北朝鮮のミサイルは迎撃で防げるのか

2017年08月02日 14:00

28日に日本近海に落とされた北朝鮮のミサイルは、潮匡人さんによるとICBMと断定してよい。弾道ミサイルはこれが最初ではないが、大気圏に突入して海に落ちるまでの映像がNHKの複数のカメラに収められている。

3500kmの上空から海面までほぼ原型をとどめて落ちてきたのは「大気圏に再突入する際の高熱に耐える素材の開発か輸入に成功した」と推定できるそうだ。光っているのは摩擦熱で、熱に耐えない素材だとバラバラになって飛散するが、この映像では一つの閃光のまま海面に突入している。

問題はこういうミサイルを迎撃で防げるのかということだが、自衛隊や米軍のイージス艦に搭載した迎撃ミサイルでは、ICBMのように成層圏まで上がる「ロフテッド軌道」から急降下してくるミサイルを撃ち落とすことは困難だという。ただICBMの目標は米本土で、数もまだ5発ぐらいと推定される。

日本にとって脅威なのは、数百発配備されている中距離ミサイルや巡航ミサイルだ。北朝鮮は同時に50発ぐらい巡航ミサイルを発射できる能力をもっているので、すべて迎撃ミサイルで撃ち落とすことは不可能だ。核弾頭も20個ぐらいもっている可能性があり、それを搭載したミサイルが1発でも日本国内に落ちると大惨事になる。

これに対して自衛隊は(憲法の制約で)敵基地の攻撃能力をもっていない。「専守防衛」で国民の生命は守れないのだ。米軍は先制攻撃できるが、それに対して北朝鮮が反撃すると、北のミサイルを瞬時に全滅させない限り、ソウルが火の海になることは避けられない。これが先制攻撃の制約になっている。

長期的に問題なのは、北朝鮮のICBMで日米同盟が変質することだ。日米安保条約では、日本が攻撃された場合に在日米軍が反撃できるが、その義務は明記されていない。今の貧弱なICBMではアメリカの西海岸がせいぜいだろうが、手をこまねいていると東海岸も射程に収めたICBMを開発する可能性がある。

米軍の反撃に対して北がICBMでワシントンを攻撃する能力をもったら、トランプ大統領は米国民の生命をリスクにさらして反撃するだろうか。尖閣諸島で武力衝突が起こった程度では、米軍は動かないかもしれない。かといって自衛隊の反撃能力は限られているので、米軍が動けないと自衛隊も動けない。

現状で北が本格的な攻撃を仕掛けてくるとは思えないが、国内でクーデタなどの偶発事件が起こった場合、何が起こるかは予想できない。間違いないのは、このまま放置すると北は核開発を進めて脅威が強まるということだ。在日米軍を「負担」と考えるのではなく、日本国民を守る「防護壁」と考え、日米同盟の防衛力を維持する体制の整備が必要だろう。

これはあなたの生命の問題である。今まで国会では憲法論争ばかりやって国民の生命を守る具体策はほとんど論じてこなかったが、憲法9条でミサイルを防ぐことはできない。今週末のアゴラ合宿では、潮さんなどと一緒に、高まった北朝鮮の脅威にどう対応するかを話し合いたい(まだ申し込めます)。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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