教育格差を是正する方法

2017年01月02日 06:00

6人に1人の子供が貧困状態に置かれている今日、「機会の平等」の重要性が声高に叫ばれています。
しかしながら、親が裕福であれば(幼い頃からでも)私立で充実した教育を受けられます。私立学校でなくとも、塾や予備校に通うためには親に相応の収入がなければなりません。結果的に、親の所得が子の所得に反映されるという「格差の固定」が生じています。

橘玲氏らの著書によると、知的能力の7割以上は遺伝的要素によって決まるので裕福で知的能力の高い親の遺伝が子の知的能力を決定し、それが「格差の固定」の原因だと説かれています。しかし、この仮説に疑問を抱く人は案外多いのではないでしょうか?

同じ一流大学を出て同じ一流企業に勤務している親たちの子供の成績や進学実績が千差万別だという例はいくらでもあります。一流企業の従業員の子供たちの成績が軒並み優れているというケースの方が極めて稀だと思います。

また、同じ環境で育った兄弟姉妹でも、学力に大きな開きが出るケースは決して珍しくありません。
私は、(オリンピックの金メダルのような狭き門ならぬ)大学受験程度の広々とした門であれば、たいていの場合は環境要因で遺伝の差を埋めることができると考えています。

「格差の固定」を解消する最良の方法は、公立学校のレベルを上げることでしょう。義務教育である公立小学校や中学校の教育・環境を塾や予備校レベルに上げることができれば、親の所得に教育環境が左右される程度が少なくなり「機会の平等」に大きく近づきます。

義務教育の教育・環境レベルを劇的に上げるには、次の2つの方法が考えられます。

まず、学校選択制を徹底させることです。現在の利用状況は小中共に15%程度に過ぎませんが、教育バウチャー(切符)という制度を活用するのです。国は必須の教育内容を大まかに定めるにとどめ、それ以外は各学校に大きな裁量を認めます。
保護者や生徒の満足度やニーズの高い学校により多くの生徒が集まる仕組みを作ればいいのです。

集めたバウチャーの数に応じて各学校が公的補助を受けるのです。基準を満たしていれば、塾や予備校も教育機関に加えましょう。

実際にバウチャー制度を実施した米国のミルウォーキーでは、保護者や生徒の満足度が劇的に上昇し、全体の学力も上がり、その上公的補助費が減少するというウソのような事態が発生したそうです。競争原理によって教員たちが懸命に働いた結果だと考えれば、特段珍しいことではありません。

次に、教員の採用方法を柔軟にすると同時に、保護者や生徒による評価を反映させるという人事面での改革が考えられます。

今の日本の学校の現状は、教室内では校長などの管理職の目も届かず「センセイ君主」(笑)になってしまう教員もいるそうです。

英国、スゥエーデン、オランダなどでは、保護者等による評価を徹底させており、昇進や昇給にも保護者等の評価が反映されています。もっとも、保護者等の評価に重きを置き過ぎると「保護者迎合的な教員」ばかりになってしまうので、評価結果の反映は部分的にすべきでしょう。

要は、透明性を高めて教員たちに緊張感を持ってもらうことが重要なのです。採用に関しても、現状はごくわずかな教員の特別免許が認められているに過ぎません。

いっそ国家資格として、能力のある人材が公教育にどんどん入ってこれるようにすべきでしょう。塾や予備校の優秀な講師たちが公教育に入ってくれば、教育の質の劇的な向上が見込めます。

なお、教育バウチャーを活用して「学びの場」の多様化を図れば、いじめの被害者の逃避先も容易に確保できるというメリットがあります。

最大の問題は、教員として不向きな人材をいかにして退場させるかということです。現在の日本の教員は公務員として強い身分保障がなされているので、簡単に解雇することができません。国立大学法人のように各学校を法人化して「非公務員」にして解雇制限を緩和するのが一つの方法です。

そのためには、以前も書いたように、社会全体の解雇規制を撤廃して「雇用の受け皿」を広げておく必要もあろうかと思います。教員としては不適任であっても、別の職場で実力を発揮できる人はたくさんいるでしょうから。

今でも、熱意を持って一生懸命働いている公立学校の教員はたくさんいます。彼ら・彼女らの努力を正当に評価し、既得権の上にあぐらをかいている輩を駆逐しなければなりません。未成年の時に受けた影響は人生に甚大な影響を及ぼします。やり直しも可能ですが、まずは最初が肝心だと私は考えています。

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荘司 雅彦
幻冬舎
2010-05-27

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年1月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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