【映画評】ライフ

渡 まち子

提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

世界各国から6人の宇宙飛行士がISS(国際宇宙ステーション)に集結し、火星で採取された地球外生命体の細胞を極秘調査することに。医者のデビッド、検疫官のミランダ、航空エンジニアのローリーらは、脳と筋肉だけで構成された神秘的な生命体の生態に驚愕する。だが、生命維持装置の誤作動から、その生命体は人間を敵とみなし、圧倒的な生命力で宇宙飛行士たちの命を脅かす。6人は逃げ場のない宇宙で追い詰められていくが…。

地球外生命体の恐怖を描くSFホラー「ライフ」。内容は、傑作SF「エイリアン」に激似で、宇宙空間という密室サバイバルという設定は「ゼロ・グラビティ」という風に、既視感はあるものの、それでも映像の面白さや豪華キャストが意外な順番で命を落とす様、ラストのどんでん返しまで、それなりに見所が用意されている。まず火星から採取した地球外生命体のビジュアルだが、最初は何とも愛らしい。柔らかいクリーム色で小さな身体をひらひらさせる様子は、ちょっと“氷の妖精”ことクリオネを思わせる。

だが、カルビンと名付けられたこの生命体は、相手が自分に危害を加えると判断するやいなや、すさまじい勢いで反撃・攻撃するのだ。あっという間に進化し成長したカルビンの目的はただひとつ、生き延びること。そのためなら流血、殺人、なんのその!だ。シンプルかつ強烈な、生存という目的のためには手段は選ばない。その意味で「ライフ」というタイトルは的を得ているのだが、この自然ドキュメンタリーのような、平和的な題名に騙されてしまう観客がいるのでは…と心配でならない。PG12指定なので、スプラッタ描写もふんだんに登場する。

地球外生命体との遭遇は、即、脅威! このメッセージにはいろいろと言いたいことはあるが、そもそも勝手に採取して研究しようという、上から目線の人類側にも問題があるのかも。いずれにしても「エイリアン」へのオマージュたっぷりの本作、あっと驚くラストは、ちょっと予想がつくとはいえ、背筋が凍るはずだ。やはり本家の「エイリアン」は偉大なSF作品だったのだと改めて感じさせてくれる1本に仕上がっている。豪華キャストが揃う中、日本人のシステム・エンジニア役の真田広之が、しっかり存在感を示しているのが嬉しい。
【55点】
(原題「LIFE」)
(アメリカ/ダニエル・エスピノーサ監督/ジェイク・ギレンホール、レベッカ・ファーガソン、ライアン・レイノルズ、他)
(豪華キャスト度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年7月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。