【リクルートホールディングス】上場で海外M&A加速、世界一の人材系企業めざす

2016年12月21日 06:00
リクルートは海外で人材派遣会社などを次々に買収している(イメージ画像)

リクルートは海外で人材派遣会社などを次々に買収している(イメージ画像)

リクルートホールディングス<6098>は言わずと知れた国内最大の人材系ビジネスの事業会社である。1988年のリクルート事件を乗り越え、2014年に東京証券取引所第一部に株式を上場した。国内企業のみならず海外企業も積極的にM&Aを行い、「グローバルNO.1」を目指す。同社のM&A戦略について検証する。

【企業概要】販促、求人メディア、人材派遣が主力

同社は1960年「大学新聞広告社」として創業した。1963年に日本リクルートセンターに社名変更。1984年にリクルートに社名変更し、「とらばーゆ」「From A」などの人材系雑誌のみならず「AB-ROAD」「Car Sensor」など海外旅行や中古車販売の情報誌も創刊し順調に事業領域を拡大していった。

そんな中、1988年に「リクルート事件」が勃発。リクルートコスモスの未公開株の贈賄で創業者を含めた関与者に2003年有罪判決が下された後、新体制の下で「誠意と努力で信頼創造」をスローガンに経営の立て直しを図る。

その後2000年代に入り、国内のM&Aも積極的に行い業容を拡大した。2007年には人材派遣最大手スタッフサービスを買収し人材派遣業界トッ プに躍り出ると2009年以降は海外にも展開。2012年には7事業会社、3機能会社と統合すべく持ち株会社制を導入した。2014年には東証一部に上場 した。上場以降も海外企業を中心に積極的に事業を買収し、国内にとどまらず「世界のリクルート」を目指す。

同社の事業セグメントは大きく3つに分けることが出来る。販促メディアは「SUUMO」「ゼクシイ」「じゃらん」「HOT PEPPER」など のサービスブランドがあり、売上は全体の22%を占める(2016年3月期)。人材メディアは「リクナビ」「リクナビNEXT」「TOWN WORK」などがあり、売上は全体の23%。人材派遣は「リクルート スタッフィング」「スタッフサービス」などで構成され、売上は全体の56%を占めている。

【経営陣】峰岸社長、2012年に就任

社長の峰岸真澄氏は1987年にリクルート入社。2009年に取締役就任。2012年から代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)。52歳。社外取締役として帝人会長の大八木成雄氏、日本たばこ産業副社長の新貝康司氏を迎え入れ、コーポレートガバナンスを強化している。

【株主構成】印刷会社などと株式持ち合い

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筆頭株主は凸版印刷、僅差で大日本印刷、電通と取引先の大手事業会社が続く。リクルートも3社の株式を保有しており持ち合い関係にある。第4位は社員持株会。メガバンク3行も均等に株式を保有している。

【M&A戦略】国内外で優良企業を迅速に買収

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2006年頃から国内企業のM&Aによる事業領域の拡大に積極的に取り組む。2007年には人材派遣業界最大手のスタッフサービス社を1,700億円で買収、当時人材派遣業界第5位であったリクルートがM&Aによりパソナを抜き業界最大手となり、大きな話題となった。

その後2009年以降は海外企業の買収に着手。米国、欧州、アジアにおける人材派遣会社や求人サイト運営会社、飲食店・美容室の予約サイト運営会社などを次々に買収している。

また中国企業に対するM&Aについては消極的である。

世界における人材系企業上位3社はアデコ(スイス)、ランスタッド(オランダ)、マンパワー(米国)である。現在リクルートは業界第4位の規模であり、「グローバルNo.1」を目指しているが、上位3社もM&Aにより随時事業規模の拡大を行っている。首位の座を獲得する為には上位3社を上回るM&A戦略を遂行する事が成功のカギを握っていると言えよう。

国内の人材系業界においても競争は激化している。国内2位のテンプホールディングスは2013年にインテリジェンスを買収。国内3位のパソナグループについても過去より随時同業を中心とした買収を行っている。

しかし上位3社のリクルート以外の2社は国内のM&Aが中心であり、海外M&Aにおいてはリクルートが他社を圧倒している。「規模の利益」の追求によりシェアを確保し競争優位に立つには、国内外問わず優良企業をスピーディーに買収していく必要がある。その点においてリクルートは上場こそ遅かったが早い段階からグローバルな視点で企業の成長ビジョンを描き実行に結び付けたといえる。

最近では中堅の人材系企業についてもM&Aによる事業拡大を図り、上場する企業も増加しているが、ガリバー化したリクルートとは格差が大きく、企業ブランド力・知名度がものを言う人材・メディア業界においてリクルートは国内で突出した存在である。

近年リクルートのM&Aは海外企業の買収が中心となっているが、一方で2015年にオンライン教育サービスを手掛ける国内のスタートアップ企業「Quipper」の大型買収を行っている。リクルートは国内の経営戦略として「中小企業向け業務支援分野」「ヘルスケア産業」「教育産業」の新規事業開発を掲げており、この3分野の事業領域の拡大においてもM&Aを活用していくことが想定される。ベンチャー・スタートアップ企業にとって大手企業と資本提携することによる事業シナジーは大きい。今後は人材系のベンチャー・スタートアップ企業に対する大手企業の熾烈な買収争奪戦が繰り広げられることになるであろう。

【財務分析】M&A効果、4年前から売上高倍増

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国内における既存事業の強化やITを活用した新規事業の開発だけでなく、M&Aを活用した海外展開を積極的に行うことにより、売上高及びEBITDA(利払い、税引き、償却前利益)は増加している。2016年3月期の連結売上高は前期比22%増の1兆5886億円と4年前からほぼ倍増。EBITDAは前期比6%増の2022億円だった。

この成長の源泉は国内外のM&A戦略が結実したものである。2012年の持ち株会社制の導入、2014年の東証一部上場を経て豊富な資金力を得たリクルート。事業領域の拡大とグローバル展開を迅速に行う上でM&Aの活用は今後も引き続き重要な施策となる。

同社最高財務責任者(CFO)の取締役兼常務執行役員の佐川恵一氏も「M&Aを活用した海外展開の加速により、EBITDAを持続的に成長させることで、中長期的な株主価値の向上を目指している」と戦略を述べており、「中長期的には7,000億円程度の投資が可能である。」としている。

ただのれんの償却費などを考慮した営業利益でみると2016年3月期は前期比7%減の1140億円で、4年前のほぼ横ばいの水準にとどまっている。今後はのれんの負担をこなしても増益になるよう、買収先の収益力強化も課題になる。

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【株価】年初来高値、会計基準の変更もプラスに

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株価は2016年に入り、上昇基調が続いている。12月14日には一時4550円を付け、年初来高値を更新した。2016年4~9月期の連結売上高は前年同期比11%増、営業利益は12%増と業績が好調に推移していることが背景にある。

また同社は2018年3月期に国際会計基準(IFRS)の任意適用をめざすことを表明している。IFRSではのれんを定期償却する必要がなく、M&Aを積極的に活用する同社にとって営業利益の押し上げ要因となる。会計基準によって経済実態が変わるわけではないが、純利益やPER(株価収益率)などの指標にも影響を与えるだけに株価のプラス要因になりそうだ。

【まとめ】源流に起業家精神、大型M&Aに果敢に挑戦

リクルートの成長の歴史はまさに「M&Aの歴史」である。国内企業のM&Aにより事業規模・事業領域を拡大したのちに株式を上場。 信用力と資金力を活かし海外企業のM&Aを加速化させ、グローバル企業に成長した。企業の成長モデルとしてはお手本といえるが、そこにはリクルー ト特有の企業風土が影響している。創業当初からの「起業家精神」を重視した企業カルチャーが源流として存在し、常に高い目標設定と挑戦を繰り返してきた事 が、結果的にM&Aの積極的活用に繋がった。

現在は、企業が一丸となって「グローバルNo.1」を目指しており、M&A の活用を主戦略と位置付けている。7,000億という巨額の投資額を実行していく一方、厳格な投資基準の運用を行う事でリスク軽減を図っている。 M&Aによる事業拡大にリスクは付き物であるが、人材業界世界3大企業を超え「グローバルNo.1」となるために今後も大型M&Aを実行 していくであろう。競合他社も含め今後の動向に注目したい。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年12月20日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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