自宅のお風呂はダメ?高齢者公衆浴場無料事業に合理的根拠なし

伊藤 陽平

こんばんは。新宿区議会議員の伊藤陽平です。

予算特別委員会では、活発な議論が続きます。
私が質疑を行った高齢者健康増進事業「ふれあい入浴」という事業についてご紹介させていただきます。

本事業は2億円の予算が計上されており、60歳以上の方、身体障害者手帳、愛の手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれかをお持ちの方、未就学児を扶養し児童育成手当を受給している方を対象に、週に1回公衆浴場が無料になる事業です。

新宿区のホームページもご参考に↓
ふれあい入浴:新宿区

実際にふれあい入浴サービスをご利用いただいている方とお話をさせていただきましたが、
「新宿区のサービスはありがたい。」
と大変なご好評をいただいています。

大変素晴らしい事業だとは思いますが、公衆浴場に入ることが高齢者の健康増進という観点から、果たして適切な投資なのか考えてみました。

まず、公衆浴場を利用しなければならない理由があるのかということを考えなければいけません。

質疑と答弁でも合意が取れていますが、自宅のお風呂で健康になれないわけではありません。
あくまで、地域のコミュニティ、広いお風呂に入れて気持ち良い、あるいは外に出るきっかけ、という要素が大きなものです。

もちろん、公衆浴場を利用するメリットはたくさんありますが、こうした理由であれば、民間も含め他の事業で代替できるのか検討が必要です。
単に区民から人気がある事業というだけでは、現役世代からの所得移転、あるいは利益誘導を助長することになるため、見直しが必要ではないかと考えています。

次に、60歳以上がサービスの対象となっている点も見直しが必要です。

他自治体では、対象年齢が70歳以上であったり、自己負担があるものが確認できます。

各自治体の取り組み状況はこちら↓
行政との連携事業(入浴補助制度) | 【公式】東京銭湯/東京都浴場組合

答弁によると、新宿区のとある公共施設でお風呂の利用を60歳以上が対象としていたことが、本事業の対象年齢を決定する根拠となっていたそうで。

高齢者の定義については様々な議論が行われていますが、高齢者の方の中でも、仕事をしている方も増えています。
他区では70歳以上などの条件になっているところもあり、検討が必要です。
対象範囲が変われば財政的なインパクトも出てくるため、改めて対象者が60歳以上というのは妥当か、検討すべきでしょう。

また、新宿区だけの問題ではなく、他自治体でも同じような問題提起が行われています。

有名なシルバーパスの事例です↓
東京都、年間160億円のシルバーパス事業に合理的な根拠がないことを明言 | 東京都議会議員 おときた駿 公式サイト

高齢者の健康増進事業、あるいは敬老事業などは、大切なことだと考えています。
一方で、待機児童問題など、若者や子ども、あるいは将来世代に対して必要な福祉の供給が追いついていない現状も忘れてはいけません。

区政の場では、最低限の福祉を見極め、セーフティネットを拡充していくことが大切です。

本事業に限らず、区民からの満足度を根拠に事業を行えば、所得移転や利益誘導などが横行することになるでしょう。
合理的根拠が不明瞭な事業を見直し、未来の福祉を充実させることが必要です。

政治の世界では高齢者関連の案件はタブーに近いところもありますし、当ブログの読者の中にはシニア世代の方も含まれます。
こうしたテーマに触れると、世代間対立だと言われてしまうこともあります。
もちろん、決してそういった意図もありませんが、過剰に反応することなく一つの事業として見直しが必要です。

しかし、未来のために本当に必要な投資とは何かを熟考しながら、区政改革を行なってまいります。

それではこの辺で。