刑務所がイスラム過激化の温床に

2017年05月25日 11:30

マンチェスターの「コンサート会場自爆テロ」の概要

英国中部マンチェスターのコンサート会場「マンチェスター・アリーナ」で22日午後10時半過ぎ(現地時間)、米人気歌手アリアナ・グランデさん(23)のコンサートが終わった直後、会場ロビーで自爆テロが発生、警察当局の発表によると、少なくとも22人が死去、59人が負傷した。イスラム過激派テロ組織「イスラム国」(IS)は23日、ネットを通じて犯行を声明した。

爆発はグランデさんが最後の歌を終わり舞台から姿を消した直後に起きた。ファンたちはパニックとなり、出口に殺到。会場側は「慌てないでも大丈夫です」とアナウンスしたが、多くのファンたちは大騒ぎで混乱したという。
「マンチェスター・アリーナ」のコンサート会場内で自爆テロが行われていたら、さらに多くの犠牲者が出ただろうという。英国では2005年7月、ロンドンで同時テロが起き、52人が死亡した。今回はそれに次いで多くの犠牲者が出た。警察当局によると、犠牲者22人のうち12人が16歳以下で、最年少は8歳の女の子だった。

テリーザ・メイ英首相は、「テロリストは冷酷にも子供たちを狙っていた」と述べ、怒りを表明。同首相は全ての選挙活動を中止し、緊急安全会議を招集し、テロ警戒レベルを最高の「危機的」に引き上げた。マンチェスターのコンサート会場自爆テロは6月8日実施予定の総選挙(下院)にも影響を与えるのではないか、と一部で受け取られている。

マンチェスター警察によると、自爆テロ犯は22歳のリビア系英国人で、1994年マンチェスター生まれのサルマン・アベディ容疑者(Salman Abedi)と判明した。警察側は23日、同容疑者宅を捜査した。同時に、23歳の男性が自爆テロ関連で拘束された。そして24日に入ると、他の3人の男性が拘束されている。男たちの詳細な身元は不明だ。

刑務所がイスラム過激化の温床に

釘やボルトを混入した爆発物は明らかに可能な限り多数の犠牲者を出す狙いがあったはずだ。現時点では、単独犯とみられているが、フランス南部ニース市中心部のプロムナード・デ・ザングレの遊歩道で昨年7月に起きた「トラック乱入テロ事件」でも実行犯は一人だったが、その背後にトラック購入担当や資金集めなどネットワークが暗躍していたことが判明した。同じように、マンチェスターのコンサート会場テロ事件でもその背後に組織的なネットワークが存在していた可能性が排除できない(ニースの大型トラック乱入テロ事件では85人が犠牲となった)。

ロンドン中心部の英議事堂近くで3月22日、テロ事件が発生し、少なくとも3人が犠牲になり、40人が負傷したばかりだ。テロリストは治安関係者が首都ロンドンに集中している時、マンチェスター市でターゲットを慎重に選んでいった。そして今回、ソフト・ターゲットの「コンサート会場」でテロを実行したわけだ。マンチェスター市は英国の都市の中でも政治的に過激主義の拠点だ。

テロ対策といえば、すぐに警備の強化や警察官増員がテーマとなる。実際、メイ首相は、「テロの対象となる公共施設、スポーツ、コンサート会場の警備のため軍隊を動員する」と言明したばかりだ。

看過できない点は、欧州社会では多くの若者は職場を見つけられず、不満をもち、社会に憤りを感じながら次第に過激化していく傾向がみられることだ。特に、欧州社会に統合できない移民出身の若者たちの間にその傾向が目立つ。

欧米のテロ問題専門家は「ジハーディスト(聖戦主義者)は驚くほどコーランに無知だ。最近は、窃盗などで刑務所に入ったイスラム系若者がそこでリクルートされる傾向が目立つ。家族も知らないうちに短期間で過激化していくのだ」という。

ISは昨年、欧州に居住するテロリストに対し、「シリアやイラクの聖戦に参戦する必要はない。自身の国で聖戦を続行するべきだ」と指令している。欧州のテロ対策関係者は、「イスラム過激派テロ組織の聖戦はもはやシリア、イラクではなく、欧州国内で始まっている。欧米の治安関係者はイスラム系若者の過激化防止にもっと本腰を入れるべきだ」と提言している。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年5月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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