ベネズエラ、露ロスネフトに30年間の海底ガス田採掘権を提供

プーチン氏と会談するベネズエラ・マドゥロ大統領(ロシア大統領府サイトより:編集部)

ベネズエラのマドゥロ大統領は債務の返済を目指して資金集めに奔走している。チャベス前政権の時からベネズエラと取引が盛んであったのはロシアと中国であった。ここに来て、中国はベネズエラへの負担を幾分か軽減したいような雰囲気でもある。

となると、マドゥロ大統領が唯一頼りにできるのはロシアである。ところが、11月にベネズエラ紙『EL UNIVERSAL』を始め数紙が<30億ドル(3600億円)分の負債の再編にロシアが応じる>ことを報じたが、それと引き換えに、ロシアは<ベネズエラの港にロシアの軍艦が一度に3隻、15日間の停泊が出来る>ようになることを要望したことが明らかにされた。

更に、12月17日と18日には同国の複数の電子紙がロシアを訪問中のマドゥロ大統領がベネズエラ国営石油公社(PDVSA)が所有する<二つのガス海底田「パタオ」と「メヒリョネス」の30年間に亘る採掘権をロスネフト(Rosneft)に譲渡する>こと決めたことを報じた。

この決定が下されるには、今夏<8月にロスネフトがベネズエラに60億ドル(6800億円)を融資している>ことと関係していた。

歴史とは皮肉なもので、チャベスがボリバル社会主義革命のクーデターを起こす前まで当時のベネズエラ国営石油公社は国営であるとはいっても政府の介入は殆どなかった。しかし、チャベスが大統領になると、社会主義の政策を遂行する一貫としてベネズエラ石油公社に政府が介入を始めて完全に国営企業化された。しかし、その時に役員として送り込まれたのはチェベスのクーデターに忠実だった企業経営に能力のない軍人らであった。

当時、チャベス大統領は<「今日、酷い経営の石油企業に終止符が打たれた。これが石油企業の真の国営化である。(社会主義者の我々の手に)取り戻すのに最後に残されていた組織体であった。5月1日には、すべての業界を(社会主義政権下に)取り戻し、そのすべてに国旗を掲揚しよう」>と2007年2月28日に盛大に声明を発表したのであった。皮肉にも、それから10年が経過した今、国家は悲惨な危機状態に陥っている。そして、逆に国営化していた企業を他国の影響下に置かねばならなくなっているのである。

国家の財源の8割以上を原油の輸出に依存して来たベネズエラにとって、その基幹企業である石油公社のこれから先30年のガス田の採掘権の他国企業への譲渡は正に国家を身売りしたも同然のような決定である。しかも、採油した原油の多くも負債の返済だとしてロシアや中国に送っている。このような状態が今後も長く維持されることは国家の存続には不可能である。

更にベネズエラがお人よしなのは、<今年5月にロスネフトがキューバに約束した25万トンの経由をべネズエラを通してキューバに提供する>のであるが、<その勘定はベネズエラが担う>ことになるとされているのである。

それ以外に、これまでベネズエラは原油をキューバに<日毎5万5000バレルを医者などのキューバからベネズエラへの派遣で相殺>して来ているのである。昨年はそれが<8万7000バレルの提供>であった。<チャベス政権下では10万バレルを提供>していた。

一方のロシアにとって、ベネズエラは地政学的に必ず支配下に置きたいというのが願いで、ベネズエラの窮状は逆にロシアにとって良い機会となっている。ロシアのラテンアメリカ対策ではニカラグア、キューバ、ベネズエラの3か国をロシアの勢力圏に置くのが狙いで、ニカラグアは既にロシアの影響下にある。ベネズエラのこの国家危機が続く限り、同国を支援し続けて行くのはロシアである。

そして、キューバは12月16日に<ロスネフトのCEOのイゴール・セチンがキューバの首都ハバナを訪問してラウル・カストロと会談した>のが明らかにされている。これは両国の関係を前進させるために更なる一歩だと見られている。

トランプ大統領がキューバとの関係改善に無関心さを装っていることは、ロシアに取ってキューバを嘗てのソ連とキューバの関係にまで引き揚げることが容易になりつつある。