情報弱者の「速い思考」が政治を動かす

2017年03月20日 16:07


石原元知事の百条委員会は、予想通り何も出なかった。しいていえば彼が「環境基準のハードルを高く設定した」と認めたことぐらいだが、これは2014年に舛添知事が「安全宣言」で修正した。もともと法的根拠のない議会答弁なのだから、小池知事があらためて「安全・安心宣言」を出せばよい。

民放のワイドショーやバラエティは「石原氏の責任を追及しろ」というが、何の責任か。環境基準のハードルが高すぎたとすれば、それを(誤って)根拠にして豊洲移転を延期した小池氏こそ責任がある。石原氏の責任はもう終わった話だが、小池氏の決定はまだ変更されていない。彼女を百条委員会で尋問すべきだ。

他方、国会は森友学園で盛り上がっている。北朝鮮が日本に向かってミサイルを4発発射し、ロシアが北方領土にミサイルを配備するなど、日本のミサイル防衛が問われているが、政治もワイドショーもつまらない社会部ネタを追いかけている。

それはカーネマンがいうように、人間は論理を積み重ねて推論する遅い思考が苦手だからだ。脳の重さは体重の2%しかないが、脳は基礎代謝の20%を消費する。合理的に考える能力はすべての人に同じように備わってはいないので、情報弱者は反射的な速い思考でエネルギーを節約するのだ。

こういう傾向が最近つよまったのは、偶然ではない。若者はスマホしか見ないので、テレビは今や独居老人や専業主婦などの情報弱者のメディアになった。豊洲や森友は「数字が取れる」ので、ワイドショーはそればかりやる。これを見た情報弱者の世間話はそればかりになるので、話題についていくためにテレビを見る…という悪循環である。

マスコミに流されないためには、こういうバイアスを自覚して自分で考える「遅い思考」の訓練が必要だ。4月からのアゴラ経済塾では、「速い思考」による同調圧力に流されないで合理的に考えるにはどうすればいいかを考える。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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