テレビ局の「帯域」に電波利用料を

2018年05月23日 18:00

日経新聞によると、総務省の有識者会議が電波利用料の「格差是正」のため、携帯電話業者の利用料を下げる方針だという。これは規制改革推進会議の電波改革でも大きなテーマだったが、オークションと取り違える人がいまだに多い。

電波利用料は1990年代にオークションを見送った代わりに郵政省が設けた制度で、オークションのように電波を有効利用する機能はない。しいていえば固定資産税のように非効率な電波利用に「課税」すれば有効利用を促進する効果があるが、今の電波利用料は無線局の数に比例して課金されるので逆効果だ。

これは土地でいうと、建物の敷地面積ではなく部屋数に課税しているようなものだ。たとえば都心の同じ面積に超高層ビルと平屋の家とがあるとすると、高層ビル(携帯業者)は部屋数が増えれば増えるほど固定資産税が増えるが、平屋の家(テレビ局)は同じ面積でも税負担が低いので、有効利用するインセンティブがない。

電波利用料の対象となる「無線局」(電波を発信できる局)は携帯端末も1個と数える。このためNTTドコモは7600万以上の無線局をもっているので、2016年度に209億円も電波利用料を払った。これに対して日本テレビの電波利用料は5億円。無線局(中継局)の数が少ないからだ。

ではこれを固定資産税のように「土地」に課税したらどうなるだろうか。携帯電話3社の占有している帯域は3社の合計で約200MHzだが、テレビ局の占有している帯域は40チャンネル分で240MHz。したがってテレビ局は、携帯3社を合計した514億円以上の電波利用料を払わないといけない。これは在京キー局の営業利益の合計を超える。

しかしテレビ局が、この「課税」をまぬがれる方法がある。実際に使っている帯域だけ電波利用料を払えばいいのだ。たとえば関東地方では、図のように8チャンネルに区画整理すれば、残りの32チャンネルは通信に開放でき、電波利用料も48MHz分、100億円ぐらいですむ。

このように電波利用料を無線局ではなく帯域に課金し、その代わりテレビ局は使っていない帯域を国に返却するというのは、どっちも損しない取引だろう。もちろんテレビ局は反対するだろうが、そのときは「現在の支払い総額より増えない」という条件をつけてもいい。UHF帯の200MHzの価値は、テレビ局の既得権よりはるかに大きいからだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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