米墨エネルギー貿易:2016年米国の輸出は輸入の2倍

2017年02月10日 09:00

昨日、某所で「トランプ大統領の誕生:原油価格はどうなる?」という講演を行った。当初「トランプ大統領のエネルギー政策とその影響」と題して話をして欲しい、との依頼だったが、「トランプさんにはエネルギー政策はない」との理由で、演題を変更して貰った次第だ。

もしかしたら1月11日の久しぶりの記者会見、1月20日の就任演説、このどちらかで何がしかの「エネルギー政策」が語られるかと期待していたが、案の定、何もなかった。

NHKがウェブ上に設けている「トランプ大統領」のページでも「政策」欄には昨年10月、ゲティスバーグで発表した、就任後100日以内に実行する「有権者との契約」しか記載されておらず、ここにも「エネルギー政策」という項目はない。「アメリカの労働者を守るための7つの行動」などの項目の中に、エネルギーに関連した事項がいくつかあるだけなのだ。

そこで、たとえば、前述の「アメリカの労働者を守るための7つの行動」の中にある「NAFTAは再交渉あるいは離脱の考えを表明する」ということに基づき、すでに大統領令に署名した条件改訂交渉を行って、たとえば輸出入に関税を20%かけることにするとどのような影響がありうるか、といった話をした。「BP統計集2016」から、米国とカナダ間、米国とメキシコ間のエネルギー貿易の実態を解説して、これまで多くの米大統領が唱えてきた「エネルギー自立、Energy Independence」とは、まずNAFTA3カ国での実現を目指してきたものだ、といったような説明を行ったのだ。

ところが先ほど(日本時間2017年2月9日夜)、米EIAが興味深い報告を発表しているのを発見した。”US energy trade with Mexico: US export value more than twice import value in 2016” というタイトルのものだ。

かいつまんで要点を紹介すると、次のとおりとなっている。

・2014年まではメキシコ原油の対米輸出が両国間のエネルギー貿易の中核だった。

・だが最近は様変わりしており、2014年から2016年にかけて米国からの石油製品と天然ガスの輸出が急増し、原油生産が落ち込んでいるメキシコからの米国への原油輸出が激減している。

・2016年、米国からメキシコへのエネルギー輸出額は202億ドル、メキシコからのエネルギー輸入額は87億ドルだった。

・米国にとってメキシコは、カナダに次ぐ第二位のエネルギー貿易相手国だ。米国国勢調査局によると、エネルギーは米国の対メキシコ輸出の9%、メキシコからの輸入の3%を占めている。

・原油:メキシコから米国への輸出は、2015年68万8,000BDで、2016年の1~11月は58万8,000BDだった。米国にとってメキシコは、カナダ、サウジ、ベネズエラに次ぐ第4位の原油輸入相手先で、9%を占めている。原油輸入金額は2015年125億ドル、2016年は76億ドルだった。

・石油製品:米国からメキシコへの石油製品輸出は、2015年69万BDで総輸出額の16%。2016年1~11月は84万9,000BDに増えている。米国からの輸出ガソリンがメキシコ総消費量の半分以上を占めている。反対にメキシコから米国への輸出はわずか8万7,000BDで、9億ドル。

・天然ガス:パイプラインで取引されている。米国からメキシコへは2015年は日量29億立方フィート(LNG換算2,200万トン/年)で、米国からの輸出の60%を占める。2016年1~11月は日量38億立方フィート(LNG換算2,900万トン/年)で、2017年に入ってすでに日量42億立方フィート(LNG換算3,200万トン/年)に増えている。パイプラインの建設が進んでおり、2017年から2018年には倍増見通しである。

これからも分かるように、NAFTAに基づき自由に貿易を行っていることのメリットは米国にとっても非常に大きい。Optimizationを最大限に実行でき、企業活動にも多いに貢献しているのだ。

トランプさんにとっては大した問題ではないのかな。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年2月10日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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