貴乃花のモンゴル力士との交際禁止が諸悪の根源

2017年12月12日 22:00

Wikipediaより:編集部

日馬富士の暴行事件の現場の状況はだんだん明らかになっているが、そこに至る経緯はどうもよく分からない。

そんな中で気になるのは、貴ノ岩が負け越したあと錦糸町の『カラオケBARウランバートル』という店で、負け越しが決まった後に憂さを晴らしの大酒を飲み、“俺はナイラ(星の売買まで含むのかいわゆる無気力相撲まで含むのか分からないが)はやらない”などと、ほかのモンゴル力士とのサークルに入っていないので、負け越したのだと愚痴っていたのがほかのモンゴル力士たちの耳に入って、それも説教される原因になったというのだ。

このことを貴乃花サイドの人は、八百長の証拠のようにいうが、おかしな話である。当たり前のことだが、八百長で星を譲ったから負け越したというなら分かるが、負け越しの原因が八百長をしなかったなどということはありえない。

過去5場所の貴ノ岩の成績を見ると、11勝4敗(このとき白鵬に勝った)、6勝9敗、5勝7敗、6勝9敗、8勝7敗であって、具体的な取り組みを見ても、八百長をしなかったから何か特別に不都合なことがあったわけでもない。大関などへの昇進とか、優勝をかけての大一番があったわけでもない。

だとすれば、貴ノ岩の不満は、自分のふがいなさを棚においてうさを寂しさを紛らわすための戯れ言ではないか。

私は貴ノ岩は寂しかったのだと思う。相撲という厳しい世界に入って、ほかのモンゴル人力士は、しばしば集まって先輩たちにアドバイスを求めたり励ましてもらったりしているはずだ。そういうサークルに自分は親方から参加を禁止されれば、不満は募るし、精神的にもよろしいはずがない。仲良くやっているほかのモンゴル力士がうらやましさから出た繰り言だったようにも見える。

私は、そもそも、外国人力士に対して、親方が同国人力士との付き合いを禁じるというのがひどい人権侵害だと思う。企業のなかでも同窓会もあるし、同県人会もある。それに出るななどという権利は上司にない。

とくに外国人にとっては、とても大事な機会だ。そもそも日本人は同胞と日本人会などつくるのが大好きである。

貴ノ岩が荒れた酒を飲むようになるのも無理のないところであって(そういう会がないのならまだしもあるのに参加できないのは辛い)、その責任は貴乃花親方にある。また、貴乃花部屋では、女将さんが部屋に住んでいないが、普通の部屋なら女将さんがおっかさんとして精神安定剤になっているのに、その機能が欠けていると言うこともある。

それから、貴ノ岩が泥酔してモンゴル人力士の八百長を臭わすようなことを口走っていたとしたら、(根も葉もない話であろうがなかろうが)、どこの企業でも同業者間でもただではすまない。それなりの根拠があって内々に告発するならそれこそ貴乃花親方が得意のマスコミへのリークなど駆使して、上手にやってくれるはずで、やけ酒を呑んでこともあろうことかモンゴル人のたまり場で言う話ではあるまい。そのあたり、親方の監督不行届でもあろう。

無気力プレイは不可避だが防止策はある

それでは、大相撲に八百長はモンゴル人力士に限らず八百長はあるのか?もしそれが賭博などもからんだとか、金銭でのやりとりによるものをいうなら、昔のようなことはないと思いたい。

白鵬のいささか横綱らしくないといわれる「猫だまし」という技がある。関脇・栃煌山を相手に「パチン!」と目の前で手を叩き「猫だまし」2連発をやって非難されたものだが、こういう省力相撲をやるのは、八百長をやっていない証拠かも知れない。

それでは、無気力相撲はどうかといわれれば、これは、間違いなく存在する。8勝7敗が7勝8敗の倍もあるのはおかしい。明確な貸し借りかどうかはともかく、忖度相撲ではあるのだろう。というか、たとえば、野球で、ある打者にホームラン王がかかっているとして、もし、取らしたいために、ストレートだけで勝負する、四球を出さないようにするとか、逆に争っている同僚を援護するために、単打は打たれるかも知れないがホームランにはならない球を投げるとかいうのも、広い意味での無気力プレイだ。あるいは、サッカーで本大会出場が決まったチームが、メンバーを落として戦うのもそうだ。そうした広義の無気力プレイは防ぐのは非常に難しい。

ではどうしたらいいかといえば、根絶はできないが、減らすことはできる。

たとえば、白鵬と日馬富士の取り組みで、優勝がかかっているほうが勝つことが多いと言うが、そんな疑惑が生じるのも上位同士の取り組みを千秋楽にもってくるからだ。ほかのリーグ戦方式のスポーツでそんなことしていない。取り組みは基本的にはくじ引きで決めればいいことだ。相撲観戦の醍醐味から行っても、初日から均等に好取組があった方が楽しいではないか。

モンゴル力士に限らず、無気力相撲を減らしたいなら、誰が怪しいとか当てずっぽうでいい加減なことをいうまえに、頭を使えと言いたい。

追伸 貴乃花は、貴ノ岩の協会による聴取を、送検したら応じるとか言うことだったと思うが、検察の結論が出るまでダメと言い出したらしい。貴ノ岩に本当の自分の気持ちを言わせてなるものかと言われても仕方ない。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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