読売の“迫撃砲”報道への補足と疑問

2018年02月17日 06:00

読売新聞2007年1月縮刷版より

先日の拙稿は、ひと昔前の新聞報道を「発掘」したに過ぎないが、予想外に反響があって、少しの驚きと困惑もある。

“スリーパーセル” 読売が10年前に阪神の被災地から武器発見の報道

これを書く契機だった騒動の当事者である国際政治学者氏も、この記事が出た後からツイートに10年前の読売報道が指摘した「迫撃砲」に言及しはじめたことも、妙に反響を倍加した側面があるのだろう。ただ、妙な誤解が広がってもなんだ。その後、複数の有識者の友人やネット民のかたから情報提供を受けたこともあり、念のため補足しておく。

前回のエントリーで筆者が指摘したのは次のことに過ぎない。

ファクトとしては読売が過去に「スリーパーセル」の報道をしていたことだけ

筆者は、当時の記事で掲載した「迫撃砲」の事実そのものを100%容認したわけではない。記事は連載の中での一記述に過ぎないため、恥ずかしながら当時読売に在籍していた私も見落としていたくらいだったが、仮にストレートニュースで報じていたなら国家的な大騒ぎになっただろう。そのあたりは前回書いたときから尽きない疑問ではある。

ただし、裏を返せば、ストレートニュースで報じるだけの“確証”や“物証”、たとえば発見された当時の迫撃砲の写真を提示されるといったことはなかった可能性はある。それでも連載当時に日本の安全保障上、現実的な懸案になりはじめていた北朝鮮対策を語る上で、報道する側としては日本社会に警鐘するための補強材料としては欲しい…。

そこで、物証は取りようがないものの、情報提供した「政府関係者」が、それだけの重大事を知りうる相応の地位にあることで部分的に信頼を置いて、事実だけは言及するかたちで記事化するという“落としどころ”として連載のなかでさらりと触れるかたちになったのではないか。

記事が出る数年前に、高名な国際政治学者(今回の騒動の人ではない)が論壇誌に載せたコラムで、がれきのなかから武器が発見されたことを書いていて、読売報道との関連を推測する見方もあるそうだ。今回の騒動に批判的な人たちの間では、がれきから旧軍の武器が見つかって自衛隊が処理した話などと関連づける意見もある。

記事の当該部分(赤線は筆者)

この学者や読売記者に情報提供した人物や関係先が同一かはわからないし、両者ともにソースを明かすこともないので真実解明は難しいが、仮に「政府関係者」とすると、どういった人物像が考えられるだろうか。

新聞報道の記述では、「政府首脳」は官房長官(および長官の考えを明示した周辺ソース)、「政府高官」は内閣官房副長官クラスが相場とみる向きは多い。また特定の省庁ではなくて「政府」という書き方は、官邸のように中枢部にいることを示唆する場合もある。内容的には警察・公安マターであるが、「公安当局関係者」という書き方をしていないところからもそう詮索したくなるが…。

「政府関係者」が国会議員なのかどうかもポイントだが、関係者というかたちで曖昧にしているのは、ソースが官邸にいる国会議員の高官(=副長官や首相補佐官)であっても内容が内容だけに敢えてぼかしたのか、それとも高官ではない官僚なのか。いずれにせよ、公安系の情報に接することができるポジションにいる人物だからこそ、記事化の判断に至っただろうと推認される。

しかし、政府のソースを解明する無理難題を思考するよりもはるかにシンプルな疑問がある。

迫撃砲らしきものが街中で発見されていたとなれば、政府関係者が得た情報に現場で接した関係機関、つまり自衛隊や兵庫県警は当然のことながら把握できていただろう。兵庫県警には「サツ回りの猛者」と言うべき記者たちが日夜出入り、あるいは捜査員の自宅へ夜討ち朝駆け取材を繰り返しているわけだから、オフレコの雑談ベースからでも、それなりに周知されておかしくはない。それでもこの間、事実として表面化してこなかったのはなぜなのか。疑問は尽きない。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑