天授け、人与う

株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正さんは、御自身の後継者の条件として、「全員から支持が受けられる人、決断できる勇気を持っている人」を先月12日の決算説明会で挙げられたようです。

昨年12月のブログ『リーダーになる人』でも「天授け、人与う」という孟子の言葉を御紹介したように、人望や人気あるいは徳と言っても良いかもしれませんが、そのようなものを重ね持ち且つ能力・手腕もある人でなければ指導者にはなれません。

孟子は、天が天命という形で授け人民が与うという形で、人は天子になる、指導者になると言っているわけです。例えばトップからある人がNo.2だと位置付けられたとしても、他の多くの社員からも同じように支持を得られなければ良いバトンタッチとは言えないでしょう。

人徳のない人が指導者の地位に就くと、直ぐに組織は機能しなくなります。たとえ指導者になれたとしても、結局彼は退かねばならなくなるのです。従ってトップは人望がない人に、そうした重い地位を与えるべきではありません。

尤も「上、下をみるに3年を要す。下、上をみるに3日を要す」と言われますが、上司は部下の仕事全てを把握出来るわけでなく、胡麻を擂られ世辞も使われますから彼等に対する評価を往々にして誤ります。

一般論として、トップがある人をNo.2やNo.3に据え後継者に相応しいか否かをみるに3年を経ても、その人の本質が中々出て来なかったりして誤魔化されるケースは結構あるように思います。

対称的に、下は3日を要せば「あぁ、この上司は駄目だ」と直ぐに分かるわけで、先に「人与う」と述べたように、部下の評価が如何なるものかが大事な要素になります。従って組織として、部下が上司や周りの同僚等を評価出来るようなシステムが求められるでしょう。

そういう意味で私どもの場合は「360度評価」を導入していますし、更に御客様の評価といった外部の情報も重要なものとして考慮されねばなりません。上は往々にして騙されるという前提の下、我々は出来る限り様々な情報を入れ人を判断しようとしています。

人を選ぶとは、それ位に難しいことだと思います。ですから、私は自分で選ぶというよりも自然の成り行きで、例えば「うちの大将あの人に大分力を入れ込んでいるみたいだが、周りの評価も悪くない」「彼がリーダーで良いのではないか」といった具合に、衆目の一致するところが非常に大事だと思っています。

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