても難しい。

馬袋さんは最初「地域のことを何も知らない」という気づきから始まったそうだ。「気づき」を行動する勇気に昇華するためには何が必要なのか、地域社会を支える責任・役割意識にその答えがある気がする。

筆者は地方創生は民間に任せ自治体はコーチ・サポート役として進めるべきと考えている立場だが、自治体職員は地方創生において多くを期待されている。

地方公務員のプライドと誇りに期待したい。

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日本公共利益研究所代表・主任研究員

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