機銃空砲の平和ボケ

2018年01月30日 14:30

89式5.56mm小銃の射撃訓練(陸自第36普通科連隊サイトより:編集部)

少し前の朝雲新聞の連載、「技術が光る」シリーズ67で、昭和金属の「5.56ミリJ1空砲の開発」という記事が掲載されています。

この記事で凄いことがさらっと書かれています。

「自衛隊が使用する従来の5.56ミリ空砲は89式小銃の射撃には問題が無かったものの、弾薬が高速で連射される機関銃では、糾弾時の装填性に問題があり、射撃は制限されていた」

「MINIMIは陸自の主要装備のため、訓練で空砲が使えないのは部隊にとっても影響が大きかった。」

展示演習などではMINIMIを空砲で使うこともあるので、まったくできないというわけでは無いとは思います。
ですが、記事によると実質的に通常の演習では使えなかった、ということでしょう。

昭和金属では射撃訓練で使用された撃ち殻薬莢を回収し、これを使用してMIMINI用の空砲を開発、「同空砲は打ち殻薬莢を使用しているためコストを低く抑えられ、小銃用と同程度の価格帯で調達することが可能となった」

で、「この功績で同社は防衛基盤整備協会から表彰状と賞金100万円を贈られた」
とのことです。

そもそも論でいえば、機銃で使用できない空砲をなんで採用したかということが問題です。
そしてこれまで演習で空砲を使えないことが問題にならず(なっていたとしても)放置されていたことは、平和ボケとしか言いようがありません。

国内メーカーが作れないなら空砲は輸入品を採用すればいいじゃないですか。価格は下手すると一桁安いですよ。
国内メーカーに仕事を振るのが、装備調達の目的ではないでしょう。

MIMMIに関して言えば、89式小銃の弾倉を使うと事故が起こるので、ずっと使用禁止だったわけです。これが現状直っているかどうか知りませんが、改修が行われたかどうか現状確認ができておりません。

ですが、このような問題が長年放置されてきた、更に申せば国産機銃の品質が同じモデルの外国製より劣っていたとことが長年にわたって放置されてきました。これは現場では誰もが知っていた話でしょう。それが放置されてきたわけです。当事者意識と能力が欠如しているとしか言いようがありません。

本来機銃で使える空砲が開発できないならば外国製を導入すべきでした。
この記事を読み限り、小銃用と機銃用の二種類の空砲が必要となり、兵站負担が増えます。
しかもコストが激減するなともかく、大同小異です。

これを防衛基盤整備協会が絶賛し、表彰状と賞金100万円を贈った話に至っては外の世界を知らない人たちは気楽で、しかもこの程度のことを表彰し、あまつさえ100万円も渡すとは随分と団体として余裕があるじゃないか、という嫌みの一つも言いたくなります。

はっきり申し上げて日本の弾薬産業は産業とは言えません。自衛隊需要だけで確か16社あります。コスト削減のためには事業の統廃合は不可欠です。

更に申せば品質向上のためにも必要です。小さい売り上げで、ちまちま作っていると、当然ながら設備投資なんぞできません。古い設備をだましだまし使うしか無いです。であれば当然品質も向上しません。

それとぼくが自衛隊のMINIMIの調達価格が米軍のそれと比べて10倍というと、陸自の一部の人たちはそんなに高くない、清谷は針小棒大を吹聴していると言っています。

ですが、HPに公開されている本年度の要求では48丁 2億円、単純計算で416.7万円です。
そして米軍の調達価格が約4000ドル前後ですから間違っていません。

正し朝日新聞の谷田記者が問い合わせたところ、1.56816億円で、調達単価は327万円です。
これでやれば約8倍ということでしょう。これはぼくがお願いしました。

ですが、それは自分たちがいい加減な数字を公式発表としているわけで、まず自分たちが悪いということです。
それに8倍だ、いっても為替レートによっても変わるし、米軍の調達数によって単価も変わります。

陸幕の無能で416.7万円だと思われていた調達単価を327万円と実際は低いよと発表してあげたわけで、
ぼくに感謝の言葉があってもいいぐらいです。

更に申し上げれば米軍のM249と、陸自のMIMNIでは世代が違います。レールマウントなども装備されております。
対して自衛隊の調達しているMINIMIは旧型で既にメーカーでは型落ちしているMkIと同等品です。この点を考慮すれば同じ機銃として値段を単純に比べられません。更に申せば、陸自は、品質偽装問題は解決したといっていけど本当ですか、ということですそうであれば何で来年度要求しないのでしょうか。

このような点を鑑みれば「キヨタニはデマを飛ばしている、ウチのMINIMIは米軍の10倍ではなく、8倍だ、エッヘン」と胸を張っているのであれば、率直に申し上げればただの馬鹿でしょう。

まあ、言わせて貰えばおととい来やがれ、です。

まあ、実際の話ラフな数字の話ですから、8倍であろうと10倍であろうと大差さはありません。それよりも「8倍」の差ならばOKとか思っている方が問題でしょう。

この人たちは車を買い換えるのに、200万円の車が2千万円だと「暴利」だから買わないけど、1600万円ならリーズナブルとだと買うんでしょうかね?

こういう世間に目を背け、組織防衛のための自己正当化しか頭に無い組織は自壊します。

■本日の市ヶ谷の噂■
昨年ドバイエアショーで防衛省はC-2輸送機の実機を展示するも、一番多かった質問は「この機体、不整地運用できないの?」という質問で、クルー、関係者が苦慮したとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年1月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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