兵庫県知事選、勝谷誠彦まさかのジャイアントキリングか?

勝谷誠彦氏公式サイトより

そりゃ勝谷さんのことは10年以上、彼のメルマガを購読してきて尊敬している。面識を得てからもたまに連絡を取らせていただいて非常に鋭いヒントをいただいて学ばせてもらってきたが、兵庫県知事選、さすがの知名度といえども、どこの政党の支援も得られないでは、「井戸王国」とも言える現職の分厚い地盤を崩すのは無理だと思っていた。

出馬表明時点での情勢調査では、維新の支持層では実はトップだったことは陣営関係者から聞いていたので、以前も書いたように、トランプ的な緻密な戦略的マーケティングを展開すれば、それなりに戦えると思ったが、本音を言うと、この日曜日の結果は「ゼロ当」。つまり大河ドラマ開始とほぼ同時に現職当確が出るくらいの情勢かと思っていたのだが、どっこい、先週末の情勢調査でものすごい追い上げをしていることが分かった。

兵庫知事選、井戸氏やや先行 朝日新聞選情勢調査:朝日新聞デジタル

いやはや、びっくりしました。自民、民進、公明、社民とほとんどの政党からの推薦をもらって5選を目指す現職であれば、情勢報道としては「井戸氏優勢」というのが相場だ。ところが.…。「先行」ですらなく「やや先行」!(笑)選挙報道に詳しい人ならご存知と思うが、「やや先行」というのは支持率の差で10%未満だったことを示唆している。下手をすれば5%くらいの差まで詰めているのではないか。

ここのところツイッターの政治系ツイートを見ていると、“アンチ小池”系の自民支持者あたりから、一部の矛先が兵庫に向いて(苦笑)勝谷さんを「エセ保守」呼ばわりして辻元清美氏との交友をあげつらったりして、安倍さんの親友であることを意図的にスルーしたようなネガティブキャンペーンが散見されてきた。「そこまで自民側が本気になるほどの情勢なのか」、やや疑問だったのがこれで氷解した。これは本気になるわ(笑)

なぜ、勝谷さんが奇跡的な快進撃を進めてきたのかといえば、ご本人の文化人としてのテレビ的知名度もさることながら、脇を固めるブレーンが選挙戦術から政策立案まで、おそらく現在の日本の選挙業界でも「最強」チームを結成している。

その一端をのぞけるのが、この神戸新聞の記事だ。

神戸新聞NEXT|兵庫県知事選2017|連載|<変える力 訴える力>(1)勝谷誠彦候補「頭脳戦」 

キーパーソンが一部匿名になっているが、政界や選挙業界で仕事をしている人なら、「あ〜、あの人ね」とすぐに分かるスーパー軍師もいれば、ここの記事には書いていないが、勝谷さんの灘高人脈で、凄腕の行政経験者もいると聞いている。

アメリカ大統領選で、トランプが吠えているのは実は裏で緻密な計算があってのことだったのは、渡瀬さんが何度もアゴラで書いてきた通りだが、勝谷選対もまさに緻密な調査とデータに基づいて方向性を決めている。勝谷さん自身が軍事に詳しく、まさに勝つための兵法の実践をされているわけだが、高度なノウハウを持った部隊の力はすごい。象徴的なのは、この記事にもあるように、当初の立候補表明会見でサングラス姿からメガネに変えたものの、ネットの反応が不評だったことから軌道修正していた。

私も個人会社で、立候補予定者や経営者らのイメージコンサルティングをやっているが、専門家の感性頼みなところがありがちな中で、ネットやデータで出てくる「世論」とのハイブリッドというのは感心する。それによって絶妙な方向性を見出したのだろう。折を見てSNSはチェックしていて、「いつもの勝谷さんのイメージも残しつつ、爽やかさを前面に押し出すようになったな」と思ってはいたが、どうやらある程度の有権者に受け入れられているようだ。

もちろん、勝谷ファンでも当選後を不安視する保守系の有権者は少なくない。著名人知事が歴代続いてきた東京都政の20年がどうだったのかを考えても、意見が分かれるところであり、私も議会対策などに不安を抱いてはいるが(まさかここまで健闘するとは思わなかったので…苦笑)、安倍さんから辻元さんまで与野党幅広く、国政のキーパーソンとは繋がっており、そうした人脈をうまく活用することができるか。

実際、彼自身が支援していた田中康夫氏の長野県政の勃興から終焉までの経緯は当事者として見届け、なおかつ青島幸男氏、橋下徹氏など他のタレント知事の成功・失敗事例も分析しているようなので、どこまでケンカし、どこで落とし所をつけるのか、それなりの算段は付けるはずだ。

このまま爆走するのか、投票率もにらみながらの終盤戦になりそうだ。ここまできたら、失うものはないので、“尼崎のトランプ”の本領を発揮してもらいたい。兵庫知事選で、ジャイアントキリングが起こるのか、都議選と同じくらい目が離せなくなってきた。


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