バニラ・エア問題!事実と異なる報道に腐心するメディア

尾藤 克之

画像はwikipediaより引用

昨日、朝日新聞などによれば、バニラ・エアが奄美空港で車いすの乗客に腕の力を使ってタラップを自力で上るよう強要したとの報道があった。「車いす客に自力でタラップ上がらせる バニラ・エア謝罪」。

各種ネットニュースでも、バニラ・エアの対応にさまざまな意見があるようだ。「バニラ・エアが燃えている。しかし、木島さんも燃えている」(乙武洋匡)。情報収集をおこなったので、私も障害者支援団体を運営する立場として私見を申し上げたい。

問題の概要について

航空会社が車椅子の客にタラップを這い上がらせるとは由々しき問題である。しかし、バニラ・エアのHPによると、車椅子利用者は事前連絡が必要と書いてある。ストレッチャーを用意するためだ。

まず、騒動の中心となった男性(44)は、当日、事前連絡を怠っていた。当日のほかの車椅子の乗客は問題なく搭乗している。通常は、車椅子の乗客が事前予約なしで利用することは考えられない。異なるオペレーションを運用するためである。

しかも、奄美空港の現場では、男性地上職員が少ないとの情報がある。このような場合、手を貸すこと自体に危険があり困難であったように思われる。いずれにしても、異なるオペレーションの運用が難しいことは間違いない。

次ぎに、奄美空港の構造を確認しよう。設備は、搭乗橋(PBB)が1ヶ所のみである。大きな空港は、搭乗橋は何ヶ所も設置されリフト式バスなど乗降する設備が整っている。奄美空港の設備自体が時代に即していなかったともいえる。現場は、会社の規則を守っただけで、責められるものではない。

仮説だが、搭乗橋が完成する秋頃までは安全性を考え、歩行が困難な方の搭乗には消極的だった可能性はあるかもしれない。しかし、これは企業姿勢とはまったく異なるものだ。搭乗橋など空港整備の問題を踏まえて安全性を考慮した上での暫定的な対応である。

また、法律面で問題があるとの指摘があるので整理をしたい。バニラ・エアは「歩けない人は乗れない」と発言したとある。これは、障害者差別解消法第八条が該当する。さらに不当な差別的取扱いをしたことで、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)に違反する可能性があるとの指摘があるので検証したい。

私は詳細に情報収集したが、差別的な発言の確認はとれなかった。「障害者差別解消法第八条」に抵触する可能性は低いだろう。また、バリアフリー法に関しては、国交省のHPでは対象に航空機も含まれるが、タラップの乗降まではふくまれない。事前の連絡があれば、ストレッチャーを用意するのだからバニラ・エアに問題があるとはいえない。

しかし、アメリカの公共施設や空港のバリアフリー化が日本よりもかなり先進的で法的にも厳しいことは間違いないだろう。日本では法律がないからといって守勢にまわるのではなく、企業姿勢を高める契機とすべきである。

現状では、バニラ・エアが車椅子の客に対して不適切な対応をおこなったとメディアが報じているが状況は異なっているようだ。その後、バニラ・エアは男性に謝罪し、座いす型の担架アシストストレッチャーの使用を開始し階段昇降機を導入することを発表する。その対応は迅速だった。私はバニラ・エアの企業姿勢を強く支持したい。

LCCは目的に応じて利用すべきだ

LCC(Low-Cost Carrier)は、効率化を極限まで向上させることで低価格なサービスを提供する航空会社のことである。一般的に考えられるレベルを超越した徹底的なコスト削減が実施されている。一方、レガシーは既存の航空会社に分類される。

LCCは既存のレガシーとは異なるものと考えなくてはいけない。また、LCCとレガシーを比較してどちらが良いかを議論している人が多いが、意味があるとはいえない。常に選択肢は乗客側にあり、目的や好みに合わせてチョイスすることが必要である。

尾藤克之
コラムニスト

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