海自のUH-X選定よりも空自のUH-X選定の方がよほど問題

2016年11月27日 06:00
海自ヘリ

海上自衛隊の多用途ヘリの現行機CH101(海自サイトより:編集部)

海自ヘリ機種選定で海上幕僚長らの処分検討 防衛省NHKニュース

海上自衛隊の次期多用途ヘリコプターの機種選定をめぐって、海上自衛隊トップの海上幕僚長の発言をきっかけに選定作業をやり直すことになり、手続きの公平性が保てなくなったとして、防衛省は海上幕僚長らを処分する方向で検討していることがわかりました。

海上自衛隊は、輸送や救難などにあたる次期多用途ヘリコプターについて今年度の予算化を目指し機種の選定を進めていましたが、手続きに問題があるという内部通報があったため、選定作業を中断して防衛省が特別防衛監察を行っています。

防衛省関係者によりますと、機種選定では、当初、中型ヘリが有力候補になっていましたが、説明を受けた武居智久海上幕僚長は「次期型に本来求めているのは大型ヘリというコンセプトではなかったのか」という趣旨の発言をしたことがわかりました。その結果、選定作業が改めて行われ、大型ヘリが有力候補に変わりましたが、製造できるメーカーが事実上、1社しかなく、手続きの公平性が保てなくなったということです。

この話が本当ならば、馬鹿な話です。そんならUS-2やら10式の調達でコンペやりましたか?
という話です。

これで海幕長が処分されるならば、空自の現用救難ヘリ採用時の空幕長、装備部長、航空機課長あたりは全部、官製談合を目論んだことで、懲戒解雇すべきだったでしょう。

守屋次官のスキャンダルの一件以来、なんでも競争入札になりました。おかしなことに10式戦車の調達でも形だけは競争入札だったそうです。だれが手を上げるんでしょうかね。

この硬直した調達システムのせいで、むしろ調達が歪んで、コストも上がっています。

実際問題として記事のいう、中型ヘリは三菱重工のSH-60Kベースの機体です。対して大型機はMCH-101ベースの機体です。恐らくは三菱重工に通じている将校や将官が陰謀を巡らせたのではないでしょうか。
或いは単なる内部抗争か。いずれにしてもろくなものじゃないでしょう。

ですが、本来想定されておる目的ならば大型ヘリが有用なのは誰がみても明らかでしょう。これは主としてDDHなどに搭載される予定の機体です。

哨戒機のクルーの全員の救助ができますし、ヘリのエンジンやローターブレードの運搬も可能です。また災害時や揚陸作戦でも小型の車輛まで運搬できます。

そもそもMCH-101を導入する際に、救難も101を採用するという話もあったそうです。

現在MCH-101は11機しか無いので整備効率が悪いのですが、同型機が増えれば整備効率や運用単価が下がります。さらに将来英海軍が採用した早期警戒システムなども搭載できます。海自はこれに関してはあまり積極的ではないようですが。

多様な任務に対応するならば101に軍配があがるでしょう。他に候補がないわけはないでしょう。ランプドア付きの、ヘリならばNH-90やら他にも候補があるはずです。シングルテンダーになるはずがない。

対してSH-60Kベースではこれらは全部できません。安いだけが取り柄です。といってもそれは国産の101と比べての話で、UH-60といっても、米国製の3倍はしますけども。

しかも質にも問題があります。シコルスキー製のSH-60と三菱製のSH-60Jを乗り比べた海自の搭乗員は三菱製の機体とくらべて振動が極めて少ないことに驚いたそうです。

それがより三菱の独自性が発揮された60Kだと更に悪くなり、当初搭載機器が止まってしまった程です。オリジナルの何倍ものコストを払って、なんで性能的に劣った機体を調達する必要性があるのでしょうか。
シコルスキーから調達して、浮いたカネを別なことに使うべきでしょう。

ところが次期哨戒ヘリも三菱製となることが決まっています。

対してMCH-101は国産化といいつつも事実上組み立てだけなので、性能劣化が少ないようです。これまた数からいえば、輸入に切り替えるべきですが。

先の空自のUH-X調達は競合は形だけで、初めから三菱製の機体調達が決まっていたようです。
その前の現用型のUH-60Jの調達価格は概ね50~60億円、対してUHーXプロジェクトでは総経費が1,900億円、機体費用はその半分ですから、調達単価は23.75億円です。これに三菱製の機体が収まるはずがない。

実際現在の調達はまとめ買いをしても50億円ほどです。つまりは当初見込みの2倍以上です。つまり、プロジェクトその総額は2倍以上に膨らみます。

どう考えても三菱のUH-60Jが半額になるはずはないでしょう。半額なると思ってたと主張するのは、当事者能力が欠如しているのか、頭がおかしいののか、メーカーと何らなかの利益関係が疑われて然るべです。

この件はぼくは何度も空幕長や大臣会見で問い質しましたが、関係者が処分されてることなく、皆さん順調に出世されるなり、天下りされていることでしょう。

そもそも国産ヘリを作り続ける意味はないでしょう。民間ヘリは事実上Bk117だけ。後は半世紀以上も防衛需要におんぶにダッコで、てめえで空を飛べないニワトリ航空産業です。

そんな無駄なカネを航空産業振興の名目につぎ込むならば、MRJのテコ入れにつぎ込む方がマシでしょう。少なくとも世界の民間市場で勝負しようする気位があります。

官需にたよって、甘い汁を吸う業界にカネをバラマキ続ける必要性はありません。
有事にしても増産するなんて無理です。一体何年かかるんですか。しかも国産比率は年々減り続けており、いざというとき海外製のコンポーネントを量産してもらえるんでしょうかね。

輸入に切り替えて、予備機、予備の部品をストックしておけばいいし、また同じヘリのユーザーから融通してもらう仕組みをつくほうが現実的で、即応性があります。国産ヘリの調達予算の半分もあれば、相当の予備機が買えるでしょう。

浮いた予算でヘリの定数を増やすなり、護衛艦の乗員を増やすべきです。その方がよほど戦力の強化になります。あるいは、やる気も能力もないドブのような防衛企業にばらまく金は子育てや奨学金に使った方が遥かに国益に合致していると思います。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
「駆け付け警護」は自衛官の命を軽視しすぎだ
http://toyokeizai.net/articles/-/146208

駆けつけ警護に関してJapan In Depth に以下の記事を寄稿しております。

自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その1 情報編
http://japan-indepth.jp/?p=31070
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その2 火力編
http://japan-indepth.jp/?p=31120
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない。その3防御力編 前編
http://japan-indepth.jp/?p=31185
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その4防御力編 後編
http://japan-indepth.jp/?p=31379
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その5戦傷救護編
http://japan-indepth.jp/?p=31436


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2016年11月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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