陸自新型8輪装甲車開発の迷走の原因は、装備庁と陸幕

2018年01月20日 11:30

96式装輪装甲車の後継は?(陸自第6師団サイトより:編集部)

防衛装備庁は陸自の国際平和貢献活動、島嶼防衛に対する対処などに対応するためとして、96式8輪装甲車の後継の8輪装輪装甲車、「装輪装甲車(改)」の開発を進めてきました。名称から誤解されそうだが96式装甲車の改良型ではなく、新規開発です。

ところが既にぼくがブログで報じたように、問題があってコマツの工場に送り返されました。これは極めて異例のことです。装甲に問題があったということですが、それだけで予定が3年も遅れるでしょうか。

ぼくは業界筋から路外踏破性能も問題だと聞いております。

で、防衛装備庁も昨年12月26日のプレスリリースにおいて、「装輪装甲車(改)」の不具合を認めました。

装備庁は不具合を「耐弾性能のばらつきの多い装甲板の使用や板厚不足があったため」としていますが、同リリースでは「該当不具合の改修等の必用な対応を試作品の受注企業である(株)小松製作所において行うと共に、量産化に向けて幅広い選択肢の中から最適な装備品の調達が可能となるよう代替案分析をおこなうこととなりました」とあります。

これは他の候補も含めて再考すると読めます。

で、コメント欄でもご指摘の装備庁の新型装甲車の導入に関する公募がありました。

次期装輪装甲車の量産化に向けた最適な装備品の取得方法の検討に関する情報提供企業の募集について

ア 装輪装甲車に関する研究、開発、製造等の実績を有する企業

イ 装輪装甲車の開発又は製造等に関する知識及び技術を有することを疎
明できる企業

ウ 日本国内において装輪装甲車の輸入・販売に関する権利を保有する企業
又は権利を獲得できる企業

イ、ウは外国メーカーや商社でしょう。
つまりコマツ案には大問題があり、輸入を含めて代案を考えるということでしょう。

ただ本命はMHIで、外国製は当て馬に使われる可能性がありますが、昨今の高価なアメリカ製装備による、予算の圧迫を考えれば輸入もありえるのではないでしょうか。あるいはライセンス国産ですが、これだと国産以上に高価になるでしょう。安普請のコマツ案と異なりますから。

今回の迷走の原因は装備庁と陸幕装備部にあります。
新型装甲車の総開発が50億円以下、メーカーの開発、試作が18億円以下なんて頭がおかしいだろうレベルの話です。

2013年度 政策評価書(事前の事業評価)には、以下のようにあります

諸外国においては、既に実用化された装輪装甲車として、米国のストライカー等があるが、各種脅威からの防護力等の要求性能、コストに関して総合的な観点から比較検討した結果、本事業の優位性が認められた。

本当に比較したのでしょうか。ストラーカー方が遙かに生存性が高いように思えます。
主要国の主力装甲車以上の防御力の装甲車を開発するならば、かなりのカネがかかります。
それは装甲だけでは無く、状況把握システムやナビゲーション、搭載するソフトウエアの開発も必用です。
それがそんなに安価にできるのでしょうか。

概ね日本の装甲車の価格は諸外国の同程度のものと比べて、3倍です。それは調達ペースが遅いこともあります。
であれば、輸入にしたほうが遙かに安く、早く調達ができます。

南ア、UAEやトルコのメーカーの製品も宜しいでしょう。率直に申し上げて、日本製より遙かに先進的で品質も向上しています。しかもなまじ国産にこだわらず、エンジンやトランスミッション、ネットワーク関連のコンポーネントなどは欧米一流メーカーのものを使用しています。色眼鏡で見ずに広く世界に視野を広げるべきです。

率直に申し上げて事業評価は始めに国産ありきの単なる官僚作文であります。ぶっちゃけた話、嘘です。

技本時代から実証開発してきた、6×6の「軽量戦闘車輛システム」をベースに、2,300百億円かけて開発した方が、諸外国には適わないまでも、かなりいい線を行く装甲車が開発できると思います。

こういう社内政治優先で、戦うことを想定しない、天下り優先のお仕事していると、戦争で負けますよ

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自のAH-X(次期攻撃ヘリ)ではMHIがUH-60武装型、KHIがOH-1ベース、スバルがUH-X(B412)ベースの武装ヘリ型などやる気のない、残念な提案を本気で推しているとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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