防衛費本予算と補正予算の一体化。なぜメディアは批判も検証もしないのか

2016年12月29日 06:00

防衛費5兆円超 「節度」なき膨張を憂う(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122402000157.html

二〇一七年度予算案で、米軍再編関連経費などを含む防衛費は一六年度比1・4%増の五兆一千二百五十一億円。過去最大である。第二次安倍内閣発足後に編成した一三年度予算以降、防衛費は五年連続の増加だ。

防衛費の増額に厳しい見方をする東京新聞ですら、この「隠れ防衛予算」については言及していません。

例によって、政権のご意向を忖度していか、補正予算については述べていません。
ぼくはこれまで防衛費の補正予算の恣意的な運用に異議を述べてきました。

補正予算は「平成の臨時軍事費特別会計」だ
防衛費は、補正を含めると5兆円の大台を突破
http://toyokeizai.net/articles/-/58914

防衛補正予算1966億円の買い物リストを検証
ヘリ、装甲車などの装備を買おうとしている
http://toyokeizai.net/articles/-/100679

なんで防衛費本予算と補正予算の一体化をメディアは批判も検証もしないのでしょうか。誠に不思議です。

本年度の1次補正予算は熊本の震災対策で防衛は直接関係は無かったのですが、既に行われた2次補正および、今月成立した政府予算案での3次補正案ではかなりの額が要求されています。

2次補正では国民生活の安全・安心の確保のためと称してP-1、SH-60K、C-2、Ch-47JAの調達、F-15J/DJの近代化、パトリオットのPAC3の整備などで、461億円が計上されています。ですが、これらは本来補正予算の趣旨である、予想しなかった自体が発生したことによる予算の手当であり、本来本予算で賄うべきものです。

また3次補正では自衛隊の安定的な運用体制の確保という名目で、弾道ミサイルの対処、護衛艦、潜水艦、P-1、US-2の調達、装備の補修、感謝の耐震対策などで、1,706億円が要求されています。この中で唯一、補正に馴染むのはPKO活動の派遣延長関連経費です。

これとは別に給与改定にともない不足する給与55億円、被災した施設の復旧で8億円を計上しております。これらがむしろ本当に意味での補正予算です。

これらの本来目的以外の補正予算を合計すると、2167億円が防衛費に追加されることになります。
政府予算の防衛費は5兆1251億円で、これと合計すれば5兆3418億円となります。
つまり「見せかけの防衛費」よりも104.2パーセント大きくなります。

これは少ないように思えますが、防衛費の4割以上の人件・糧食費、さらに基地対策費や米軍費用などの固定費を除いた、お買い物予算に対する増額とすれば決して小さな数字ではありません。

なんで、東京新聞や赤旗、朝日新聞がこの事実を問題視しないのでしょうか。またこういう質問をなぜ記者会見でしなのでしょうか。

そしてリベラル系のメディアは防衛費の増額ばかりを問題視しますが、その使い方に関しては大変無頓着です。
大規模な機甲部隊が上陸してくるはずもないのに、本土決戦用の10式戦車や機動戦闘車が必要なのか。

また島嶼防衛に必要とされる、AAV7やオスプレイが必要なのか。
本来島嶼防衛は無人島や離島が対象なはずですが、やっているのは沖縄本島や宮古島などへの逆上陸しか考えておらず、本来の尖閣諸島などの防衛には役に立たない、本格的な戦争向けの装備ばかり調達しています。
そのくせ、特殊部隊専用の航空部隊を編成することも、潜水艦や艦艇で特殊部隊を潜入させるための装備もなく、特殊部隊の兵力投射能力は皆無に近い。それを放置して平気です。精神の異常を疑われるレベルです。

また来年度要求されているMINIIの調達単価は極めて高い。

防衛省の資料を見ると48丁で2億円とありますが、これは正しくはありません。
朝日新聞の谷田記者が問い合わせたところ、1.56816億円で、調達単価は327万円です。
車輛や航空機などに較べて単価が低い装備は、本来であれば、四捨五入して1.57億円とでも記載すべきでしょう。2億円の要求で計算すれば単価は416.6億円となります。

陸幕は自ら単価をより高く表示して、誤った情報を公開しています。
当事者意識が欠如しています。

で、本年度のMINIMIの調達は0.95760億円で、調達単価は319億円です。
不思議なことに本年度より1.63倍も調達数が増えているのに、調達単価は下がるどころか調達単価は上がっています。

かつてMININIの調達単価は概ね200万円でした。
米軍の調達単価は概ね40万円ですから8倍です。
たかだか分隊支援火器にそんなコストが必要でしょうか。
調達計画を立てて、一定年でそこそこの量を調達すれば恐らくは2倍以下に収めることもできたでしょう。
ですが、ジジイの小便みたいにチョロチョロ垂れ流すような調達するから、米軍の8倍などというふざけた金額になるのです。

で、それだけの税金をつぎ込んで機銃メーカーの能力が向上するなり、プライスレスの利益があったのでしょうか。そんなものはなく、メーカーである住友重機は長年データを改ざんして低性能な機銃を納めてきたました。
これは税金を泥棒するようなものです。こんなインチキをしていて未だに事業を継続しているのは人間としての良心が欠如しているからでしょう。
また同社がまともな新型機銃を開発してきましたか?

個別の予算の使いみちに切り込まず、「オスプレイちゅう鉄の鳥はあぶねえだ」、と土人レベルの情緒をもとにした記事しか書けない、税金の使いみちを検証もしないメディアは益々読者の信頼を失っていくでしょう。

率直に申し上げて、安倍政権はGDPを膨らますために、本予算の計上されないように補正予算で装備を調達しています。これは防衛予算を過小申告しているようなものであり、一種の粉飾です。つまりは嘘をついているわけです。防衛費に限りませんが、これを指摘しないマスメディアが権力の監視を標榜し、記者クラブで取材機会を私しているのは大きな問題であり、民主国家のメディアのあり方とは到底いえません。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
「駆け付け警護」は自衛官の命を軽視しすぎだ
http://toyokeizai.net/articles/-/146208

駆けつけ警護に関してJapan In Depth に以下の記事を寄稿しております。

自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その1 情報編
http://japan-indepth.jp/?p=31070
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その2 火力編
http://japan-indepth.jp/?p=31120
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない。その3防御力編 前編
http://japan-indepth.jp/?p=31185
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その4防御力編 後編
http://japan-indepth.jp/?p=31379
自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その5戦傷救護編
http://japan-indepth.jp/?p=31436


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2016年12月28日の記事を転載させていただきました(タイトル変更しました)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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