眞子様結婚延期:新聞報道は“死んだ”と思う

2018年02月07日 20:00

日経新聞朝刊より

眞子様と小室圭氏の結婚延期の衝撃から1日が経った。宮内庁は週刊誌報道の影響を否定するのに懸命なようだが、苦し紛れにしかみえない。八幡和郎さんも指摘しているように、「週刊女性」が昨年末に報じた小室氏の母親の金銭トラブルが、小室氏本人の学費にも絡んでいたため、ペンディングになるのは致し方がない。

公共性の塊に切り込んだホンネの週刊誌、傍観しただけのタテマエの新聞

今回の事態で目を引いたのは、国民の一定数が小室氏の母親のトラブルを知っているのに、宮内庁記者クラブに加盟する新聞やテレビなどの関連報道がゼロに等しかったにも関わらず、結婚延期へと辿った一連の経緯だ。

なるほど、新聞の立場からすれば、タテマエ上は公益性が乏しいであろうプライベートな事情を報じるのは難しいだろう。しかし新聞協会が軽減税率適用の理由として自認する「公共性の役割」として、「民主主義を支える基盤」や「国民生活の基盤」を言うなら、皇室を巡る問題は、重要な適用案件ではないのか。

皇室という究極の公人のご結婚で国民の関心が高いだけでなく、眞子様のご結婚に伴い一時金など約1億5000万円が国民の血税から支出される(国会の予算審議に計上中)という「公益性の塊」ともいえる。

新聞報道のタテマエを横目に、週刊女性を含む週刊各誌はこの問題でホンネで徹底追及した。もちろん週刊誌的な俗悪的覗き見趣味とみる向きもあるかもしれないが、同じ「小室問題」でも、こちらは音楽プロデューサー氏の不倫とは全く違って、「公益性の塊」ともいえる問題を徹底的に追及してしかるべきであり、見事に切り込んだと思う。

ネット時代に情報解禁日を設定するクラブ制度の崩壊

ただし、国民のホンネ世論を喚起するには週刊誌の紙ベースの報道だけでは、結婚延期にまで至ったかというと微妙だったと思う。週刊誌もいまやネットニュースに求心力のある記事を提供するコンテンツプロバイダーである。きのう(6日)の第一報も、昨年から追及していた雑誌のひとつ、「女性セブン」がNEWSポストセブンで18時にリリースし、それがヤフートピックスで掲載された。月間150億PVのインターネット最強のニュースプラットフォームのトップページに掲載される影響力は、いまや視聴率の振るわない地上波テレビのショボイ番組よりも波及力がある。

そのあたりの舞台裏の顛末もまたしっかりと報じたのは週刊誌だった。おそらく週刊現代の皇室問題担当の記者の取材と思うが、現代ビジネスが翌朝に報道している。これによると、宮内庁記者クラブは16時30分から極秘に記者会見をして情報発表を翌日以降の解禁日を設定したというが、記者クラブの空気を読まないNEWSポストセブンの第一報をみた、あるクラブの加盟の記者はこうボヤいたという(太字は筆者)。

記者レクが散会となった後、「NEWSポストセブン」を皮切りにウェブメディアでは早くも「結婚延期」の報が流れ始め、午後7時すぎにはYahoo!トピックスにも記事が掲載された。新聞・テレビの報道関係者は、

情報解禁は明日なのに、ネットの奴らはさっそく書きまくってるな

と歯噛みする。この事態を受けて宮内庁は夜、急遽会見を開き、レクの内容を加地宮務主管が繰り返すこととなった。(現代ビジネス:眞子さまと小室圭さん「結婚延期報道」の舞台裏と宮内庁の思惑

平成もまもなく終わろうというネット時代に昭和型の記者クラブ制度の鎖国体制がほとんど機能していないような様を見せられる展開だが、私もかつては新聞記者として記者クラブにいた人間なので、“アウトサイダー”による解禁破りが不快な点は少しだけ同情する。小室氏の母親とトラブルになった男性がせめて民事訴訟を起こしていれば、まだ取っ掛かりがあったかもしれない(借用書を作っていないために証拠不十分で断念したとされる)。

ちなみに、この記者会見が行われていた時間帯で、八幡さんを経由して私も異変があることは聞かされていた。要はこの時代、鎖国は難しいのだ。

いまさら週刊誌を批判する日経の“後出しジャンケン”

しかし、そもそもの問題として、先述の「公益性の塊」のような事案であるわけだから、少なくとも公金という切り口を足がかりにして週刊誌が問題提起しているコンテクストの周縁からでも攻める手はあったはずだ。たとえばアゴラでは八幡さんが女性宮家などの制度論の観点から、何度も問題提起していた。名指しして申し訳ないが、産経新聞なら八幡さんと付き合いがあるわけだから、クラブ内の記者が取材をやりにくいのであれば、同じ社会部の遊軍記者が連携して独自の調査報道をするという手段もあったろうし、本紙でやりにくいなら夕刊フジ編集部を動かせたのではないか。

逆に、朝日新聞や毎日新聞などのリベラル系は、週刊誌報道を「人権問題」として批判することで逆説的に問題提起するという「裏技」もあったであろう。日経新聞は編集委員がいまさら「レッテル貼りは禍根残す」などと週刊誌を非難する解説記事を書いているが、こんなものは後出しジャンケンでしかないし、辟易する。

TVタックルは八幡さんの「警鐘」を放送

現代ビジネスの記事では、(私も八幡さんを通じて概要は聞いていたが)宮内庁の当事者能力の欠如があからさまになっており、ましてや官邸、警察庁は小室家の事情について週刊誌報道の前から把握していたような事態だった。いずれにせよ、結果としてこの間、週刊誌や八幡さんがさんざん警鐘を鳴らしていたにもかかわらず、宮内庁記者クラブの各社は週刊誌報道を傍観することしかできなかった(八幡さんをゲストに招いて制度論の解説をさせた、テレビ朝日の「TVタックル」は際どいところでギリギリ模索・健闘したと思う)。

そして重大事件で新聞が無力だった事実が残った

このことは新聞社が自認する公共性の役割を何も果たせないまま、この“平成版宮中某重大事件”を弾けさせてしまった事実が重く残った。そして、週刊誌やアゴラの記事を読んでいたネットニュースを読む世代は、「やっと事態が進展したか」と腑に落ちる一方で、新聞、テレビが情報取得先の大半である世代は、唐突な事態に驚き、ワイドショーのどこか奥歯に物が挟まったようなやり取りに却って困惑するという悲喜こもごもの「分断」が生じている。先日の名護市長選の世代別支持率の断絶を彷彿とさせる事態だ。

新聞(スポーツ紙まで)やテレビが、「解禁」となった今朝から週刊誌報道をなぞるような形で金銭トラブルを淡々と報じていることが、あまりに白々しく見えてならない。それは私だけでなく、ネットを通じてニュースを読み、新聞はコンテンツ供給者の「one of them」としか思っていない世代は、ほとんどそう思っているだろう。

振り返れば、2013年9月に2020年のオリンピック開催地に東京が決まった当日、新聞協会は休刊日の予定を変えないまま、一大ニュースイベントはテレビとネットに一報をさらわれてしまった(一部地域の号外はあったが)。そのとき、新聞業界にかつていた者として、危機的な思いをしたが、今回の事態で新聞のプレゼンスが全く発揮できなかったことは死んだと言われても等しい。蓮舫氏の二重国籍問題時の放置も怒り、呆れたが、今回の失望はその時に匹敵する。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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