大介護時代到来!介護し介護される時代の新しい働き方とは

2017年09月26日 11:30

※9月18日筆者撮影

先日、9月16日から18日にかけて六本木アークヒルズで行われた「注文を間違える料理店」というイベントに行ってきました。認知症の方々がレストランスタッフを務めるというイベントで、認知症の方と身近にふれあい、認知症について広く知ってもらうという活動のようです。また、「注文を間違える」というタイトルにも象徴されるように、「多少の間違いに対しては、寛容な社会でありたい」という社会像を目指しているようにも受け取れました。

今回のイベントでは、クラウドファンディングにて寄付をし、招待をいただくという形態で、3日間ともに4回の入れ替え制になっていました。わたしは最終日の午後2時からの部に招待されました。

ホールスタッフは認知症の方々なのですが、フロアにはそれ以外に、認知症スタッフの方々をサポートする、プロの介護士とみられる人々がかなりの人数が配置され、配膳などでスタッフが迷っている場合などにアドバイスを行っていました。

わたしは「注文を間違えられる」というラッキーな出来事に遭遇しましたが(アイスルイボスティがホットルイボスティになっていました)、介護スタッフのきめ細やかさもあってか、こういったハプニングはあまり多くの人には起こらず、何らかのハプニングがあっても介護スタッフが懇切丁寧に対応してくれ、「やはりまだまだ、すごく寛容であるとはいえない社会」の中で開催されるイベントとして、かなり配慮されたものになっていました。

「支える」「支えられる」という境界線がゆらいでいる

今回のイベントの「新しさ」をあげるとすれば、それは、レストランが「普通のおしゃれなレストラン」であるということに尽きます。出て来る料理はサントリーや一風堂、とらやなどとの共催でなかなかのクオリティです。そこには従来の「福祉」色がなく、「福祉として認知症の方々が働いている」のではなく、支えられながらも「普通に働いている」のだということが実感される仕組みとなっています。

これまでの社会では、「支える人」と「支えられる人」は固定化していると思われていました。これまでも、障害者事業の一環で作業所での軽作業や、病院内でのパン販売などが行われてきました。

しかし、「働く」という枠組みの中では、こういった事業はあくまでマイナーなものと捉えられがちで、「特殊な人々のための、特殊な事業」とみられることが殆どだったと思います。これから労働人口の減少が日本を黒船のように襲うわけですが、一方で、労働人口の中の“マイノリティ”(女性及び高齢者)は着実に増えていきます。

また、IT化により、肢体が不自由でも就業可能になる仕事は増え、「働く場所」にとらわれない就業も可能になりつつあり、“マイノリティがマジョリティになる日”も遠くない中で、「働く」という概念そのものの根本的見直しを迫られています。

増える認知症、2030年には700万人越に

人生百年時代到来、ともいわれる中で、高齢化に伴って必然的に認知症の人口は増えていきます。厚生労働省の、認知症有病率を現状のまま据え置いた試算では、2015人に517万人であった認知症人口は、2020年には602万人、2030年には744万人と算出されています。

認知症人口の増加に伴い、そもそも、認知症を「患者」として扱うのが妥当なのかという声も数年前から出はじめています。百年生きていれば、誰もが認知症を発症する可能性があるともいえるのです。精神的ハンデ、肉体的ハンデ、子育てや介護などの「家庭の事情」というハンデを抱えた人が「特殊な人たちへの福祉」ではなく「普通に働く」状態への変換が急務だといえます。初期の認知症や軽度認知障害の方が、IT化などの恩恵を受けて「利益を出せる」ような仕組みのなかで働けるようになれば(道のりは厳しいかもしれませんが)、とても画期的ではないでしょうか。

また、「介護離職」の問題も年々深刻さを増していき、社会や会社組織に与える影響の深刻さは、「保育園問題」よりも大きくなる可能性があります。少子化により、「保育園問題」はある一定のところで収束に向かうでしょうが、それ以後は「介護施設落ちた日本死ね問題」(語弊はありますが)が猖獗を極めることも予想されます。認知症の介護は特に、子育てとは異なり「いつ終わるかわからない」という不確実性をはらみ、介護施設や介護サービスは「保育園」とは異なり、「家族の就労のための施策」ではありません。筆者としては、介護サービスにも「家族の就労」という観点はほしいところだと考えています。

なにはともあれ、今後数十年間は ”マイノリティと労働市場”に目が離せない期間となりそうです。


松村 むつみ
放射線診断医、メディカルライター
アゴラ出版道場二期生

東海地方の国立大学医学部卒業、首都圏の公立大学放射線医学講座助教を得て、現在、横浜市や関東地方の複数の病院で勤務。二児の母。乳腺・核医学を専門とし、日常診療に重きを置くごく普通の医師だったが、子育ての過程で社会問題に興味を抱き、医療政策をウォッチするようになる。日本医療政策機構医療政策講座修了。日々、医療や政策についてわかりやすく伝えることを心がけている。

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放射線診断医、メディカルライター、アゴラ出版道場二期生

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