金融におけるリスクのテイクと管理の混同

2018年06月05日 11:30

さて、リスクテイクとは何か。事業を行うからには、その事業に固有のリスクを避けることはできない。そのリスクは、事業にとって本源的なものであって、避けるべき否定的なものとしてではなく、とるべき肯定的なものとして、あるいは、とりたい魅力的なものとして、リスクというよりは、チャンス、即ち、機会、もしくは商機と呼ばれるべきものである。このチャンスをつかむこと、それがリスクテイクである。

しかし、本源的リスクテイクにおいては、様々な付随リスクが生起する。それらの付随リスクは、意図せざるもの、不要なもの、余計なものとして、統制により制御される必要がある。また、経営の揺らぎや弛緩のなかで、事業目的から逸脱したリスクをとってしまう可能性もあるので、そのような非本源的リスクをとることのないように、経営は統制される必要がある。これらの統制機能がリスク管理である。

通常は、どの事業においても、事業の目的と内容は明確であって、本源的リスクと付随リスクの差も明らかである。例えば、製造業において、作っているもの自体の社会的価値にかかわるリスクと、製造過程における技術的なリスクとは、はっきりと区別できる。また、事業目的から逸脱した非本源的リスクテイクは、事業目的の自然な延長にないもの、本源的リスクテイクに含まれていないものとして、明瞭に認識される。従って、経営そのものである本源的リスクテイクと、経営統制の一つの機能でしかないリスク管理とを、混同することはあり得ない。

金融といえども、事業であるかぎり、顧客の視点における価値創造という目的遂行のためには、とるべきリスクは必ずとらなくてはならない。しかし、このリスクテイクの貫徹は簡単ではない。なぜなら、高度に規制されていることもあって、金融ほどリスク管理の厳格性が求められる業種もなく、リスク管理は常に越権して事業本来のリスクテイクに介入しようとするからである。

なぜ、そうなるのか。おそらくは、金融は、虚業ともいわれるように、何が事業の目的と内容であるのか必ずしも明確ではないからであろう。経営としての本源的リスクテイクが確立していなければ、とるべきリスクも、付随するリスクも、とってはならないリスクも、明確に定義され得ない。それでも、経営している以上、総体としてのリスクは負うので、経営とリスク管理は混然として一体化してしまい、リスク管理のために経営があるかのような倒錯に陥りがちなのである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
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