大人の恋愛不倫学③【訃報】レイア姫の本当の夢

杉山 崇

2016年はまさに「不倫学元年」でしたが、海外でも驚きの不倫ニュースがありました。そしてこの不倫ニュースには訃報も伴うという、なんと受け止めてよいのかわからないニュースになりました。

2016年11月、スターウォーズのレイア姫役で世界を魅了したキャリー・フィッシャーが撮影中の40年あまり前にハン・ソロ船長役のハリソン・フォードと不倫していたと暴露しました。映画の中ではエピソード4―6を経て結ばれる二人ですが、まさか映画の外でも結ばれていたとは…。映画に熱狂していた世代としてはまさに「青天の霹靂!!」としか言いようがありませんでした。そしてクリスマス前に心臓発作で倒れたというニュースが届き、日本時間で12月28日に訃報が報じられました。

不倫を暴露した直後には「墓場まで持っていくべきだった!!」という批判的な声も各方面から出ていました。特にファンの間では「語られてはいけなかった」という声も大きかったです。「注目を浴びたいだけだろ!」とキャリーの人間性を問う声もありました。

<参考>ハリソン・フォードとの不倫暴露のキャリー・フィッシャーに批判殺到(exciteニュース)

ですがキャリー・フィッシャーが天に召された今となっては、心理療法家の私にはこの暴露劇は違う見え方がしてきました。人生の意味を考察した心理療法家のC.ユングは私たちの人生は集合的無意識という大きな意識に導かれているのではないかと考えました。言い換えれば、私たちは無意識のうちに私たちの運命を微かに知っているというのです。

不倫を暴露したとき、キャリーも自分の人生がそう長くはないという運命に無意識的に気づいていたような気がします。そして自分の人生が終わらないうちに、自分が最も幸せだった瞬間を語りたかったのでしょう。不倫関係にあった当時、キャリーはハリソン・フォードにプロポーズされる瞬間を夢見ていたといいます。不倫ではありましたがキャリーにとっては、本当に幸せな時間だったのでしょうね。

ご存知のようにレイア姫役を卒業した後のキャリーの人生は、世界を魅了した女優の人生としては幸せとは言い難いものでした。もしかしたら、当時のキャリーの無意識はハリソン・フォードが生涯で最も素敵な男性だという運命も知っていたようにも見えます。
今回の暴露はファンを傷つけてしまい、ハリソン・フォードも複雑な気持ちだったことでしょう。

ですが、人生の最後の時間に人生で最も幸せだった時間の思い出に浸るのは人生の結び方としては決して悪いものではありません。幸せな不倫は誰かに知っていて欲しいのも男には理解しがたい女心の一つです。暴露で傷ついた人もおいでだたっと思いますが、幸せだった自分をみんなに知ってもらって天に召されるのもキャリーなりの精一杯の人生の締め方だったのでしょうね。心からご冥福をお祈りしたいと思います。

 

現代社会の不倫学についてもっと詳しく知りたい方は…

51hxN9GNptL._SX339_BO1,204,203,200_
『ウルトラ不倫学(主婦の友社)』

朝日新聞digitalでも取り上げられました。

2016年新語・流行語大賞トップ10入りした「ゲス不倫」 今年話題になった不倫カップルのタイプ別から読み解く「不倫願望の真実」とは?(12月2日)

杉山崇

神奈川大学人間科学部教授

prof_ph01