どうする!ビール瓶のラベルは上?お箸を取るときは右手?

尾藤 克之

写真は講演中の西出さん

2018年2月下旬に差し掛かった。3月になり本格的な春を迎えれば、新年度の準備で慌しくなる。特に新入社員の方は社会人としてのマナーを心がけたいもの。日常のマナーが評価に大きく影響してくることも充分に考えられるからだ。「その他大勢」(言いかえるなら単なる普通)から抜け出すためのヒントになるかも知れない。

今回は、『ビジネスでもプライベートでも知っておきたいマナーの基本』(マイナビ文庫)を紹介したい。著者はマナー講師の西出ひろ子さん。主な実績として、28万部のベストセラーを記録した『お仕事のマナーとコツ』(学研)、「NHK大河ドラマ・龍馬伝」のマナー指導など幅広い。日本でもトップクラスのマナー講師としても知られている。

ビールの注ぎ方はどうする

昨年、ビールを注ぐ際に瓶のラベルが、上向きか下向きかで議論になったことがある。実はこれには正解がある。覚えておきたい。

「ビールの注ぎ方は、ビール瓶のラベルを上にして、ラベルに手がかからないように、利き手で上から、利き手とは反対の手で下から支えて両手で持ちます。グラスと瓶が触れないように注意して、最初はゆっくり注ぎ始め、続いて勢いよく注ぎ、ほどよく泡が立ったら静かに注ぐのがコツ。泡とビールは3対7の割合がきれいです。」(西出さん)

「また、ビールは注ぎ足しをすると味が落ちるので、お酌はグラスが空いてから行います。日本酒の場合、徳利の胴の部分を一方の手で覆うように持ち、空いた手でおしぼりなどを下から軽く徳利の胴に添えて両手で注ぎます。このときに、相手の杯と徳利が触れないように気をつけ、また杯からお酒があふれ出ないように注意をしましょう。」(同)

例外もある。西出さんによれば、格式のある洋食レストラン・料亭などでは、お酌はお店のサービス係に任せたほうが無難とのこと。何よりも相手が好む飲み物をチョイスできるように気を配ることが大切とのことだ。

「杯は親指と人差し指で軽くつまみ、中指と薬指で底の部分を挟むように持ちます。小指は薬指に軽くつけます。女性の場合は、反対の手の指を杯(お猪口の底に軽く添えて両手で持つのが女性らしい美しい持ち方です。お酒が飲めない人でも、乾杯時にはグラスを持ち、口をつけるしぐさを見せるのが大人のマナーです。」(西出さん)

「お酒をすすめられてこれ以上飲めないときは、片手をグラスや杯に軽くかぶせて、『ありがとうございます。もう十分頂戴いたしました』と、お礼とお断りの言葉を。お酒が飲めない場合は、飲めないことを正直に伝えても失礼にはなりません。」(同)

これは筆者の経験上の話になるが、「花粉症がひどくて先ほど薬を飲んでしまいました。申し訳ございませんが、お酒を控えておきます」という言い方でも失礼ではないと思う。その場合には、スマートに相手にお酒をすすめたいもの。

お箸の取り方はどうする

次に、お箸のお題にうつりたい。西出さんによれば、お箸の取り方にも厳粛なルールがあるそうだ。皆さまはご存知だろうか。

「利き手で箸の中央を持ちます。次に利き手とは逆の手を下から中央より左に添え利き手を下から受けるように持ち直します。上の箸は人差し指と中指の第一関節で軽く挟み、下の箸は親指のつけ根と薬指の第一関節あたりで支えます。箸を使うときは下の箸を動かさずに、上の箸だけを動かして料理を挟むのが正しい使い方です。」(西出さん)

「箸を置くときは、箸の中央あたりを下から利き手でないほうの手で支え持ち、利き手で箸を上から持ち直して箸置きへと下ろします。そして、箸の先端を左にして置きます。箸置きへと置く際は、箸の先を約2~3センチほど箸置きよりも先に出して、口にした部分が箸置きに触れないようにしましょう。」(同)

文章だとわかり難いかも知れないが、和のマナーの原則に、最初に出されたときと同じ位置で終わらせる(つまり原状回復)という考え方があるそうだ。くれぐれも、原状回復で、現状回復ではないのでご注意を。もし文章に迷ったら、拙著も役立つかも知れないのでご紹介をしておきたい。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)

尾藤克之
コラムニスト