クールジャパン人材育成検討会@霞が関。スタート。
ATカーニー梅澤さんデジハリ杉山さんセガゲームス松原さん元気ジャパン渡邉さんなど。
ぼくはデジタル☓コンテンツ特区の人材育成構想としてCiPの紹介をするとともに、学校の壁を打ち破る「デジタル超学校」構想についてプレゼンしました。
東京港区竹芝にポップとテックの集積する拠点を作るコンテンツ・イノベーション・プログラム、CiP構想を進めています。
ウォーターフロントの1.5haの土地を再開発し、コンテンツ、メディア、IT、IoTの先端を集め、デジタルのテストベッドと、クラスターを2020年、オリンピック直前に開業します。
TechとPop、シリコンバレーとハリウッドを合体したような、でもユルくて、おもしろくて、みんなが集う、日本にしかできない街にしたい。研究・教育からビジネスまで一気通貫で行える場です。
政府クールジャパン拠点として位置づけられ、既に10件以上の産学官プロジェクトが進んでいます。
ぼくが所属する大学院、慶應義塾大学メディアデザイン研究科KMDの一部が入居し、スタンフォードなどの大学や研究機関にも合流を呼びかけています。マンガ・アニメの専門学校にも入居してもらいたい。同時に、プログラミングを子どもに教えるNPOにも参加を促しています。子どもから大学院まで。
お金の後ろ盾も大事。起業を支援するファンドの誘致・創設やビジネスマッチングの活動も活発にしたい。ブロックチェーンを使った起業特区も考えています。母体のCiP協議会には、通信、放送、音楽、アニメ、ゲーム、学校、ベンチャー支援など約60の企業・団体が参加しています。
ここは国家戦略特区の認定を受けており、これまでやっちゃいかんとされていたことを打ち破る、21世紀の出島にしたい。
電波特区、著作権特区、ロボット特区など、さまざまな規制緩和を導入したいと考えています。
たとえば電波特区として、ロボット向けに電波を発射する世界初のIoT放送局ができないか。
孤児著作物を蓄積してここなら見ていいという著作権特区、アーカイブ特区を作りたい。経産省の支援で、その基盤となる音楽分野のデータベースを構築しています。
デジタルサイネージ特区。おもてなし多言語サイネージを整備する総務省の実証実験をいま竹芝で展開中です。街開きすれば、屋外広告規制などを緩めて、道路にプロジェクションマッピングする、といったことも実現したい。
スポーツも開発します。技術で人体を拡張し、誰もが超人になれる「超人スポーツ」も進めています。2020年にはオリパラと並んで超人スポーツの世界大会を開く計画で、竹芝でも会場を用意したい。これは内閣官房オリパラ室に支援いただいています。
世界オタク研究所を作ります。アニフェスなど世界で開かれる日本の文化ファンが集うイベントの動員数は年間総計2千万人。それらを主導しているのは、MITやスタンフォード、北京大学など一級の大学のオタク連中。そのコミュニティの総本山を竹芝に作る。この構想は経産省がサポートしています。
そうしたプロジェクトを走らせながら新しい教育機関を置きます。そこに参画するKMDは2008年にできたメディアデザインの教育・研究のために2008年にできた大学院で、メディアのデザイン、テクノロジー、マネジメント、ポリシーの文理融合をモットーにしています。
同時にKMDは産学連携の「リアル」プロジェクトで、つまりスポンサーとともに、サービスやビジネスを作り出す研究スタイルをとっています。さまざまな企業主導のプロジェクトに学生たちを放り込んで成果を上げさせて教育する、という手法です。
そのKMDの教育・研究手法を持ち込みます。既にKMDは英RCAや米Prattなど海外のアートスクールやシンガポール国立大学などと連携していますが、竹芝にはスタンフォード大学にも同居してもらえるよう誘いかけているところです。
ただ、東京のデジタル開発という面では竹芝はきっかけにすぎません。政府クールジャパン構想としては、竹芝の他に羽田の開発も重視されています。羽田を再開発する主体は現時点では決まっていません。それが見えれば、竹芝・羽田直結のプランを描きたい。
竹芝・羽田の間にはJR品川周辺の大開発が待っています。竹芝の10倍程度の広さがあり、特区で開発した先端を社会実装するにはいい地域になりそう。さらに北上すれば秋葉原や東大に至る。ベイエリア一帯のデジタル・ベルト構想が描けます。
渋谷の再開発も賑やかになってきました。昨年、渋谷クリエイティブタウンという社団法人が発足し、渋谷のメディア化、コンテンツ化を目論んでいます。ソーシャルゲーム、J-Pop、ファッション、NHKなどが集結する町。そこでは竹芝と並んで総務省のサイネージ実験も展開されています。
東京をタテヨコに結んで、広域デジタル拠点を構成できないかと夢想しているところです。
京都でも構想があります。映画業界や京大、立命館らが人材育成と産業支援の拠点を作るというCiPに似たプランが動き始めました。大阪でも大型のエンタメ拠点の整備が進められています。沖縄も同様です。そういう拠点との連携を進めて、点を線に、面にしていきたい。デジタル生産・発信列島へ。
韓国にモデルがあります。人材育成のコンテンツコリアラボCKLと、起業支援のクリエイティブエコノミーリーダーCEL。韓国政府が大きな予算を使って運営しています。産業界と政府とソウル市が連携して作ったメディア集積地、デジタルメディアシティDMCもあります。
CiP協議会は韓国政府・コンテンツ振興院と連携するため、さきごろソウルで協定を締結しました。大統領弾劾で揺れる韓国ですが、そういう時期だからこそ、文化面・経済面での長期的な連携に道を開いておくというものです。
シンガポールに隣接するマレーシア・ジョホールバルの「イスカンダル」という開発地域では、政府がメディアの教育・研究拠点を整備しています。ロンドン大学が中心的な役割を果たしているのですが、そこともCiPは協定を結び、連携することとしました。
このようにして、東京、アメリカ、ヨーロッパ、アジアをつなぐハブになれるといいと考えています。
CiPは純民間として走り出して、その後プロジェクトごとに政府に支援いただいています。が、シリコンバレーやハリウッドの迫力、韓国の気迫には太刀打ちできません。MITやスタンフォードやシンガポール国立大学も遠い存在です。国家戦略として、より大きなデザインを描けないものでしょうか。
たとえば研究教育では、デジタル超学校・超大学とも呼べるような、テックとポップという日本の強みを凝縮した、そのマネジメントとポリシーも合わせた、機関をデザインしたい。
大学や研究機関の枠を超えた、強いプレイヤーの集合体で、授業は全部MOOCsのようなバーチャル。だけど、企業と直結してサービスや製品を実装して、起業支援じゃなくて、もっとリアルなビジネス、リアルな産業にしていく特区の環境。そんなかんじ。
クールジャパン・知財本部ではポップ系の人材育成構想が論じられるようになりました。一方、経産省・産業構造審議会では、デジタルのテクノロジー系の人材育成策が検討されるそうです。ポップとテックの構想を融合して、大きな国家戦略にしてもらいたい。
そんな妄想を続けています。
(イラストはピョコタン画伯です。)
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年3月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。