“麻薬国家”ベネズエラ大統領の2人の甥が米国で懲役18年の判決

裁判の模様を伝えるスペイン語メディア「CUBANET」(同サイトより:編集部)

昨年12月14日、ニューヨークの連邦裁判所にてべネズエラのマドゥロ大統領の甥っ子二人が800キロの麻薬を米国に密輸しようとした罪で懲役18年の判決がポール・クロティー裁判官によって下された。

ベネズエラが麻薬国家でであることを証明するかのように、彼らが麻薬を密輸する際には空港の大統領専用のハンガーを利用していたというのである。ベネズエラ国家が密輸している麻薬はコロンビアでコロンビア革命軍(FARC)が栽培したものである。コロンビア革命軍は一昨年解散となったが、まだ残党が解散に反対して武器の放棄を受け入れていない。

二人の甥っ子が逮捕されたのは2015年11月であった。エフライン・アントニオ・カンポ・フロレス(32)とフランシスコ・フローレス・デ・フレイタス(31)の二人である。彼らは800キロの麻薬をベネズエラから空輸でホンジュラスに運び、そこから陸送でメキシコを経由して米国に持ち込むという計画だった。

ベネズエラのシモン・ボリバル・デ・マイケティア空港からの多量の麻薬の発送はいつも大統領専用のハンガーを使っていたということを公判でフランシスコ・フローレスが供述した。

二人は、この麻薬の販売で2000万ドル(22億6000万円)を稼ぐつもりでいた。それを叔母であるシリア・フローレスの選挙資金に充てるつもりだったというのだ。

シリア・フローレスとは、マドゥロ大統領夫人のことである。エフライン・アントニオ・カンポ・フロレスの母親とシリア・フローレスは姉妹だったが、エフラインが8歳の時に母親が亡くなり、シリアがエフラインを引き取って育てた。また、フランシスコの父親はシリアの弟である。

シリア・フローレスの前職は弁護士で、チャベス政権下でも重要なポストを担い、旦那のマドゥロ大統領よりもチャベス支持派の中では政治的な影響力は上だと言われている。

甥っ子二人の逮捕に結びついたのは米国の麻薬取締局(DEA)に協力していた二人の人物から提供された情報が重要な要素になったという。その一人はDEAではCW-1と呼ばれていた人物で、もともとホンジュラスで活動していた麻薬密売人で、陰ではDEAに協力していた。その彼に甥っ子二人が接触して来たというのだ。

甥っ子二人はホンジュラスで800キロの麻薬を受け入れてくれるのであればCW-1に90万ドル(1億円)を提供すると提案したという。

その後、甥っ子二人が麻薬の最初の送り先ハイチを訪問していた時にDEAの指示でハイチの警察当局は彼ら二人を逮捕したのであるが、それからひと月も経過しない内にCW-1は殺害された。甥っ子二人が逮捕されたことに対し、ベネズエラ側からの報復だろうと推察されている。

甥っ子二人が逮捕されるのにDEAに協力したもう一人の人物も、匿名による情報提供者によると、同様に殺害されたそうだ。

検察は、彼ら二人が以前から麻薬の密売を行っていたと供述している録音を公判で提出した。それは、弁護側が、彼ら二人は麻薬密売に手慣れていない素人だという弁護の根拠にしようとしていたものだった。

同様に、逮捕される前の2015年10月26日にDEAによる覆面麻薬密売人を前に、甥っ子の二人が、ベネズエラに存在しているカルテル「Cartel de los Soles」は軍部の高官と政府の要人によってコントロールされていると語っていることが録音されていたのも証拠として検察は公判に提出した。

さらに二人は、このカルテル以外にベネズエラに隣国からカルテルが進入しようものなら、軍部と政府がそれを権力でもって潰すのも仕事であると説明している。そのような事から、ベネズエラではカルテルは政府のカルテルが存在しているだけだということも明らかにされた。

裁判では、検察はコロンビア革命軍とも関係を持っていたことも理由に挙げて甥っ子二人に30年の服役を要求していた。しかし、クロティー裁判官は懲役18年、5万ドル(560万円)の罰金を科した。そして、収監される刑務所も家族の訪問が比較的に容易となるようにフロリダの刑務所を指定した。

米国はマドゥロ政権を窮地に追い込むためにありとあらゆる機会を利用してマドゥロ政権の崩壊の為の材料として利用している。今回の、甥っ子二人の逮捕そして収監もその一貫である。