元トップCAに聞く!ファーストクラスよりも大切なもの

2017年08月12日 06:00

写真はインタビューに答える七條氏。


数年前、元CAの方が開催するセミナーに参加したところ、「ファーストクラスの乗客は、気品があり、姿勢がよく、歯並びがよく、加齢臭もなく、気配りができ、振る舞いが美しい」という話を聞かされたことがある。実際に元CAを売りにする人は多く、ニーズがあることは理解できるが、特異さも際立っていたように感じた。

昨年、アゴラでファーストクラスに関連する記事を投稿したところかなりの反響があった。アゴラのようなニュースサイトでは「読者にとって役立つ情報」という視点が不可欠になる。しかし、元CAの方の情報は客観性が評価しにくいと感じていた。そのため、元CAという肩書きのある方の書籍紹介はこれまで控えていた。

一流の接客スタイルとはどのようなものか

七條千恵美(以下、七條氏)は日本航空にCAとして入社。乗客から評価の高いCAに贈られる「Dream Skyward賞」を受賞。そのなかでも、際立った影響力のあるCAのみが選ばれる「Dream Skyward優秀賞」(取締役表彰)を受けている。サービス教官として1000人以上を指導した実績もあり、社内での人事考課も高かったようだ。

七條氏の著書、『接客の一流、二流、三流』(アスカビジネス)は、一流の接客者になるための考え方や心構え、対応力などを紹介する内容である。まず接客にはマニュアルが存在する。マニュアルで決められたことを決められた通りに淡々とこなす人も多い。しかし、機械的な対応では相手に気持ちは通じない。

「忙しいときに、マニュアル対応しかできないのであれば、残念ながら、いつかその仕事は機械に奪われてしまうことでしょう。『雑談』は効果的だと言う人がいます。しかし、やたらと話しかけることは要注意です。最低限のコミュニケーションに留めるほうがいいでしょう。これはちょっとした勘違いから生まれています。」(七條氏)

「相手が静かにしていたら『どんなときでも雑談をすることがいい接客』というのは思い込みなのです。もし、資料を読みたいと思っている人に雑談で話しかけていたら、顧客心理からかけ離れた対応になってしまいます。」(同)

現実的な問題としてこのようなことは少なくない。静かに資料を読みたいのに、マシンガンにように話しかけてくる人がいる。これは職種に限ったことではない。

「そのうえで考えることは、お客さまとの向き合い方です。『お客さまは神様だ』というフレーズを意識して、『とにかく怒らせてはいけない』と媚びるような接客をする人もいるでしょう。実際に、特別扱いやそのような接客スタイルを好むお客さまもいます。ですが、それだけでは向き合っているとはいえません。」(七條氏)

「そのような場面では、先入観を取り払って大切な人ならどうするかという視点で考えます。大切な家族だったらどのように接して欲しいか?という視点です。家族だったらどう接するかという視点は、相手を想う素晴らしい接客スタイルといえます。」(同)

お客様の「大丈夫」の真意を理解する

自分の要望をはっきりと主張する乗客がいる。一方で、本音は別のところにあるにもかかわらず、「大丈夫」と答える乗客も存在する。

「こちら側の不手際でご迷惑をかけ、お詫びに伺った際に『もう大丈夫だから』とお答えになったとします。その言葉を鵜呑みにし、問題は解決したと決めつけるのは時期尚早なこともあります。また、お体が不自由なお客さまやお子さま連れのお客さま、体調不良のお客さまも『大丈夫です』とおっしゃる方が少なくありません。」(七條氏)

「その際にも、真意はどうなのか。こちらの手を煩わせることへの申し訳なさが引き起こしている『遠慮』からの言葉かを、見極める必要があります。」(同)

口では「大丈夫」といいながら、小さな不満を抱えていることは少なくない。よって、「大丈夫です」を鵜呑みにはできない。

「そのときのお客さまの声のトーン、表情などから、それが本音であるのか否かを察することに意識を向けなくてはいけません。お客さまが抱えている感情に気づいたら、それに即した対応をとることです。『いつでも遠慮なくお申しつけください』という具体的な提案があれば、安心するものです。」(七條氏)

「しかし状況によっては『押しつけがましい自己満足なサービスだ』とお客さまに思われかねません。相手の真意を引き出すことが大切です。」(同)

座席コンフィギュレーション(configuration)は、航空機の客室や座席配列のことを指すが、乗客の人格やアイデンティティーを計るための物差しでは無い。日本では、いつの間にか、CAと乗客との間に生じた、歪曲された特殊な空間が一層の勘違いを生じさせているようにも感じている。ファーストクラス伝説などは最たるものだろう。

よく知られた話だが、イギリスのキャメロン元首相は、公務はレガシーを使いプライベートはLCCを使用する。キャメロン元首相はイギリス政府の長、元連合王国内閣総理大臣のエグゼクティブである。また、七條氏は次ぎのようにも述べている。「華やかさばかりが先行するCAの仕事がいかに地に足のついたものかを知っていただきたい」。

多くの人は、ファーストクラスに注目しがちだが、乗客としての優劣などは存在しない。また、本物のエグゼクティブであれば、ファーストクラスに乗って、これ見よがしに自慢することなど有り得ない所業だ。人々の安全を守り、ハイレベルなサービスを提供する航空業界のノウハウは奥が深いようである。

日航ジャンボ機墜落事故から12日で32年(33回忌・弔い上げ)を迎えた。御巣鷹山の麓を流れる川では灯籠流しが行われた。謹んで哀悼の意を表したい。

参考書籍
接客の一流、二流、三流』(アスカビジネス)

追伸

さて、話は変わるが、3年半ぶりに出版をした。タイトルは、『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』(同友館)になる。私にとっては9冊目の本になるが、社内の理不尽にジェームズ・ボンドが立ち向かう設定にした。ボンドなら社内の理不尽に対してどのように立ち向かい対峙するかをストーリー仕立てにした。

アゴラでは、「ビジネス著者養成セミナー」という著者希望者のためのセミナーを隔月で、「出版道場」という出版希望者のニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。日頃、お世話になっている著者の方や出版社からのご協力もいただき、私も彼らが精魂込めて手がけた書籍紹介の記事を掲載している。

今回はそうしたなかで、記事や企画が編集者の目に留まり出版の実現にいたった。読者の皆さまへ感謝として報告を申し上げたい。

尾藤克之
コラムニスト

<アゴラ研究所からお知らせ>
<第7回>アゴラ著者入門セミナー開催(2017年9月12日)のお知らせ
次回は、9月12日(火)夜に開催します。著者セミナー、並びに出版道場へのご関心が高いことから、ご優待キャンペーンとして定額5.000円のところを、今回はキャンペーン価格3,500円でご優待します。お申込みをお待ちしております。
お問い合わせ先 info@agorajp.com

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