世間はいまだTOKIOの山口達也さんの件で持ちきりですが、先日あるワイドショーで、山口さんのアルコールの問題から、元Jリーグ選手の前園真聖さんにコメントを求め、さらには再飲酒を勧めるような、断酒を揶揄するような発言がありました。
前園さんに対し、メディアが度々飲酒をけしかけるような場面が目に余るので、これは本当に止めて欲しいと、強く申し上げたいと思います。
多分前園さんはアルコール依存症ではないと思いますが、けれども酔って暴行事件を起こしたということは、前園さんのお酒の飲み方に問題があったことには間違いありません。
前園さんの様に、正体を失うほど思いっきり飲むことをビンジドリンクと言います。
そして依存症問題とは別に、このビンジドリンカーによって、暴行事件や飲酒運転など社会問題は度々起きています。
ですからアルコール依存症者も断酒が基本ですけど、このビンジドリンカーも断酒することで、ご自分の人生を安全に守れるのです。何度も言っていますが、こういう問題は精神論ではどうにもなりません。
前園さんが、ご自身の問題を認め、きっぱりと断酒なさったことは非常に立派です。
このまま断酒を継続するべきです。
安易にからかい、ひどい時は
「前園さんにお酒を勧めても本当にきっぱり断るか?」
などとドッキリを仕掛ける番組などがあって、あなた方はもしそれで前園さんが飲酒を始め、万が一取り返しのつかない事件を起こしたら責任をとれるのか?
と、腹立たしくてなりません。こういう番組には今後正式に苦情を申し入れるべきではないか?と思っています。
前園さんご自身は「勧められても飲まない」ときっぱりと断言されており、その姿は賞賛に値します。
からかいの対象にする人の気がしれません。
また一番の問題は、国内には多くのアルコール依存症の当事者の方、及び問題飲酒者の方がきっぱりと断酒に取り組んでおられるわけで、そういう方々に「まぁ、たまにはいいじゃない一杯位…」と無理強いするような、断酒を揶揄するような社会であってはならないからです。その行為は、大げさでなくまさに死に直結します。
実際、再飲酒の原因に、「身近な人から、お酒を勧められて…」という事例は多いのです。
「もう、こんなに長く止めてるんだから、少しくらいなら大丈夫ですよ~飲みましょうよ!」
何も知らずに、こんな安易な言葉をかけ、その気にさせたために、再飲酒が止まらなくなり、亡くなってしまった・・・実際に起きている事例です。周囲の人の無知と無理解のために、当事者とその家族みんなを不幸にしています。
現代のメディアはお酒を始めとする依存症や、それに付随する問題が起きると、徹底的に個人攻撃をし「甘い」だの「自覚がない」だのと叩きまくっていますが、自覚をもち、自分を律している人に対してはその姿勢を揶揄する。恥ずべきは、そうやって無知をメディアでさらけ出しているご自分たちであり、そういった行為を目にするたびに、我々の様な依存症者やその家族を、傷つけているのだとどうか知って下さい。
メディアは断酒を継続している、前園さんに冗談でもお酒を勧めてはいけません。
その冗談は全然笑えないどころか、同じ問題を持つ人の命を奪う凶器です。
編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年5月1日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。