IAEA第61回年次総会の焦点

2017年09月20日 11:30

国際原子力機関(IAEA)第61回年次総会は18日、5日間の日程でウィーンの本部で開幕した。同総会(加盟国168カ国)では、今月3日、6回目の核実験をした北朝鮮の核問題、2015年7月に合意したイランとの核交渉後の履行問題に焦点が集まった。

▲天野事務局長の新任期を祝するコリンソン総会議長(2017年9月18日、IAEA公式サイトから)

▲天野事務局長の新任期を祝するコリンソン総会議長(2017年9月18日、IAEA公式サイトから)

天野之弥事務局長は冒頭演説の中で、北朝鮮の核実験について、「非常に遺憾だ」(extremely regrettable)と厳しく批判し、「北朝鮮は国連安保理決議やIAEA理事会決議を速やかに履行すべきだ」と重ねて要求する一方、「IAEAは政治情勢が許せば北で査察活動が再開できるように常に準備態勢を敷いている」と述べた。

IAEAと北朝鮮との間で核保障措置協定が締結されたのは1992年1月30日だ。今年で25年目を迎えたが、北が2009年4月、IAEA査察官を国外追放。それ以降、IAEAは北の核関連施設へのアクセスを完全に失い、現在に至る。すなわち、IAEAは過去8年間、北の核関連施設へのアクセスを完全に失った状況が続いている。IAEA査察局は今年8月、北の核問題検証専属のチームを発足させたばかりだ(「IAEAで『北専属査察チーム』発足」(2017年9月13日参考)。なお、総会では、国連安保理決議の完全遵守を北朝鮮に要求する新たな総会決議案が提出されるものとみられている。

ちなみに、日本からIAEA総会に参加した松山政司科学技術担当相は18日午前の一般演説で、北朝鮮の核実験を「許されざる暴挙だ。核拡散防止体制(NPT)への重大な挑戦だ」と強く非難し、国際社会は結束して北朝鮮に非核化を要求して最大限の圧力を行使すべきだと訴えた。

イラン問題では2015年7月14日、国連安保常任理事国(米英仏露中)にドイツを加えた6カ国とイランとの間で続けられてきたイラン核協議が「包括的共同行動計画」(Joint Comprehensive Plan of Action.=JCPOA)で合意し、2002年以来13年間に及ぶ核協議に終止符を打ったばかりだ。IAEAは現在、イラン核計画の全容解明に向けて検証作業を続けている。天野事務局長は、「テヘランはこれまでIAEAとの合意内容を遵守してきた。引き続き、検証を継続していく」と表明した。

トランプ米大統領はオバマ政権下で締結したイラン核合意について、「イランの核開発を阻止するのに十分ではない」と指摘し、同合意を破棄する意向をこれまで何度も表明している。それに対し、天野事務局長は「イランの核開発は現在、IAEAとのJCPOAに基づき、最も厳密な監視体制下に置かれている」と説明し、核検証の専門機関としてIAEAは今後も核合意内容の完全な履行をテヘランに強く求めていく考えを強調した。

天野事務局長はまた、IAEA創設60年の歴史を振り返り、「核エネルギーは最もクリーンなエネルギーで地球の環境保全にも貢献する。また、がん対策など医療分野や害虫対峙などの農業分野でもIAEAは貢献してきた」と強調し、「全ての加盟国が核エネルギーの平和利用の恩恵を受けるべきだ」と述べた。

IAEAは過去、開発途上国への核医療の啓蒙を訴えてきた。例えば、「ガン治療のためのIAEA行動計画」(PACT)では「胸部健康グローバル・イニシャティヴ」(BHGI)と共同で開発途上国のガン医療を促進。2014年には西アフリカのシエラレオネで猛威を振るっていたエボラ出血熱(EVD)の迅速な診断を下せる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)関連技術の利用促進を支援してきた。また、ブラジルなど中南米諸国で感染が広がるジカ熱対策では昨年2月2日、ジカウイルスを媒介する蚊の繁殖を抑えるため、放射線で蚊の不妊化を進める技術(Sterile Insect Technique)の移転を明らかにしている。

また、加盟国の原子力発電所が燃料不足に陥る懸念を解消するため、IAEAがカザフスタンで核燃料の持続的供給を保証する目的で構築中の最大90tの低濃縮ウラン貯蔵施設「低濃縮ウランバンク」( LEU Bank Storage Facility) の竣工式が先月末行われ、来年から操業開始する予定であるという。

なお、総会は18日、3月8日の理事会で決定した天野事務局長(70)の新たな4年の任期(3選)を承認した。新任期は今年12月1日から始まる。
マリア・ゼネイダ・アンガラ・コリンソン(Maria Zeneida Angara Collinson)総会議長(駐ウィーンの国連機関担当フィリピン大使)から正式の任命を受けた天野氏は、「感謝と謙虚の心で受け止める。加盟国の信頼と信用に感謝する。今後も核の平和開発の促進のために精力的に公平で透明なやり方で努力していきたい」と、感謝の辞を述べた。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年9月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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