一国至上主義を台頭させたのはリベラルの胡散臭さだ

2017年02月10日 10:00

カリブ海でカイトサーフィンを悠々自適に楽しむ近況を披露したオバマ氏だが、在任中の政策の是非は?(リチャード・ブランソン氏公式YouTubeより:編集部)

トランプの勝利とイギリスのEU離脱などはリベラル路線の敗北であることはいうまでもない。ところが、リベラル系の人々は、こういう馬鹿なことになった原因をつくった側の問題を放置して、その結果、出てきた鬼っ子を退治できると思っていることだ。

分かりやすく言えば、情報系や金融系の技術を持った人たちが工業や農業などに代わって経済の主役になって巨大な富を得ている。そのなかには、少数民族・移民や女性も多い。

彼らは、自分たちの都合が良いように国家や世界をデザインした。国家の統制をなくし、租税回避もやりやすいようにして、税金も払わない。移民・難民は助けるが、国民の弱者は自己責任だ。

国民、なかんずく白人の普通以下の男の仕事は取り上げ社会福祉もダウンさせ、しかし、女性や少数民族はこれまで以上に優遇する。なぜなら、うるさい白人の男より使いやすいからだ。

現在のリベラル路線のもとでは、社会福祉や経済社会統制による保護は一般的に後退させられるが、移民や女性を含めた広い意味での弱者はどんどん優遇されているから、白人の男は二重に打撃を受けている。自由競争で負けたとは単純にいえないのだ。

そして、白人の保守派が不満をぶつけるとヘイトだとかいうし、彼らをマイノリティが攻撃するのは正義だから構わないという。

ネットを使って政治権力を先に握ったのは、盧武鉉やクリントンに代表されるいわゆるリベラル派だ。しかし、現在は保守派のほうがネットの世界で強くなった。なぜか。既存独占マスコミから保守派は排除されているからそちらに活路を求めたからだ。

リベラル派はウクライナが典型だが外国の政府を倒すためにはネットを使ってあらゆる汚い手も使った。しかし、今度は、同じことトランプやプーチンがしたら怒るのは、「公正」とはいえない。

致命的なのは、いわゆるリベラル派の政策が、多国籍企業や新しい経済強者に不利な規制はせず、マイノリティには新たな利益を与え、多数派に不利な施策を展開していることだ。これでは、不満が出ない方がおかしい。

日本でもリベラルと呼ばれる人の主張は、結局のところ、上記のような流れと同じだ。得をしているのは、東京に住んで、未婚か晩婚で子供は一人、共働きで夫婦とも高収入を得て、自分で子育てや介護をする時間的な余裕がないので公的施設に任せたいし、子供がなくとも他人の子供のお世話になりたい人たちだ。

ニューヨークの都心のきちんとした保育所は年に数百万円の保育料だという。国会、厚生労働省、東京都庁に保育所をつくって、安い保育料であずかることは、その程度のコストが本当はかかっていると思う。そういうことを「未来先取り型の模範ケース」として推進しているなど笑止千万だ。そのコストで何人分もの庶民が救われる。

生活保護に見られる外国人への入国規制、就労、社会政策、教育などについての優遇や甘さも際立っている。

いま求められているのは、もっともらしく一見理想主義的な理念を掲げて少数の人々の利益を図ることでなく、実質的に最大多数の国民を幸福にする穏健な左派や右派であり、多国籍企業、二重国籍なども含めて巧妙に国家への義務を逃れている企業や人への統制を国際的な協力のもとに行うことだろう。

そういう意味で、安倍政権が世界で最も安定しているのは、世界でもっともうまく行っているのは、伝統的な保守派の基盤に立ちながら、リベラルからもみてそれなりにやるべきことをしているからだ。イギリスの保守党はEU離脱ではしくじったが、国内的には安定している。

それなら左派からの希望はないのか。フランスではマクロンは希望ではある。左派から出発したが、右派左派を超越するといっている。これは、1974年の大統領選挙で、左派のポエールとドゴール派の公認候補シャバンデルマスを破ったジスカールデスタンを思わす発想の新しさだ。

ドイツでは社民党のショルツはもしかしてメルケルに勝てるかも知れない。左派だが政治能力において熟練しており、ヨーロッパのほかの国の左派ほど浮ついてない。

もうひとつ指摘しなくてはならないのは、主としてリベラルといわれる人たちが、スキャンダルに過度に敏感となり攻撃しすぎた弊害だ。情報化が進むと過去になら隠せたことも隠せない。その結果、過去には表面化するはずがなかったスキャンダルが出てくる。

そして、そのことが、政策や能力に比べてバランスが悪いほどに重視される。ヒラリーほど腐敗していたのは極端だが、フランス大統領選挙を見ても、フィヨンが妻や子供を十分な仕事なしに秘書としていた、マクロンが不倫同性愛(29歳年上の夫人がいながら同性愛の不倫をしたのでないか)とかで情勢ががらりと変わってしまう。

しかも、そうしたスキャンダルをつかむことは外国の諜報機関にとってより容易だ。前回の大統領選挙では社会党のストロスカーンIMF専務理事がニューヨークのホテルでの性的トラブルで失脚したが、アメリカの関与を疑う見方もくすぶる(当時はオバマ政権)。

内外の気にくわない政治家を“葬って”いるのであれば、プーチンが同じ事をすると民主主義の危機だというのは、「リベラル派の勝手気ままなダブルスタンダード」と言われても仕方がない。

どうしたら、そういうことをやめられるかといえば、スキャンダルに過度に敏感にならない、その攻撃を主たる政争の主題とにしないことだ。また、相手がリベラル派や左派だと甘く、保守派だと厳しいといった扱いをしないことだ。

また、言うまでもなく、野党第一党党首が二重国籍などというとんでもないスキャンダルをそれを攻撃することがなんと人権侵害だとかたいした話でないといって擁護したり、軽視する腐敗したマスコミが公器としての資格がないことはいうまでもない。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授

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