AH-Xは単純な攻撃ヘリの更新でいいのか

2018年02月02日 06:00

AH-64E(陸自サイトより:編集部)

来年度は陸自のAH-X選定が本格化しそうです。

現在、候補はAH-64E、AH-1Z、UH-60の武装型、OH-1の武装型、UH-X(B412改)の武装型などが提案されるようです。

既にご案内のようにAH-64Dは僅か13機で打ち切り、運用稼働機は僅か数機で、事実壊滅状態、これで更新されるはずのAH-1Sは老朽化に任せ、稼働機体は激減、しかも旧式化で現代戦に耐えられない。これまた事実上壊滅状態。

事実上役立たないこれらの攻撃ヘリを、多額の税金をつかって維持しているのは犯罪的であるいっても過言でありません。対して韓国や台湾は一気呵成にAH-64Eの導入を輸入でまかなって、どちらがお利口さんか誰の目にも明らかでしょう。ソ連だったら、シベリア送りか銃殺でしょう。

装備調達の組織あるいは、制度、文化に致命的な欠陥があるとしか思えませんが、陸自上層部にその認識がないのでしょう。

陸自は責任を取らなくていい組織なので、未だにOH-1ベースの機体とかいう寝言を言う人たちがいます。

汎用ヘリの武装化を提案している会社も、ヘリのFCSの開発経験がなく、開発に多額のカネが掛かり、ただでさえ高いラ国のヘリですから価格は高騰するでしょう。

汎用ヘリの転用は、武装を降ろせば汎用ヘリとして簡単に使用可能のように考えている節がありますが、実は結構手間がかかります。本当にそれを考えているんでしょうかね。

今回はレーダーも仕様に入っておらず、
とりあえず安くて火の出るオモチャが搭載されていればいいという安直さが透けて見えます。

AH-X選定を単に攻撃ヘリの選定に矮小化して宜しいのでしょうか。

失敗作のOH-1の後継も問題です。OH-1は当初7億の単価が24億に。調達機数は250機から34機に激減、ローターブレード、エンジンのトラブルで述べ3年以上の飛行停止です。

今後エンジンの改修を行っても34機全機が飛行可能になるのは、10年は先でしょうその頃には用途廃止も始まります。OH-1を維持するなら、不要な税金の垂れ流しを続けることになります。

更に申せば、本来OH-1で更新するはずだったOH-6もどんどん老朽化が進んでいます。

まさに陸自航空隊は危機的な状況にありますが、中の人たちは未だに危機意識が欠如しているようです。

武装ヘリ導入であれば攻撃ヘリだけではなく、偵察ヘリの更新も一緒に考えないといけないと思います
仮に汎用ヘリの武装化であれば、偵察ヘリの更新と一緒に考えるべきです。例えばH135Mクラスも候補にいれるべきです。安価で運用コストも低いならば、民間ヘリと共用のプラットフォームを選択するのも手段です。H145M(BK117)もそうですが、武装パッケージが存在するのでこれらのような既存の装備を導入すべきでしょう。

上を見ても30機ほどのAH-Xを新たに開発するという「道楽」をする予算的な余裕は陸自には無いはずです。

そもそも論でいえば、何故AH-Xが必要かということを考えるべきです。
現在の攻撃ヘリはかつてのように、低空を匍匐飛行で飛び、敵の機甲部隊を攻撃するのが主任務ではありません。しかも低空では携行型ミサイルやRWSなどの普及が進み、生存性も低下しています。

現在の攻撃ヘリの任務は上空にとどまり、ISRや火力支援を行うことが主であるといえるでしょう。

そうであればそのような任務が可能他の代用手段も考慮すべきです。
実際に陸自ではスキャンイーグルを導入するので、これと組み合わせて運用することも重要です。
また一部の偵察ヘリの任務はこれに置き換えることができるでしょう。

ですが偵察ヘリはリエゾンや小物の輸送が実は大きな仕事です。これをどうするのか。
一部は既に他国で実用化されているように無人化した機体を使用することも考えるべきでしょう。
だから偵察ヘリを完全にUAVで置き換えることはできません。

またISRや火力支援であればCOIN機の導入も候補に入れるべきです。

ターボプロップのCOIN機は、攻撃ヘリ2機分で1個飛行隊分が調達でき、また運用コストもヘリに比べて格段に安い。しかも滞空時間はヘリの数倍です。アフガン戦でも問題になったのは、必要な時に攻撃ヘリが頭上にいないことです。だからこそ、COIN機の導入が真剣に米空軍ですら検討されてきたわけです。

もうひとつの理由がコストです。空軍のジェット戦闘機をゲリラ狩りなどに使うと、燃料代や運用費用は勿論、機体も飛行時間の増加によって損耗します。それは空軍に取って大きな負担です。ゲリラ狩りならばCOIN機の方が遙かに費用対効果が高いわけです。ですからOA-Xというプログラムも真剣に検討されているわけです。

よく攻撃ヘリが猫の額ほどの場所で運用できると思っている人がいますが、それは誤りです
該当地域に長時間貼り付けるならば、例えば二機ずつ貼り付けるならば相応の機数が必要となるし、整備や補給部隊のスペースも必要です。

無論COIN機は垂直離着陸ができませんが、全国に結構多くの空港、飛行場がありますから、それらを使うことができます。ですからゲリコマ対処には非常に有用でしょう。アークエンジェルのような農業機を転用した機体であれば不整地でも運用できるでしょう。

またあわせて武装化した無人機というチョイスも検討すべきです。
つまり、攻撃ヘリまたは武装ヘリ、武装ヘリであれば偵察ヘリの共用プラットフォーム、偵察用無人機、有人ヘリの無人化型、攻撃用のUAV、COIN機などのポートフォリオを検討した上で、何がAHーXにふさわしいか検討すべきです。

AHーXを単に攻撃ヘリの更新と考えると将来を誤ると思います。まして天下り先を維持することを最優先するなら尚更です。

オスプレイやAAV7,イージスアショアの導入などによって、陸自の予算、特に維持整備は圧迫される可能性が極めて高いわけで、将来少ない予算で如何にISRと火力支援、輸送力を確保するかが鍵になるかと思います。
少ない予算を有効に使うことを真剣に考えた方が宜しいかと思います。

■本日の市ヶ谷の噂■
8輪装甲車開発でミソをつけたコマツは、天下り受け入れをしない方向に転換、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年2月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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