元IT副大臣53歳のセカンドスクール(38)マイナンバーとデータ活用社会

マイナンバー制度とデータ活用社会のゆくえ

プログラミングスクールの卒業制作をつくる過程で、ビジネスとして実走するために必要な機能、収益を考えるとマイナンバーカード、データ活用が必要だとの決論に達していました。ただ、卒業制作までには間に合わないので、プレゼンした内容は機能を下げているのです。

マインバー制度は、デジタル社会の基盤となるものです。自民党マイナンバー小委員会委員長と内閣府マイナンバー担当大臣補佐官を兼務させて、党と政府の担当者を統一することによって、スピード感をもって施策を進めることにしたのです。それが僕の仕事でした。マイナンバー制度というデジタル社会の基盤を整備することが出来たら、社会の根本を変えることが出来ます。人口減少社会での生産性向上と行政の効率化を成し遂げるには、必要不可欠な政策なのです。

マイナンバー制度というと、マイナンバー自体の利活用を思い浮かべる人が多々います。住民票をもつ日本居住者全員に割り振られた12桁の番号が、マイナンバーです。しかし、マイナンバー自体の利用範囲は、税・社会保障・災害と限られているのです。整理すると利活用は大きく分けると3つあります。それは、マイナンバーそのものの活用、マイナポータルの活用、マイナンバーカードの活用です。

マイナンバーカードは、表面に名前、住所、生年月日、性別、写真。裏面にマイナンバーが書いてあります。そして大切なICチップ。マイナンバーカードは、券面で本人を確認できる公的機関が発行する身分証明書ということになります。健康保険証は写真がないので、なりすましが可能です。パスポートは写真はありますが、住所がありません。学生証は学校が発行しているもにすぎません。運転免許は、写真がついているので本人の確認が出来ます。でも、車を運転しない人は持っていません。高齢者になって返納する人が増えてくると持ってない人が増えてきます。返納した人に、運転免許証を過去に持っていたという運転経歴証明書を発行していますが、更新制度がありませんから、身分証明にはならないと僕は思います。警察は身分証明の役割を果たすと言っていますが・・・。運転免許を返納した人には、マイナンバーカードを持ってもらうのが本質だと思います。

マイナンバーカードの最も優れている点は、ICチップを使って公的個人認証が出来ることです。簡単に言うと、インターネット上で、本人確認が出来るという事です。デジタル社会では、大変に便利な機能で、様々な分野で効率や生産性が高まることになります。一例をあげれば、平日の9時から15時までに銀行に行かなくては、銀行口座はつくれません。それは、マネーロンダリングのような犯罪行為に銀行口座が使われることを防ぐために、身分証明書を持って来てもらい、本人確認を厳格にしているからです。印鑑の登録も、お金を下ろしたりする時に、このは印鑑を持ってくる人は、本人もしくは委任者だと確認するためのものです。

マイナンバーカードの公的個人認証を使えば、口座開設はインターネット上で全て完了することになります。印鑑も不必要です。そもそも、印鑑は法律で定められたことではなく、過去からの習慣で登録してもらっているにすぎない、と全国銀行協会の方々が言ってました。キャッシュカードとマイナンバーカードを一体化させる。クレジットカード、自治体の図書館カード、健康保険証、診察券、社員証も一体化させる。つまり、マイナンバーカードへのワンカード化を進めることも出来るのです。既に、霞が関の省庁はマイナンバーカードが、職員証となり、ゲートを入るための電子キーにもなっています。ビジネスでの利用範囲が大きいのがマイナンバーカードであり、公的個人認証なのです。

マイナポータルというのもあります。簡単にいうと政府が一人一人につくった本人専用のホームページみたいなものです。もちろん、自分しか見れません。この中に、政府のどんな人が、自分の情報を見たのかの履歴もあります。つまり、僕らが政府の情報収集を見張っているのです。また、メールアドレスを登録することによって、メールでのやり取りが、必ず本人発、本人着となります。郵便で例えるなら、普通のメールが普通郵便なのに対し、書留郵便のようなものです。公的書類や確定申告に使うような書類を郵送ではなく、マイナポータルに届けることが出来るようになります。それを電子的に処理することによって、行政の効率性が高まり、また役所の書類を手間を書けずに、提出することが出来るようになるのです。

マイナンバー制度は、デジタル社会の基盤としてこれまで整備してきましたが、発足当初のデタラメで意味のない批判、不評が尾を引いて、マイナンバーカードの取得が進みません。マイナンバー小委員会で「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ」をつくり、それに従って施策の中身は概ね進んでいますが、カードの普及は思うように進んでいないのが現実です。現状の枚数は1300万枚くらいです。更なる普及啓発をしていかなくてなりません。

次にデータ社会の側面を見ていきます。「官民データ活用推進基本法」をつくる時のプロジェクトチーム(PT)事務局長を努め、データ活用社会の基本的な考え方を実務者として支えてきました。後に内閣府副大臣となった際には、この法律を所管する担当副大臣でもありました。法律をつくり、法律に定められている政府の「官民データ活用推進基本計画」の素案の準備もしてきました。この法律は議員立法といわれるもので、内閣提出法案(閣法)ではありません。大きく分けると議員立法というのは、これからこんな社会であるべきだ、という将来を描くもの。閣法は、今困ってることを解決するための法律、と区分けできます。官デ法は正に過去に前例のないデータ社会をつくるための法律で、世界的にも例がない法律です。

データに基づいた政策・予算づくり(EBPM)、デジタルファースト(先ずはデジタル)、ワンスオンリー(同じ事を2度と聞かない)、クラウドファースト(先ずはクラウドサービス)。官のデータ棚卸、基本計画の策定、データ形式の統一。安全保障、犯罪捜査等の一部を除いての官所有データのオープン化。データ活用社会に必要不可欠なルールを盛り込んだ法律なのです。ただ、市区町村はデータ活用基本計画が義務ではなく「努力義務」となっているので、規模の小さな自治体が計画をつくるかどうか、心配な一面があります。

企業自らが持つデータと国のデータ、都道府県や市区町村のデータ、これらをMIXしてデータ分析を行い、効率的なマーケットリサーチと営業。効率的な商品開発。経済の生産性を高める為には、必要不可欠なのです。米国は、企業が自らデータを集め、形式を整え、利活用しているのです。集める事、形式を統一することに莫大な費用がかかります。日本は、先ずは官のデータを誰でもが使えるように、棚卸をして整理して、形式まで整えるのです。企業や学術者は組み合わせて使うだけです。官の持つ莫大なデータを民間が使うために、結局、企業側が官とつなぎ合わせることが出来るように、データ形式の統一が始まることになるはずです。

人口が少ないけれど、経済が大きく、行政規模は小さいけれどサービスが充実している。そんな国に住みたいと思うのは、僕だけでしょうか。人口が減少することが問題なのではなく、それに伴って経済が縮小することが問題なのです。問題の本質を見失うと政策が間違った方向に向かってしまいます。少ない人数で大きなケーキをつくり、少ない人数で食べれば、1人はたくさん食べることが出来るのです。

卒業制作で作ったWEBサービスは、マイナンバーやデータの活用を踏まえてのものです。たどり着くまでには、まだまだ時間がかかると思いますが・・・。社会を先読みすることが出来なければ、ビジネスは成り立ちません。

 

次回は「ゲストハウスの住み心地」。


編集部より:この記事は元内閣府副大臣、前衆議院議員、福田峰之氏のブログ 2018年3月15日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。