「2025年問題」から逃げる政治家:『社会保障クライシス』

2017年10月21日 06:30
社会保障クライシス
山田 謙次
東洋経済新報社
★★★☆☆


本書の内容は日本の社会保障の現状と予測で、とりたてて新しいことが書いてあるわけではないが、この「2025年問題」には今回の総選挙で与野党ともにまじめに取り組もうとしない。たとえば小池百合子氏は街頭演説でこういう。

このまま「安倍1強」政治を許すのか否か。しがらみ政治のままで、まったりとした安定を続けていくのか。2025年に団塊の世代の皆さんがいよいよ後期高齢者入りしていく。そういう中で政策そのものの見直し、立て付けから考えなくてはいけないのではないだろうか。

これは正しい問いだが、その答は「ワイズ・スペンディング」。東京都はそれで今年度、720億円節約したというが、問題はそんなスケールではないのだ。

2025年には2200万人が後期高齢者になり、医療費の負担が激増する。1人あたりの医療費は平均30万円だが、75歳になると75万円になるので、医療費は1.5倍になって54兆円に増え、介護も20兆円と倍増する。そのうえ低所得の後期高齢者は1割負担になるので、医療費の公的負担が激増する。

総額118兆円の社会保障給付は、2025年には149兆円に膨張する。年金給付は60兆円になって限界なので、支給開始年齢を上げるなどの対応は避けられないが、医療サービスの削減は容易ではない。世界でもまれなフリーアクセス(誰でも大病院で受診できる)や、国民皆保険などの制度を見直すしかない。

名目GDPが年平均1%以上増えるとしても、2025年には国民負担率は52%程度になり、さらに財政赤字が10%程度あるので60%を超える。これは「高福祉・高負担」のスウェーデンを上回るが、日本の(見かけ上の)税負担は26%と低い。その差額を社会保険料で現役世代が負担し、それでも足りない穴を国債で埋めているからだ。

この世代間格差は消費税率を2%上げても焼け石に水だが、安倍政権はそれすらケチって「教育無償化」に回し、野党は全面的に増税反対だ。こうして問題を先送りしていると、そのうち金利が上がって財政が破綻する(国債の新規発行ができなくなる)可能性があるが、破綻しなくても将来世代の可処分所得が下がって貧困化することは確実だ。

これは世代間のゼロサム・ゲームだが、高齢化する社会では問題を先送りするほど一人あたりの負担は大きくなる。安倍政権はそれをゼロ金利による「金融抑圧」で隠しているが、2025年は社会不安が顕在化する「臨界点」になるおそれが強い。今から準備しても早すぎることはない。「クライシス」は8年後に迫っているのだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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