「2017年 大局を読む」(長谷川慶太郎著 徳間書店)を読んで、対年なショックを受けました。
住宅ローン金利が史上最低の0.5%割れを起こしているにもかかわらず、3割近くが延滞に陥っているというのです。
当該箇所を同書から引用すると以下のようになります。
住宅ローンの未済、つまり住宅ローンを借りた人が契約どおりに返済できないというのが住宅ローン全体の3割近くに上っている。銀行のいちばんの恥部だ。そのことについて住宅業界や銀行業界から広告をもらっているマスコミは目をつぶっている。銀行によって住宅ローンの未済の割合は違うけれども、未成の物件は競売にかけなくてはいけないので、今はどこの裁判所でも競売担当の部署は人でごった返している。
その原因は次のように書かれています。
若い人には非正規社員が増えているし、正規社員でもシャープや東芝の例を見ればあきらかなように大企業といえどもいつリストラされるかわからない。中小企業ならなおさらで、安定した雇用で長期間の住宅ローンを払い続けるという点では厳しい時代になってきた。
長谷川氏には失礼ですが、本当に理由はこれだけなのでしょうか?
同書には「銀行が与信の低い人たちにまで貸し付けるはずがない」という記述がありますが、昨今の銀行の個人融資の増加に鑑みると、まず審査基準が甘くなっているのではないかと私は思います。
他の原因として、貸付後(個人にとっては借り入れ後)の次のような事情が影響しているのではないでしょうか?
まず、実質賃金の低下が原因のひとつではないかと考えます。いつを基準とするかによって異なりますので各自お調べいただきたいのですが、私がざっとグーグル検索した結果、財務省の資料で1991年から2012年の間に「実質賃金の大幅な減少」というPDFが出てきました。
最近の記事では「4年連続実質賃金低下」という記事がヒットしました。アバウトに言ってしまえば、バブル崩壊後実質賃金は下がり続けているのです。
実際、私の大学時代の同級生には「30代に課長になってからずっと年収が減っている」と言う友人が複数人いました。
大手銀行も、バブル崩壊前は「30歳を過ぎれば年収1000万円」と言われていたのに、今では定年(もしくは転籍)まで年収1000万円を死守するのに必死だそうです。昔は、出世しない窓際族でも50歳あたりだと年収1500万円はあったそうです。
もう一つの原因として考えられるのは、教育費の高騰です。
今や、全て国公立で通しても子供一人大学を卒業させるまでに1000万円近くかかるそうです。私立が入ったり塾や予備校が入れば、教育費はもっと膨らみます。私自身の経験からも、娘一人大学を出すまでに本当にあれやこれやとお金がかかり、社会人になってくれてホッと一息つけました。
いずれにしても、大きな変化の真っ只中で30年先の収入を計算すること自体がナンセンスなのかもしれません。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。