新入社員がLGBTだったら会社はどうする?

2017年07月07日 13:30

なんだかハフィントンポストみたいな記事ですが(笑)、都議選が終わって間もない先日(7月4日)、企業の人事担当者らを対象に、LGBTのビジネスパーソンをどう受け入れて組織作りをしていくのかを考えるセミナーが都内で行われ、旧知の関係者からの誘いで見学してきた。

ビジネスの現場でも高まるLGBTへの関心

この日のセミナーは、ともに人材育成を手がけるカケハシ  スカイソリューションズ(本社・東京)とシェイク(同)の共同主催。主催者によると、17社から22人の人事担当者らが参加したが、そのなかには誰でも知っている某飲料メーカーなどの大手企業が数社、先進的な首長で知られる首都圏の某自治体もいて関心の高まりを感じさせる。

さすがに「ご時世」ではある。東京都渋谷区が2年前、全国初のLGBTのパートナーシップを公認する条例を施行。区長選の争点として注目されたが、電通のダイバーシティラボが7万人のビジネスパーソンらを対象に行った調査では、7.6%がLGBTだという。国や自治体の実態調査がない状況なので、あくまで「参考値」ではあるものの、欧州各国で同性婚が制度化されたり、日本でも企業のCMに同性カップルが描かれたりして、社会的にプレゼンスは確かに高まっている。セミナーでも紹介されていたが、東洋経済のCSR調査では、LGBTに対する基本方針を策定した大手企業の割合も2014年の約19%から約22%に微増傾向にある。

なお、こうした時流について、マイノリティーに対する恩ちょう的な視点でのみ語るのは全体像を見誤ることになる。企業内で“LGBT活躍”を後押しすることは、“女性活躍”と同じく、人材の多様化を進めることになる。シェイクの上林周平副社長も言及していたが、企業組織を硬直化させないためには、経営的にも人事的にも重要な視点なのだ(なのでハフィントンポストじゃないけど、アゴラでも取り上げる所以の一つだ)。

「そもそも」から理解を促すセミナー

とはいえ、LGBTは近年話題にはなっているものの、身近にそうした人がいない(orカミングアウトしている人がいない)方がまだ多いだろう。実際、この日の冒頭、参加者に挙手で尋ねたところ、身近にいると認識している人は少数だった。私自身もLGBTという言葉を知ったのは、家入一真氏を担ぎ出した14年都知事選の時で、業務以外のコミュニケーション(例・プライベートで飲みに行く)をしたことのあるLGBTの人は現在いない。

セミナーではこの点、前半は「そもそも」から理解するようにおさらいした。セクシャリティは「カラダの性(生物学的な性)」「スキになる性(性的指向)」「ココロの性(自認する性)の3つの要素から成る。

LGBTというと「体と心の性が一致していない人」くらいしか認識がなかった私のような人が多いと思うが、たとえば「体は女性だが心は男性」という人が男性と付き合っている場合、それは見た目こそ異性カップルだが、「ゲイカップル」になるわけだ。おそらく参加者の多くもそうだったろうが、セミナーを傍聴していて、自分のLGBTへの認識が実に表層的であったことに気づくきっかけにはなった。

当事者ならではの貴重な視点が理解を深める

このほか、各国の状況や渋谷区など日本国内の行政の取り組み状況の紹介もあったが、「座学」だけでは心構えをするのは難しいだろう。制度(仏)を作るにも実効性(魂)を持たせられなければ意義が薄らぐ。しかし、セミナーでは、当事者の生の声が聞けることで価値があった。主催者スタッフの一人と、そしてゲストで登壇した3人のLGBTの当事者たちが思い思いに貴重な体験談や提言を話してくれたのだ。

「カミングアウト前は一人で悶々と悩んだ」

「ある会社の話で聞いたが、海外赴任が(異性愛の)既婚者が対象なので、結婚指輪をはめていない(という風潮がある)」

「多様性重視を打ち出している企業が社員応募のフォームの性別記入で男女しかないと、応募しづらくなる」

「家族持ちを対象にした従来の福利厚生が適用対象になるのか?」

言われてみれば、なるほどと思える話が並ぶ。福祉関連企業で働くレズビアンの女性は「『彼氏や彼女がいるのか?』という話題になった時、『パートナー』なら誰も傷つかない魔法の言葉になる」と経験に基づいた助言をしていた。

社内での受け入れの一番のきっかけは、よき相談相手を見つけられるかどうかのようだ。女性から性転換したトランスジェンダーで、同じ福祉関連企業に務める男性は、「自分が段階的にカミングアウトしていったとき、上司から『どうしたいのか?』、周囲への説明に上司が同席したほうがいいのか、全部選ばせてくれたのがありがたかった」と振り返る。

投資会社で働くゲイの男性は、新卒で大手証券会社に入社したが、上司から心ない言葉を言われる辛い体験もあったが、転職先の現在の勤務先では生き生きと働いている。彼は、「(LGBT受け入れの)人材研修をやって全体に浸透させるのは時間が掛かるので、困った時に誰に相談すればいいのかわかるのがいい。自分も一人の同僚の女性に話してからすごく楽になった」と振り返った。

政治・行政と同じく企業も変わっていくか

渋谷区のパートナーシップの後、政界でもLGBT政策への関心が高まっており、今回の都議選でも各政党の政策でも程度の差はあれ一定の配慮がみられたが、政治・行政はあくまで市井の環境づくりのお膳立てをするに過ぎない。民間企業でLGBTの人たちが働きやすい職場を作ることができないと、彼らの社会的地位が安定しない。その意味で企業側の取り組み状況がどう変わっていくのかは大きなポイントだが、今回のセミナーのような取り組みが今後増えていくのかどうか注目したい。


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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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