皇位継承を今上陛下の子孫に限定するのは最悪だ

2018年04月15日 06:00

宮内庁サイトより:編集部

平成という時代がカウントダウンに入る中で、ひとつの時代の総括をすることと、皇室と日本の将来について考えるために、アゴラでも『リベラル皇室の光と影:続・平成皇室論』(特別寄稿)を書き、それに先立っては、月刊誌「新潮45」4月号にもう少し簡略に『「リベラル皇室」の光と影』と題する小論を書いたが、それも含めてより広汎な視点で、4月8日発売の『誤解だらけの皇位継承』(イースト新書)で現代皇室論を展開している。

かなり難しく論じにくい問題だが、このままでよいとも思えないので、私なりに先陣を切っているつもりなので、皆さんで議論を発展していただければと思う。

私も、そこで論じた問題を、より進化させて論じていきたいが、本日のテーマは、上記の機会にも論じたなかで、「皇位継承を、いまの陛下の子孫に限定するのは絶対に避けるべきだ」というテーマである。

なかなか表だっては議論されていないのだが、皇位継承問題で非常に疑問なのは、男系だとか女系だとか一般論で議論しているように見せて、実は、今上陛下の子孫に限るようにもっていこうという議論をしている人たちがいることだ。
古今東西、特定の帝王の子孫に将来の継承を限ろうという試みは数々の国家的危機をもたらしてきた。また、そのような試みをした帝王は後世において帝王にふさわしからぬ私物化を試みたとして厳しい批判の対象となっている。

自分の子孫に限ろうなどと言うことを陛下自身がお考えになっているとは考えられないが、そういう方向にしたがる佞臣がいるから困るのだ。

実際、「陛下でも自分の子孫にしたいのだろうからその願いを実現して上げたい」などという人もいるのだが、それは最大の不忠だと思う。帝王にとってもっとも不幸なのは、歴史のなかで批判されることではないか。

女系の皇位継承を認めるといっても、かつて小泉内閣の皇室典範の改正案で出されたように、男子を問わぬ長子相続、つまり、悠仁さまを廃嫡して愛子様を皇太子にするという極端なものから、男系男子で誰もいなかったらというものまでさまざまだ。

しかし、比較的、支持を集めているのは、

①悠仁さまはすでに皇位継承権者なのでそれを排除することはしない

②しかし、愛子さま、眞子さま、佳子さまは女性宮家を創設して結婚後も皇族として残し、その配偶者も皇族とし、その子供たちも男女を問わず一定の条件で皇位継承権者とする

③王女さまたちは結婚されたら皇室を離れてもらう

④いちど皇族でなくなった人の復帰は認めない

というものだろう。しかし、これは、あまりにも恣意的な原則なのである。なぜなら以下のことを意味するからだ。

①男系を維持している旧宮家などを排除し、
②明治天皇以降の天皇の女性子孫も考慮に入れず、
③三笠宮家や高円宮家の女王による継承は認めず、

①については、伝統的に継承権がある男系男子の正統的な候補たちを外す理由がない。

②については、女系というなら、少なくとも明治(北白川・竹田・朝香・東久邇)、大正(上記の三笠宮・高円宮の系統の女王様たちの子孫)、昭和(東久邇・島津)三帝の女系子孫はなぜ候補にならないのか理屈が通らない。

歴史を顧みても、現在の帝王の子孫に無理に限定しようということを、帝王自身や佞臣たちが図ったときには、正統性は深刻に損なわれ長い争いや国家分裂の契機になってきたのである。そういう意味で、まかり間違っても、現在の陛下の子孫に限定するというようなことに、「結果的にせよ」なる提案は絶対に避けるべきだ。

もちろん、ある天皇の子孫に継承権を限定することは、無限に候補者を増やしたくないことからありうるが、それは、その天皇が中興の祖的な非常な功績を上げられたということが最低条件であろう。もし、そういう天皇があるとすれば、明治天皇しかありえないわけで、どうして今上陛下の子孫に限るとすれば、皇室の歴史において特別の意味をもつ帝王でおられるのかどうか議論すべきであろう。

もうひとつ、今上陛下の子孫に限るというのが困るのは、悠仁・愛子・眞子・佳子さまという4人の子孫が、将来において断絶する可能性はそれほど低い確率ではないと言うことだ。普通に考えても、4人の個人の子孫が1世紀とか2世紀とかたったときにいなくなってしまう可能性は何割かある。まして、それが、兄弟姉妹や従姉妹ということになれば、共通の弱点を遺伝的にお持ちだろうから、一般的な確率よりさらにその可能性は高いはずだ。現実に、戦後を考えても、皇族が子供を持たれているのは5割くらいしかおられないのであって、一般人よりかなり弱ったDNAなのである。

それなら、かりに、21世紀の終わりとか、22世紀の終わりになって、今上陛下の子孫は誰もいなくなったらどうする気か?残念ながらどなたもおられないので、日本国憲法の第1条から第8条に定められている「天皇」は該当者がなくなったので、店じまいするとでも言うことにするのか?

そのときになって、平成の御代に、候補者から永久に外すことを決めた、昭和22年(1947年)に皇室を離れた旧宮家の子孫だ、明治・大正・昭和帝の女系子孫だとかいって天皇にするのか?そんなこと誰も納得するまい。

私は男系男子の原則を安直に外すべきでないものの、その可能性を否定して、いきなりいまの陛下の子孫でなければだめだなどという乱暴な恣意的で乱暴な議論でなければ女系も全面否定ではない。むしろ大事なのは、ほぼ無限に皇位継承候補がいるということだ。イギリスでは、2000人以上の権利者が登録されており、エジンバラ公すらビクトリア女王の玄孫として資格権者なのである。

日本の場合は、①明治以降の皇族の男系女系を問わずすべての子孫、②南北朝の北朝系統の天皇のすべての男系男子子孫(皇別摂家等も含む)については、だいたい、管理可能なので、それをもって最大範囲として名簿を創り、皇統譜別表のようなかたちで把握することをすべきだと考えている。

誤解だらけの皇位継承の真実 (イースト新書)
八幡和郎
イースト・プレス
2018-04-08

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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