裁量労働制に建設的な議論を

2018年03月08日 06:00

裁量労働制の議論が、労働政策審議会に差し戻されるとのことです。内閣にはこの際、徹底して、役所の情報の取り扱いの透明性、行政への信頼を確保して頂きたいものです。

それはともかく、この裁量労働制の審議について私が非常に残念に思うのは、与野党ともに、議論が残業時間の問題に特化されていたということです。

これまで日本の労働者は、日本的雇用の中で一括して管理されてきました。思うに、裁量労働制とは、労働者ひとりひとりが自分の才能、働きぶりをより高く売るものであるべきです。労働者を一括管理してきた日本型雇用は、能力の高い者にとっては障害ともなり得ます。その意味で、日本型雇用を変革することは、我が国に残された護送船団システムの最後の砦を壊すことでもあります。

たとえば、野球選手は単一の昇給システムで管理されていません。最初に基本給があり、加えて出来高があります。期待されている基本給に見合う働きをするために、選手は、生活のスタイルやトレーニングを組み立てます。それは多分、1日24時間続く厳しい自己抑制なのですが、その努力に対して、残業だ、残業代を払え、という人は誰もいません。つまり、スポーツの世界では既にかなり昔から、選手の雇用条件を一括管理しないことで、労働者、企業双方にとってハッピーな結果をもたらすことができているのです。

裁量労働制も使いようによって、労働者に高いパフォーマンスと満足度を与えることができる制度なのです。しかし、野党の主張するように、労働時間のみに着目すれば、残業は減らず、ただ働きさせられるという懸念を抱く労働者もいるに違いありません。裁量労働制を採用しつつ労働者を守るために、いくつかの前提が必要な気もします。

たとえば、

①基本給が高く設定されていること

②雇用者と被雇用者が個別に契約を結ぶこと

③被雇用者の権利を守るため、代理人制度を採用すること

④労働市場に雇用の流動性があること

こうした制度的な裏付けがあって、労働者の権利を守ることができるのではないか。安倍政権における(というより、日本が喫緊の課題として取り組むべき)働き方改革の主眼は「同一労働同一賃金」です。これが実現しない限り、雇用の流動性は図られません。裁量労働制はあくまで、同一労働同一賃金が達成された労働市場で機能するものであると考えると、硬直化した労働市場を前提として残業時間のみを議論している野党の主張は明らかにおかしいと思いますし、与党は労働者の権利保護について理解を深めるべきであるし、与野党ともに、労働市場改革全体として裁量労働制を議論して欲しかったとも思います。

本来、同一労働同一賃金はリベラル派が訴えるべき政策で、それが左系と言われる人たちから出てこないのは、ひとえに、彼らが労組から手厚い支援を受けているためです。これからの日本経済の浮沈の最大のカギは労働市場改革にあるという政策のマトすら野党は全く理解していないのではないかとさえ疑ってしまいますが、旧民主党に連なる政党の議員にとっては、理解はしていても、連合からの圧力に負けて、言うべきことを言えないだけなのかもしれません。

それにしても、やっぱり私はよく分からないのです。裁量労働制を導入することで、明らかに、労働者の権利保護のハードルは高くなるわけで、結果的にこれは、労働組合運動の強化に繋げることができるのです。それなのに、何故、連合から支援されている政党が泣きながら反対しているのか…。

河井 あんり 広島県議会議員(広島市安佐南区選挙区、自民党)
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程修了。(財)海洋科学技術センター(現・海洋研究開発機構)地球フロンティア研究システム、科学技術振興事業団(現・科学技術振興機構)、広島文化短期大学非常勤講師を経て、2003年初当選(現在4期目)。公式サイト

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河井 あんり
広島県議会議員(広島市安佐南区選挙区、自民党)

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