だめな会社ほど危機感なし。東芝はなぜ防衛部門を整理しない?

東芝、400億円粉飾の疑い 監視委、検察に調査報告へ
http://www.asahi.com/articles/ASJD63QDTJD6UTIL01J.html

社長が代わっても「隠す文化」から抜け出せない東芝
http://www.huffingtonpost.jp/nobuo-gohara/toshiba-nuclear_b_13875842.html

東芝株、3日で4割下落 巨額損失で不信感
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29H5J_Z21C16A2TJC000/

東芝は不可解な「巨額損失」の経緯解明を
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO11235380Q6A231C1PE8000/

基本、東芝は市ヶ谷に本社のある某国営大企業と同じ体質なのでしょう。
「世間様」を全く意識せずに、社内の「常識」やら社内政治だけでしか物事が見れない。
だから平気で不正会計を何度もやらかす。

実力で勝負しないで、談合とか政府との癒着で儲かる商売が大好き。

のみならず、経営陣が指導力を発揮できないから、商売も下手。
社内の抵抗を忖度するからリストラ(本来の意味での事業再構築)ができない。

かつては儲かっていたいパソコンも今は昔です。半導体だけは何とかなっている感じでしょう。

普通これだけ業績が悪化していれば、比率が低く、将来の売上にも貢献しない防衛部門は廃止するとか、他社に譲渡をするなりして、その分のリソースを儲かっている分野につぎ込むべきです。
実際に傾いた日産は、プリンス自動車の遺産であるロケット部門をIHIに売却しました。

しかも、東芝は空自向けの偵察ポッドで性能が不十分となって裁判で当局と泥試合までやっています。

この辺の話は以下の記事で書いております。

東芝、国から迫られた「賠償金12億円」の顛末
防衛事業をやり続ける必要があるのか(東洋経済オンライン)

長年にわたる不正経理と粉飾決算が発覚し、2016年3月期決算で7100億円の赤字を計上した。また東京地検が捜査に踏み切るとの観測もある。同社は、まさに存亡の危機にあると言っても良いだろう。

このため事業の再構築は不可欠であり、債務超過を回避するため、事業の売却を含めて3万4000人のリストラに踏み切る。売り上げもピークから3割減る。虎の子である東芝メディカルもキヤノンに売却することが決まった。さらに、冷蔵庫やテレビなど赤字が続く家電部門を中心に売却、テレビやパソコンの開発拠点がある青梅事業所を縮小し、早期退職の募集や他部門への移籍などを行う予定だ。

2014年度の防衛省中央調達の契約高ランキングで3位のNECは1013億円、5位の三菱電機は862億円、7位の富士通は527億円である。対して東芝は8位で467億円に過ぎない。東芝の売り上げは4兆9000億円ほどあり、防衛部門の売り上げ比率は約0.95パーセントに過ぎない。

駄目な会社ほど決断ができないのでしょう。
これがまだ数パーセントから10パーセントとかであれば、それなりにボリュームがあって真剣に検討されるのでしょうが1パーセントぐらいならば、まあ放置しておいたほうが、波風も立たないからいいや、ということになるのでしょう。

その程度の会社が作った装備が果たして優れているか、普通に考えれば大変疑問に思えるでしょう。

東芝は防衛部門を解体すべきです。単に民生品をコンポーネントとして売る窓口だけを残しておけば、宜しいでしょう。

ですが、今年も東芝にはそれができないでしょう。だめな会社は決断ができないし、危ないという当事者意識が欠けているからです。
これは市ヶ谷の会社も同じなのですが、あちらは親方日の丸で潰れる心配がありません。
対して東芝は民間企業なので潰れる可能性はあります。

その場合、東芝がこれまで納めた製品のアフターケアなども問題となるでしょう。
また、東芝やがやっている商売は他のメーカーとも重複しております。
東芝が足抜けすれば、業界再編が進み、こまい仕事を細切れ発注することによる、単価の上昇にも歯止めがかかるでしょう。

そうであれば、防衛省が積極的に働きかけるべきでしょうが、こちらも当事者意識も危機意識もありません。
経産省も業界を再編する度胸も当事者意識もない。
可能性となるは財務省が防衛省に対して物言いをすることぐらいでしょう。

今年も防衛調達は暗澹たる未来しかないように思えます。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年1月3日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像はWikipediaより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。