次の革命:『ブロックチェーン・レボリューション』

2016年12月07日 17:40



IT業界では毎年のように「革命」が起こっているが、その名に値する技術はほとんどない。「クラウド」とか「ビッグデータ」とか「IoT」は昔からある技術に新しい名前をつけたバズワードなので、日経新聞だけが騒いで消えてゆく。それに対してブロックチェーンは、PCとインターネット以来の本物の革命である。

その解説書は多いが、本書はビットコインだけではなくブロックチェーン全体に視野を広げているのが特色だ。その応用範囲は金融を超え、広く「帳簿」や「契約」を公開データとして世界中で共有することにある。今まで国家が独占していた「信用」の保証を分散的にオンライン化する無政府性がブロックチェーンの本質だ。

わかりやすい応用は、DRM(デジタル権利管理)だろう。音楽や動画の流通の主役はネット配信に移ってきたが、収益を分配する中心がレコードレーベルやハリウッドからアップルやアマゾンに変わっただけで、相変わらずクリエイターには15%ぐらいしか還元されない。DRMは各社バラバラで、それをコントロールする企業がすべてを支配する。

ブロックチェーンでDRMが統一されると、ミュージシャンは自分の音楽の配信をコントロールできる。今はそういう配信は少数派だが、電子メディア全体の送金が同じプラットフォームで行なわれるようになると、規模の利益が出てくる。今度はブロックチェーンを支配する者が流通を支配するが、今のようなブラックボックスではない。

もっとも不透明なのは金融だ。特に大銀行は平時には高い収益を上げ、金融危機のときは決済機能の外部性を理由にして救済されるおいしいビジネスだ。ブロックチェーンの最大のメリットは、決済機能をオープンにして外部性をなくすことにある。

中央銀行のコア機能は金融調節ではなく「最後の貸し手」機能だが、ブロックチェーンがこれを代替すると、取りつけが起こっても銀行は(オンラインで存在する)預金をすべて払い戻せるので、準備預金は無意味になる。そうするとジャクソンホールでシムズが指摘したように、中銀は不要になる。

そういう日が来るのはかなり先だろうが、遠い未来ではないかもしれない。アマゾンやグーグルがブロックチェーンを使って銀行業を営むことは技術的には可能であり、自動運転と同じぐらい明らかなNext Big Thingだ。しかしテレビ番組のネット配信すら拒む日本企業が、そこに参入できる可能性はない。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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