「考えすぎ」と「タラレバ」はビジネスを破滅へと導く

尾藤 克之

写真は野呂氏(リクナビNEXTジャーナル/2015.05.22)

なぜ人は余計なことを考えてしまうのか。考えることで「何らかのメリット」が得られるものと「そうでないもの」がある。何らかのメリットが得られるものであれば真剣に考えればよいが、実際には「そうでないもの」に悩むことのほうが多い。考えれば考えるほど、不安が増幅され思考が停止していく。

今回は、『考えなくてもうまくいく人の習慣』(ワニブックス)を紹介したい。著者は、放送作家の野呂エイシロウ氏。仕事・お金・人間関係において深く考えすぎることのムダや、考えることの多くが無意味な妄想であることをわかりやすく説明している。理にかなった内容といえる。なお、本書は「深く考えずに」読むことが望ましいようだ。

ムダな「考える時間」がチャンスを逃す

「考えすぎ」という言葉がある。このような思考はネガティブな人に多く、「物事を深く難しく考えすぎる」傾向が強い。いま深く考えていることは、今後10年にわたって影響を及ぼす重大なことか、それともいまの瞬間だけのことか。しかし、悩んでいる不安が現実になったとき、できることは限られている。

例えば、サラ金から借金をしたとする。悩んでも支払日の月末はやってくる。不安を取り除くには完済するしかない。そのことは自分でもわかっているのに、考えすぎることで、本来やるべきではない行動に引っ張られる場合がある。福本伸行氏の人気漫画「カイジ」などはその典型かも知れない。こうなったら元も子もない。

「よくあるのが、将来起こるかどうかよくわからないことを心配することです。僕は毎日、コンサルタントとして企業のミーティングに参加しています。そのミーティングで『よし、ではAプランにしよう』と決定したのに、『いや、Aプランを実行すると、うまくいかないかもしれないし』と、なかなか行動に移さない人がいます。」(野呂氏)

「将来的にうまくいかない可能性はあります。ですがそれは同時に、うまくいくかもしれないということ。そんなことを考えている時間があったら、Aプランを実行するために社内でメンバーを募るとか、各社に働きかけるとか、前に進められることがたくさんあります。もちろん、気持ちはわかります。」(同)

以前に勤務していた会社では、人事・総務などのコーポレート部門にネガティブチェッカーが多かった。なにかをやろうとすると、リスクを主張する。彼らの主張は、「リスクをゼロにすれば失敗する危険性が無くなる」というものだが、周囲の意欲を減退させてモチベーションを下げていく。そのことに気がついていない。

「とにかく行動する、それ以外に証明する方法はありません。どうしようもないことを心配するのは、真っ黒な雨雲に対して『晴れよ!』と言っているのと同じ。天候は移り気なので、いくら祈っても雨が降るときは降るし、晴れるときは晴れます。夏は暑いし、冬は寒いものです。人間がジタバタしても変えようがないのです。」(野呂氏)

口にするたび行動時間をロスするタラレバ

英語で「仮定法過去」という文法がある。現在の事実とは反対のことを仮定するときに使用する。「If I were a bird, I would fly to you.」は「もし羽があったら、あなたのもとに飛んでいけるのに」という意味で使用するが、実際はあなたのもとに飛んでいくことはできない。「As I am not a bird.」、私は鳥ではないからである。

「世の中には『もし~なら』とか『○○○○すれば』といった言葉があふれています。タラレバを口にするだけでは、状況は変わりません。羽でも生やす努力をしないかぎり、あっという間に歳をとってしまいます。よく居酒屋で『俺がもう少し若かったら…』と、話をしている人がいますがおすすめしません。」(野呂氏)

「タラレバは、言えば言うほど、体に重石がついたように動かなくなってしまいます。ビジネスパーソンとしての寿命も縮んでしまいます。変えられない物事を嘆いて時間をムダにするのはやめましょう。ビジネスで最も必要なことはスピードです。」(同)

ビジネスに失敗はつきものだ。失敗を恐れないメンタリティのみがそれを可能にする。前例のないものであれば、何の失敗もなく成功することなど考えにくい。

「最悪に備えるのは必要なことですが、どんなに準備をしても失敗するときはしてしまうものです。合理的な範囲を超えた心配は進歩の邪魔になってしまいます。だったら割り切ってムダなことは考えないと決めてしまうのがいいと思いませんか。」(野呂氏)

さて、話は変わるが、実は約3年半ぶりに出版をした。タイトルは『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』で、私にとっては9冊目の本になる。アゴラでは、「ビジネス著者養成セミナー」という著者希望者のためのセミナーを隔月で、「出版道場」という出版希望者のニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。

私は、著者や出版社から献本されたなかで、ニュースとして相応しいものを紹介記事として掲載している。今回はそうしたなかで、記事が編集者の目に留まり出版にいたった。読者の皆さまへ感謝としてご報告を申し上げたい。

参考書籍
考えなくてもうまくいく人の習慣』(ワニブックス)

尾藤克之
コラムニスト

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