新潟知事選:県警は悪質なネットの中傷を摘発せよ

2018年06月11日 11:30

新潟県知事選は両候補への誹謗中傷が相次いだ(公式サイトより)

与党側が辛くも勝った新潟県知事選は、ネット上では選挙期間中に根拠のない誹謗中傷や「報道」に名を借りた実質的な落選運動も横行し、言論空間の荒廃した様をみせつけられるようであった。

まず基本的な言葉の使い方として確認しておきたいのは、「中傷」と「ネガティブキャンペーン」は異なる。『デジタル大辞泉』によれば、中傷とは

根拠のないことを言いふらして、他人の名誉を傷つけること。

を意味する。

一方、「ネガティヴキャンペーン(ネガキャン)」とは、『大辞林 第三版』によれば、

相手の政策上の欠点や人格上の問題点を批判して信頼を失わせる選挙戦術。また、広告で他社商品の短所を強調する宣伝方法。

とされる。中傷との違いは、事実の提示がなされている点だ。混同されがちなのでおさらいしたが、この前提が違うことをまず認識しておきたい。事実の提示がなければ刑法の名誉毀損罪に抵触する恐れがある。

ただ、政治や選挙の現場では民間以上に罵り合いが起きやすい。これは刑法の名誉毀損罪が、公共の利害に関する場合の特例を設け、提示した事実に真実性が証明されれば免責していることが「拡大解釈」され、緩みがちなのかもしれないが、言論闘争は、法と事実に基づくルールの上で行わなければならない。公選法でも

「選挙に関しインターネット等を利用する者は、公職の候補者に対して悪質な誹謗ひぼう中傷をする等表現の自由を濫用して選挙の公正を害することがないよう、インターネット等の適正な利用に努めなければならない」(142条の7)

と戒めている。

そして今回の新潟知事選では一部のネット民の間で花角氏、池田氏の双方に対して心無い中傷があった。

代表例を挙げると、左派系のネット民などから、国交省OBの花角氏が大阪航空局長経験者であったことから、森友問題や財務省の文書改ざんと結びつけるような中傷があった。しかし、花角氏が大阪局長をつとめたのは2010年8月〜2012年9月。つまり民主党政権時代のことで、森友問題とは関係がない。

逆に池田氏に対しても「不倫した過去がある」「週刊文春が近く取り上げるらしい」などと根拠がない情報を広めていた。事実であれば公人の適格性を問う論点の一つにはなり得るが、そういう指摘をするからには、もちろん具体的な事実の提示、真実性の証明が要求される。

ところがネット上だけではなく、花角氏の支援団体でしかるべき立場にある人が地元紙記者もいる選対会議で発言し、それを報じられるという事象には唖然とした。さすがに街頭演説やSNSの発信とは違うので、法的にはぎりぎり抵触しなかったとしても不謹慎だ。

どちらにせよ、露骨な中傷行為に対して新潟県警は取り締まるべきだ。違法な言説が横行すれば言論空間をゆがめる。すべてを摘発できなくても、さきざきの抑止効果を促す意味でも適切な対応が望まれる。

一方、ネガティヴキャンペーンはたしかな事実であれば名誉毀損の問題はクリアしている。また、落選運動についてはその要件を満たす限りは、違法に当たることはないが、別の特定候補の当選をさせるのが目的であれば「選挙運動」と解釈されて公選法上のルールを守って行う必要がある(例・投票日当日はできない)。

報道や一般的な論評に過ぎないものについては選挙運動や落選運動の対象外とされるが(参照:各党協議会『改正公職選挙法(インターネット選挙運動解禁)ガイドライン』等)、当然事実の提示は前提だ。

報道するメディアや発信者は、社会的影響力を熟慮した報道・言論活動が求められるが、仮に中立を装って特定候補の陣営と裏で結託し、もう一方の候補に対するネガティヴキャンペーンを展開して発信することがあれば、ステルスマーケティングと同等だ。

今回、有名出版社系の一部ネットメディアで、執筆者がジャーナリストなのか活動家なのか、よくわからない記事が発信・拡散され、特定候補に対する「落選運動」とも言うべき執拗なネガティヴキャンペーンを繰り広げていた。捜査対象になるものではないだろうが、背後関係があるのかないのか気になるところだ。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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