政局の先読みは小池氏ではなく音喜多氏に軍配が上がる?

尾藤 克之

2015年の安全保障関連法案の採決時の様子

「食を去てん。古より皆死あり。民信なくば立たず」(顔淵第十二)。これは、孔子が弟子に「信なくば立たず」について説いている一節になる。「食」「兵」は捨てられるが「信」を捨ててはいけない、それを捨てたら人ではないという意味になる。孔子は春秋時代の中国の思想家で儒家の始と言われているが、はるか昔から「信」の重要性は説かれていた。

政治家の「信なくば立たず」の意味

くら替えをした政治家の「信」とは何だろうか。今回、希望の党へくら替えをした政治家は「議員の椅子」にしがみつきたいだけという声がある。くら替え以外の方は、小池都知事誕生に腐心した方、共感した塾生が中心であろう。自らの理念(信なくば立たず)によって立候補を決意したので大義がある。

8月21日、立候補の共同記者会見で、前原氏は次のように主張した。「政権選択の選挙で理念、政策の合わないところと協力することはできない。理念、政策、民進党が掲げる私が掲げる、All for All。こういった考え方が重要。自分の政治生命を賭けてこの代表選を戦うこと、All for Allの社会を必ず日本で築きたい」。

増税についても、前原氏は「社会保障財源」として容認し、枝野氏は見送るべきとした。増税については法律論まで主張し、「(10%に)上がることは法律で決まっている」と強調する。「しっかりと組み替え、どういう具体的な受益があるか国民に示したい」とし、増税分の使途を明確化していく考えを示していた。

希望の党は「増税は凍結する」としているが、矛盾はしないのだろうか。増税は国民生活に直結する重要な判断ではないのか。

安保はどうだろうか。民進党の議員が必死に反対した安保法制。「安全保障」とは、国家及び国民の安全を他国の脅威から守ることであり国家根幹をなす政策である。しかし、漁船衝突事件では、情報を隠し国民の目をあざむいた前歴がある。政治とは言葉であり、言葉に信がなければ成り立たないのではないか。

音喜多議員の政局のヨミは秀逸

くら替えする政治家の中には、アイキャッチ画像のように安保法の衆議院採決の際にプラカードを掲げて猛反対した議員がいる。命がけで猛反対した理念を捨てるのだろうか。そして、そのような政治家が「希望の党・第1次公認」として名を連ねている。魂を売ってしまったのか。驚きを禁じ得ない。希望の党の足かせにならないか心配である。

ニュース各誌によれば、アゴラでもお馴染みの、都民ファーストの会都議の、音喜多駿氏、上田令子氏が離党を表明したとある。音喜多氏は都政の問題が山積するなか、小池知事が国政政党の代表に就任したことなどに反発した。さらに、「連合」は、希望の党の支援を見送る方向で調整に入ったとされている。

連合の主力労組電力労連は原発を推進している。希望の党は原発ゼロ。連合にすれば、見送りは当然の判断になるが、くら替えした政治家には痛手になる。そう考えると、ここまでの政局をヨミきった、音喜多氏の先見性は秀逸ということになる。しかも、自らの存在感をアピールできる絶妙のタイミング。状況次第では衆院選立候補もあり得るように思う。

そういえば、都議選でUAゼンセンから都民ファースト支援を取り付けた敏腕都議がいた。その功績が認められて都議団幹事長にも就任している。増子博樹幹事長に、原発に関連する施策の意思決定や判断のプロセスについてお聞きしたいものである。UAゼンセンなどの労組側にはどのように説明をしているのだろうか。

メディアが発信する政局を読む

拙著『007に学ぶ仕事術』でも触れているが、007シリーズの80年代までは、アメリカ・旧ソ連による冷戦構造が色濃く反映している。2000年以降は、テロ問題が敵として登場してくる。007シリーズなら今回の舞台をどのように描くのだろうか。私にはムーアの作品にあるような一種のコメディさを感じずにはいられない。

メディアには、社会の中で発生している事象を精査し、体系的に取りまとめる役割が求められる。過去のように報道によって世論を扇動し、一般市民を啓蒙する手法は通じない。メディアに期待されるものは刻々と変化している。

さて、少々話は変わるが、アゴラの一昨年同時期のアクセス数(月間)は、単体で300万PV、Yahoo!ニュース等への配信分も含めても全体で700万PVほどだった。昨年~今年は、単体1000万PV、全体3000万PVを実現している。今回、私が書いた記事は情報の読み方になるが、非常によい教材がある。手に取ってもらいたい。

参考書籍
朝日新聞がなくなる日 – “反権力ごっこ”とフェイクニュース』(ワニブックス)
新田哲史(著)、宇佐美典也(著)

尾藤克之
コラムニスト

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