竹島と慰安婦を「一体化」させる文在寅演説

2018年03月02日 11:30

「3.1」独立記念日の祝賀行事に出席した文大統領(韓国大統領府Facebookより:編集部)

文在寅演説の注目ポイント

文在寅大統領による「3.1」演説では、竹島と慰安婦を両方使っての日本批難が行なわれた。

「誤った歴史を我々の力で正さなければならない」「独島は日本の韓半島侵奪過程で真っ先に強制的に占領された韓国の領土」「日本がこの(独島の)事実を否定しているのは、帝国主義の侵略に対する反省を拒否しているのと変わらない」「(慰安婦問題については)加害者である日本政府が『終わった』と述べてはならない」……。

和訳の全文(ジャーナリスト・徐台教氏による)を見ても、文大統領の言う「誤った歴史」のくくりに、竹島問題と慰安婦問題の両方が含まれていることは明らかだ。

これは単なる「歴史問題の並列」ではなく、韓国が近年、この「竹島問題」と「慰安婦問題」という二つの問題を密接に関連させた外交・国際世論工作を展開していることの証左とみていいだろう。
それが最も如実に表れたのは、2014年2月22日の「竹島の日式典」に対する韓国当局の抗議声明だ。少々長いが引用する。

〈「(韓国)外交部スポークスマン声明」――日本の独島挑発と日本軍慰安婦問題の責任回避の根は一つだ――

1.日本政府の官房長官が僅か2日前、日本軍慰安婦被害者の証言内容の検証を検討すると言ったのに続き、今日は日本の地方政府が韓国固有の領土である独島に対する根拠のない主張をする式典を再び開催し、中央政府はこのような式典に政府高官を昨年に続き再び出席させるという挑発を強行した。

2.帝国主義時代の日本が韓半島侵奪を本格化させた1905年に、「主人のない島」として独島を不法編入した日本政府が、今や独島が元々日本の「固有領土」と言い張り、いわゆる「従軍慰安婦」という名で若い女性を強制的に動員して言いようのない苦痛と傷跡を与えた人道主義に反する事実さえも否認しようとしている。

3.1877年の太政官指令など各種の文献と資料を通じて独島が日本領ではないということを日本政府自らが認めていることは歴史が証明している。

日本軍慰安婦問題に対しては、河野元官房長官が「募集、移送、管理等も、甘言、弾圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」ことを認めており、1996年のクマラスワミ、1998年のマクドゥーガル国連特別報告管報告書も「暴力、拉致、強制そして欺瞞」によって日本軍慰安婦被害者を性奴隷化したと結論付けた。

最近の米国議会は、2007年下院の慰安婦決議採択に続き、2014年統合歳出法案で日本政府の「慰安婦決議案」の遵守を促すことを国務長官に求めた。

4.日本政府は今のところ、このような国際社会の厳重な批判に耳を傾けず、歴史の真実を否定している。このような態度は、日本政府が帝国主義時代における韓半島侵奪の過去の歴史を否定、歴史を書き直すという歴史修正主義の道を歩んで行くということを露わにしている。(中略)

5.日本の指導者たちがこれからも数多くの言い訳を並べて歴史をねじまげ、否定しようとするのならば、我々は国際社会とともに、そして沈黙している多くの日本国内の良識者とともに、日本のこのような歴史修正主義を全世界に知らしめるための多角的な取り組みをこれからも進めていく。

韓国政府は、日本が帝国主義時代の過ちを合理化させ、美化させようとする妄想から一日も早く抜け出し、日本の次の世代が正しい歴史認識を持つ市民になれようにその育成に取り組み、国際社会の責任ある一員として生まれ変わることを心から願っている〉

要するに、「日本は慰安婦に苦痛を与えたのと同様、その帝国主義的思想によって竹島も強奪した」「慰安婦問題の否定も、竹島の『日本領』との主張も、すべて歴史の暗部を覆い隠す『歴史修正主義』である」と言っているのだ。

何より、「日本の独島挑発と日本軍慰安婦問題の責任回避の根は一つだ」というタイトルに、2つの問題を一体化しようという意志が見える。

拓殖大学の下條正男教授はかねてより「韓国にとって慰安婦問題は竹島を封じるカードになっている」と指摘してきたが、それを韓国政府が自ら、端的に表明したのがこの声明と言えるだろう。

そして、今回の文在寅大統領もその意思を改めて公にしたと言える。

「日本国内の良識者」との共闘宣言

韓国は「竹島(独島)は日本の帝国主義の最初の犠牲の地」と主張してきた。日本が竹島を正式に編入したのは1905年だが、5年後の1910年の日韓併合を無理矢理関連付け、「日帝に強奪された最初の犠牲の地・独島」であるとして、自らの領有権主張の正統性をアピールして来た。

そして「慰安婦も同様に、日本帝国主義の被害者」であるとする。
2012年、李明博大統領が8月に竹島に上陸、天皇陛下に対する謝罪要求を行ったが、当時は日本政府(民主党政権)との間で慰安婦問題が高まりを見せていた。ソウル日本大使館前の慰安婦像ができたのもこの時期に重なっている。この辺りから、韓国は「竹島と慰安婦のセット売り」を明確に打ち出そうと考えたのかもしれない。

また、先の外交部声明で目を引くのは、〈我々は国際社会とともに、そして沈黙している多くの日本国内の良識者とともに、日本のこのような歴史修正主義を全世界に知らしめるための多角的な取り組みをこれからも進めていく〉という一文だろう。

実際に、竹島を巡る戦いの最前線にある島根県では、「慰安婦問題」を使って県内世論がかき回された経緯がある。
字数の関係上、詳細は省くが、2013年、橋下徹大阪市長(当時)による「慰安所が必要なのは誰だってわかる」「沖縄の在日米軍は風俗の使用を」と述べた件で、島根県は橋下発言を非難する「意見書」を採択。

この際、島根県内の民間企業経営者が意見書採択を後押しし、韓国の大邱地方弁護士会平和使節団が元慰安婦を伴って県議会を表敬訪問したい旨、この経営者の主催する財団法人を通じて申入れを行っていた。この財団は安重根「殉国記念式典」への出席や、韓国独立派の記念碑等への訪問、シンポジウムに元慰安婦の李容洙氏を招くなど、実に活発な活動を展開している。これこそまさに〈日本国内の良識者〉との共闘の一例だ。

「一体化」方針を堅持

慰安婦問題は日本国内では2014年の朝日新聞の「吉田清治記事撤回」によっていわゆる「〝従軍〟慰安婦(強制連行)否定論」が勝った形になっている。だが(強制連行)否定論者も認めるように、国際論戦、海外歴史戦においては必ずしも勝ってはいない。

現在の価値観で過去の問題を裁いてはならないと思うが、国際的に「女性問題」に対する認識の高まるなか、過去に遡及する形で慰安婦問題も注目を集めている格好だ。その流れにおいて、2013年のいわゆる「橋下徹・慰安婦発言」が加勢したことは指摘せざるを得ず、これによって慰安婦像の海外進出など、慰安婦問題の「海外戦」を活発化させたことも否定できない。

いわば、慰安婦問題は日韓の歴史問題ではなく、「国際的女性問題」の一角をなすことになったのだ。これは韓国にとって実に好都合だった。

韓国は竹島問題を、「たとえ強制連行という点では覆されたとしても『女性を傷つけた』という点では覆らない『慰安婦問題』」とセットにすることで、議論を封じ込めようとしている。文在寅大統領の演説からは、その方針が垣間見える。

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